連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。

「ちゃんと575になってるよ 」
「いきなり作らなくてもいいよ」
「気になった動物の名前をメモしていくだけでも、じゅうぶん材料になるから」
「できない、むずかしい」と悩む子に、「編集かあさん」から優しいフォローが飛んでいる。大人対象のワークショップであれば、「編集は仮留めが大事です」とコメントするところかもしれない。
2019年10月6日、大阪の天王寺動物園でおやこ絵本ワークショップ初の野外活動「吟行」が開催された。
動物園歩きに俳句づくりをプラスしたおやこ吟行を企画したのは、おなじみ松井路代ナビと吉野陽子ナビ。
6月のワークショップ「なつの575」に続く俳句遊び第2弾だ。
参加者は、3組の親子と風韻講座を修了した 伊藤正也さんの計7名。
鬼ごっこをして待っていた子どもたちを集めて、松井ナビが今日のお題を伝える。
難しい編集用語は用いず、子供たちの「注意のカーソル」をそっと誘導する仕立てだ。クリップボードと鉛筆を持ち、これ以上ない秋晴れの空の下、スタートした。
おやこ吟行隊が最初にむかったのはペンギン舎。
ペンギンがうろうろしてるゆきのうえ(8才女子)
あるきだすさいしょの一羽だれがなる(6才女子と編集かあさん)
子どもたちの句にアドバイスする松井ナビ。
褒めどころと添削ポイントをひとつずつ。簡潔で受けとめやすい。
さむいなか たまごをうんで ちち(父)わたす(7才男子)
この句を見て、吉野ナビが「これ、ペンギンのことって分かるかな?」と案じると、松井ナビが「横にタイトルとして『ペンギン』って書いたら大丈夫だよ」と題詠という形を紹介。子どもの句を生かす方法を即座に探す。大人にとっても、「題詠」という手法の効能を再認識するナビゲーションだった。
しましまのレッサーパンダ木にのぼる(6才女子)
ちゃいろたすしろたすくろは? レッサーパンダ(7才男子)
「見たまま」が表れた句に動物の生態への驚きが息づいている。子どもの見方を目撃するのは親子ワークの醍醐味だ。
「何個できた?」「12個!」「勝ってる」と、できた句の数を競いだした子どもたち。いつのまにか句作がゲームになっている。学びが遊びになり、やる気に火がつく。
一方、風韻連衆の伊藤さんは、スケッチしながら悠然と句作している。
身にしみるからだ照らす陽トラトラと(正舟)
正舟は伊藤さんの俳号だ。「トラトラと」という即興オノマトペがユーモラスな一句。
1時間半の吟行を終え、広場へ向かう。3句選んで短冊に清書し、披露タイムへ。
「赤パンダ?」
「レッサーパンダの言い換えか!」
「<タヌキはぜんぜん ドラえもんに にてません>、あれ? 変!」
「8音だね。どうしたらいいかな、たとえば『ぜんぜん』をとってみて、『タヌキはね』とするとか」
人の句を聞き、自分の句を読み、うふふふと笑い声があがった。
気持ちを込めた句と、写実的な句のコントラストが際立つ披露会となった。
たくさんの句を作れるようになった子どもたち。575の型のリズムもつかめてきたようだ。ステップアップとして、次は季語を取り合わせられるといい。やりたいことは尽きない。
トラ奥で伸びあべのハルカス秋の空(松井路代)
大阪の空のもと、編集キッズの背がほんの少し伸びた一日となった。
吉野陽子
編集的先達:今井むつみ。編集学校4期入門以来、ORIBE編集学校や奈良プロジェクトなど、18年イシスに携わりつづける。野嶋師範とならぶ編集的図解の女王。子ども俳句にいまは夢中。
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コメント
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2025-07-02
連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。