13離退院式。イシス編集学校開講20周年の直前にふさわしく、「伝統と前衛」が重なる式であった。1季から代々の千離衆が作り上げてきた離の伝統と、NEXT ISISに向けての前衛的な試みが混ざり合っていた。
「番組のスタジオっぽいしつらいにしてみたかったんだ」と、校長は直前のリハーサルで、司会の寺田充宏右筆と小倉に微笑んだ。今までの五反田DNPホールでの感門之盟では、段差のある舞台が作られ、客席との境界がはっきりしていたのだが、今回は、客席と舞台がフラットで、火元組の席は真ん中を囲むように舞台側に設置されていた。
校長は何かを企画する際、もてなし、ふるまい、しつらいの中で、特にしつらいを気にする。しつらいがバシッと決まれば、もてなしもふるまいもおのずと定まってくるからだ。
今回の退院式は、退院証授与や特別賞・典離の発表以外に、様々なプロジェクトで活躍する過去季の千離衆を交えた多彩なプログラムが用意されていた。客席との一体感を生み出しやすいしつらいによって、モードの異なるプログラムが絶妙に融合し、司会のふるまいが、しつらいに支えられていると感じた。これぞ校長のもてなし術なのだ。
しつらいのこだわりは、舞台と客席の配置関係にとどまらなかった。スタンド照明の加減もそうであるし、火元組の席の後ろには、千夜千冊エディションが配された棚が組まれていた。無数の本が重なり合っていくような離の稽古を想起させる3面スクリーンの映像編集も見事だった。校長校話の『世界読書義人伝』においても、様々なテーマと切り口で映し出される歴史上の表象者たちの姿と校長の語りが呼応し、千離衆にその編集的意図を饒舌に語りかけてきていた。
退院式に臨むスタッフ全員が、まさに「同朋衆」となっていた。校長だけでなく、ひとりひとりが目利きのクリエイティブ・ディレクターとなって、細部の意匠に凝り、ホール全体のモードを立ち上げていく。もてなし、ふるまい、しつらいの「用意と卒意」が万事揃った薫り豊かな「座」が生み出されていた。
小倉加奈子
編集的先達:ブライアン・グリーン。病理医で、妻で、二児の母で、同居する親からみると娘、そしてイシス編集学校の「析匠」。仕事も生活もイシスもすべて重ねて超加速する編集アスリート。『おしゃべりな図鑑』シリーズの執筆から経産省STEAMライブラリー教材「おしゃべり病理医のMEdit Lab」開発し、医学と編集工学を重ねる試みを続ける。おしゃべり病理医の編集的冒険に注目!
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