エディストで見たエディスト──  In and Out of Edist

2021/01/11(月)11:11
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 左右から照明を当てて映り込む画面を上部から明るく、暖かな白い壁を背にモニターを見る。遊刊エディスト編集部の後藤由加里である。一声も聞き漏らさないように適切にイヤホンを着けている。
 昨年末の45[破]分針タンブール教室オンライン汁講に参加したときのすがたである。11[離]の戦友であり同じく編集部の上杉公志と一緒に、当時右筆だった筆者からの出席依頼に二つ返事した。

 当期(今回は45[破])外から異質や意外を持ち込むのは汁講の常であるが、実にエディスト編集部員が記者ではなく突破した先の講座案内人としてはじめて参加した。

 

 エディスト編集部員を迎える準備に、参加学衆にエディストをどう読んでいるか考えて来てもらうことにした。
 学衆からは、記者紹介が面白い(記事末尾「この記事を書いた人」欄)、小倉加奈子さん(析匠)のことを知らずに小倉さんの本を読んだ、[守]の時に教室に差し入れられた記事は読んだ、といったコメントが寄せられた。
 確かに読み手からのフィードバック、特に学衆からのそれは貴重だ。

 


 いよいよエディストがエディストを語る番である。
 後藤はカメラを持ち、撮影班を中心に活動している。Zoomの背景に白い壁を選んだのもうなづける。独立不羈の自由ではなく、イシス編集学校に投企してエディストになって松岡正剛(校長)を密に撮影する自由を選んだ。
 「被写体としての校長は造形として美しい」と切り出し、「カメラを抱えてると撮らされてしまう」と続ける。プロのカメラマンも口を揃えてすごくおもしろいと話すという。

 

林朝恵とペアでセイゴオを映像・写真メディアに“翻訳”する後藤(右)(八田英子撮影)

 

 そんな後藤が記事をつくるときに意識していることは、生き生きとした瞬間を撮ること、その人が一番輝く瞬間を言葉に焼きつけることである。指南と同じ感覚で、その人が輝く瞬間に注意のカーソルをあててキャプションで際立たせる。


 そして、イベント自体よりもイベントが作られる方法を重視して書くこと。つまり常に稽古しながら、方法を照らしつつ記事をつくり出している。

 「遊刊エディスト」の読書にあたり、贔屓のライターを見つけて楽しんでもらえるとよい、という見方を紹介する。例えば、小倉析匠(「をぐら離」)、深谷もと佳師範(「週刊花目付」[ISIS for NEXT20])、堀江純一さん(「マンガのスコア」)など。
 キャラ立ちしているライターを入り口にする見方はなるほどである。

 

被写体としての後藤。カメラとマスクの奥の微笑

 


 続いて上杉が登場する。
 上杉の記者紹介欄によれば「誠実が服をきたような人柄」とある。これになにか付け足すとするなら、「公志」の名前が人の形を得たというよりも、その人格が先にあって名前が後から追いついたと言って間違いではない。
 安らぎを与える金茶色をした木製クローゼットの扉を背に、照明を当てた反対側の端に座って微笑んでいる。光の当たる場所は似合わないと謙遜するように、比較的暗い場所に静かに身を置く。あまり明るすぎると見る人の目を疲れさせるかもしれない、そうした配慮が本人の意思に関わらずあったものと思わせる。


「メディア」の後藤とすれば「スコア」の上杉。イシスの音を担当

 


 人に害を与え得ない声で上杉は話し始める。
 エディスト編集部内で記事が仕上がるプロセスも、汁講の編集ワーク「『すごい比喩』の歌」と同じように、まさにお題があって回答とフィードバックがループする編集稽古であるという。いわばライターが学衆、編集長が師範代ロールを担う。

 続いて本人が「JUST」記事(活動のライブ感ごと即時に記事化する)を手がけることが多い中で心がけていることを話した。編集学校の活動の「場」をニュースにして届けることにより、出来上がった記事はラフスケッチという限界を持ちながらも、現場の様子の輪郭・プロフィールを浮き上がらせていろんな読み手の心に届くように努めていると。

 

 さらに「遊刊エディスト」の発端、2016年ごろ校長から吉村堅樹林頭に「イシスにメディアがほしい」というお題が投げられたことから現在までクロニクルに語った。
 エディスト編集部に対して以前、「編集学校に起こっていることを出したらいい」「それ自体が事件だ」という校長ディレクションがあったこと、そして、何事も見方や切り口によって編集されると光ることを実践して伝えるのが「遊刊エディスト」だということである。


 「遊刊エディスト」は編集学校のコンテンツエクスプレスであり、メソッド・メッセージエクスプレスだった。アウトプットとして読んでいた記事の裏側つまりインプットを知ることで俄然面白くなる。
 後藤と上杉の話を受けて、学衆からこれからもっと読んでみたいと声があがった。読み手から書き手への着替えを期待する。指導陣が記事を学衆に伝えるとき、指南と同じでインとアウトをつなげるように、書く方法ごと伝授したいものである。

 言語化し尽くせない編集学校を言語化する試みがリアルで、オンラインで続いていく。

 



 エディストヒストリーについては以下放談をご覧になられたい。

  2020新春放談企画「エディスト・スタイルでいこう!」 前編 -エディストヒストリー
  (中編・後編へリンクあり。)


  • 井田昌彦

    編集的先達:寺田寅彦。怒涛の「離」を涼しい顔で典離し、書かれていないお題までやってしまった世界知の具現者。イシス婚で授かった息子にはグーテンベルク博物館で英才教育。聞き取れなさではイシスで一二を争うウィスパー・ボイスの持ち主。