[15綴・物語講座]「あいだ」を物語る、リアル稽古・蒐譚場

2022/12/14(水)08:00
img POSTedit

14綴から新設された「トリガー・クエスト」の最後のお題が出題され、1週間後に参稿を控える12月4日(日)。

待ちに待ったリアル稽古「蒐譚場」は、今年もオンラインと本楼でのハイブリッド開催となった。

だが、南は石垣島から北は北海道まで、寒暖差22度…どころか、海外受講組も多い物語講座にとっては(今綴はノルウェー、オーストラリアからも!)、むしろ全員がこの場に集える環境として、望むところ。

 

 

文叢の仲間たちに会えるのが楽しみな人、新たな方法を得ようと虎視眈々の人、やや停滞気味の稽古に後ろめたさを抱えつつ浮上のきっかけを求める人…。続々と本楼に集う叢衆の、それぞれに期待と不安がないまぜのキラキラした顔に、月匠、林頭、綴師、創師、師範のプロローグ挨拶から、すでに尋常ではない熱がこもっていた。続くプログラム01「叢人譚」では、師範代が文叢と叢衆を語り、叢衆が物語と稽古を語る。十分に物語筋が温まったところで、蒐譚場名物プログラムのひとつ「文叢八譚」が幕をあけた。

 

◆プログラム02:文叢八譚

 

物語講座の文叢(教室)名は、2つの物語作品の一種合成で生み出されるのが常である。この2つの物語を使い、文叢ごと90分の共読・共作で、新たな物語を生み出し、1冊の本を装丁まで完成させるという、スーパーでハイパーなリアル稽古。一度経験すると絶対に忘れることのできないワークショップだ。

果たして、今年の出来は上々。道中は気が気じゃなかった月匠・綴師・創師も、各文叢のプレゼン後には、「このデザイン、ワクワクする」「出版社や作者にも工夫があるね」「続きが読みたい!」と絶賛の総評が飛び交った。

 

◆プログラム03:編伝1910

月匠×綴師×林頭による、お稽古スタート前哨戦となるスペシャル講義。

「映像の世紀」をベースにした月匠×綴師の1910語り、編伝鼎談は、当然の絶品。ZOOMの向こうで「物語の力」を語る林頭の背に、「物語五要素」の短冊がみっちりと垂れ下がっていたのが印象的だった。物語における「ルル3条」の効用に、目から鱗が落ちた叢衆も多かったのではないだろうか。

 

とっぷりエピローグの振り返りまで堪能した叢衆の顔に、もう不安はカケラもなかった。指導陣の用意周到なダンドリダントツで、距離などものともせずに広がった物語は、それぞれを包み、入り込み、とてつもない着火剤として編集筋を刺激してしまったらしい。

まずは1週間後のトリガー・クエスト参稿、編伝1910を経て2月の績了まで、未知に飛び込む勇気を持って、「あいだ」を物語る旅は続く。

 

  • 小濱有紀子

    編集的先達:倉橋由美子。古今東西の物語を読破し、数式にすることができる異才。国文学を専攻し、くずし字も読みこなす職能。自らドラムを打ち鳴らし、年間50本超のライブ追っかけを続ける情熱。多彩で独自の編集道を走る、物語講座・創師。

  • リアルな師脚座は、ますます物語に満ちている【16綴物語講座への誘い】

    9月3日(日)。 残暑どころか、まだまだ盛夏と見紛うばかりの熱気のなか、当期指導陣全員がイシス学林局に集合。 16綴師脚座は、久々に完全リアル開催と相成りました。   師範からの熱い厚いプログラムレクチャーはい […]

  • いざ、発見と構築の「物語」という方法へ【16綴物語講座への誘い】

    先日、「ガウディとサグラダ・ファミリア展」に行ってきました。 展示は「人間は創造しない。人間は発見し、その発見から出発する」という素晴らしい名言からスタートしたのですが、私の人生の師のひとりであるガブリエル・タルドの「す […]

  • ウキウキしかない秋~15綴物語講座が待っている!

    昨季14綴で、開講以来初の大幅なお題改編(「異端で異質。物語講座 14綴から、新たな冒険がはじまる」)を経て、さらにウキウキの止まらない物語講座。 世界を切り拓くアウトロー・イシス編集学校において、さらなる横超・凌駕を画 […]

  • それはいつかの、あの物語【78感門】

    すでに「物語講座四冠受賞の男【78感門】」で授賞式の顛末ごとお伝えしたように、受賞者本人も驚く間もないくらい、鮮やかな4冠で幕を閉じた14綴・物語講座。   さて、物語講座アワードの名物といえば、各プログラムや […]

  • 【Playlist】ものがたりに虹をかける10選:小濱有紀子

    モノ語り、ヒト語り、コト語り。   自分の内側にある「語らずにはいられない」ことを、ひとりよがりにならず、いかに伝えるか。 内側ではなく外側にある「語らずにはいられない」ことを、どのようにして発見するか。 &n […]

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。