未知の記憶をよびおこす“村” ――――建築家・樋口裕康さんと対談イベント

12/13(金)06:49 img
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12月11日(水)、展覧会《村まであと何歩?》を開催中の小劇場plan-Bにおいて、セイゴオが建築家・樋口裕康さんと対談イベントを行った。

樋口さんは1971年、有志の建築家たちとともに象設計集団を共同設立。今帰仁村中央公民館や名護市庁舎を手掛け、芸術選奨文部大臣賞、都市計画学会賞、日本建築学会賞などを相次いで受賞。「土地らしさを表現する」をモットーに、地域に根差す歴史や物語を重視した建築をつくりつづけ、国内外問わず高く評価されてきた。

 

樋口さんは12年前から頭のなかで思い描く「ぼくの村」を絵にしようと制作に取り組み、今年2019年に絵巻風の作品をとうとう完成。盟友である田中泯さんの活動拠点であるplan-Bで展覧会《村まであと何歩?》を行うこととなった。

 

重力の制約に逆らうように樋口さんの作品が展示された。天井からは有刺鉄線で縛られた岩が吊るされている

 

 

 

長さ4m32cm、11折、24頁の集画帖全4巻。すべて樋口さんの手書きによるもの。

 

セイゴオと樋口さんの出会いは1993年山梨県・白州で行われたアートキャンプ白州93の舞踊作品《古代縁地》のとき。吉田一穂の作品をセイゴオが脚色、泯さんが振付けをおこなった。以来、泯さんをつうじて樋口さんと交友を育くみ、象設計集団の仕事にも強い関心をもってきた。今年の8月某日、田中泯さんと石原淋さんから樋口さんの作品現物を紹介され、そのあふれる色彩とストーリー性に驚嘆、泯さんの熱い思いにもこたえるように今回のトークイベントを快諾するにいたった。

 

トークイベントでは樋口さんの絵をめぐって次のようなやりとりが交わされた。

――――イベント前に展示を一つ一つ丹念に見せてもらったが、正直涙ぐんでしまった。自分の奥にある未知の記憶(アンノウン・メモリー)が呼び起こされる感覚でした。消えていき、変転していく村が四季のうつろいのなかに描かれていて、そこに樋口さんの言葉と記憶が組み合わさっている。『歳時記』以上のものになっていて非常にすばらしい。樋口さんが考えてきた「いのちの感覚」が「カタチ」になっている気がした。登場人物の寸法を自在に動かしているし、カラーがいきなり白黒になったり、アンドレイ・タルコフスキーの映画《ノスタルジア》のラストシーンを思いだしましたよ。(セイゴオ)

 

――――松岡さんにそういってもらえてこんなに嬉しいことはない。ぼくが絵でも建築でも大きなテーマにしてきたのが「時間」と「場所」でした。記憶を思い出そうとすると風景が一気にやってくる。その感覚を作品に込めたかった。「ぼくの村だ」と思ってからは、一切説明的なものにしたくなくて、この倍ぐらい描いていたものをバサバサ切ってつなげて再構成した。だから急に場面が転換したり、ちがうシーンがつながりあった。それがよかったのかもしれないと、松岡さんの話を聞いて確信できました。(樋口さん)

 

話は樋口さんの師である吉阪隆正と大竹十一について、象設計集団設立のいきさつ、建築にたいする思想や、多大な影響を受けたというバックミンスター・フラーとバーナード・ルドルフスキーについて、泯さんとの出会いについてなど、つきることなく自在にめぐったところで終了。樋口さんは「松岡さんと話すことが本当に楽しみだった。一生懸命予習したかいがあった(笑)」と喜びを吐露した。

展示会は12月15日(日)まで開催する。

 

樋口裕康 絵の展覧会
「村まであと何歩?」

2019年12月9日(月)~12月15日(日)
時間:14:00~19:00 入場料:500円
会場:plan‐B
〒164-0013 東京都中野区弥生町4-26-20モナーク中野B1
https://i10x.com/planb/access

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関連イベント

〇12月13日(金) 19:00~(受付18:45開始)
石原淋さんによるダンス

〇12月15日(日) 17:00~(受付16:45開始)
中村達也さんによるドラム演奏

 

 

*関連イベント料金(各日)
予約3000円 当日4000円(展覧会入場料込み)

 

*予約はウェブ予約のみとなります。

http://i10x.com/planb/contactus
満員になり次第、予約受付を終了いたします。 *問い合わせ先 alternative.space.planb.1981@gmail.com TEL:03-6382-7380(展覧会期間中のみ)


  • 寺平賢司

    編集的先達:カール・ゴッチ。松岡事務所の期待のホープとして、千夜編集部やプロジェクトを仕切る。フィリピン人の母と日本人の父をもつハーフボーイ。調子のよさでは右にでるものがいない。

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