震えと涙で能力開放! バンビ森の神獣化

2021/02/19(金)10:11
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 「エッキョウ汁講」。46[守]襟足バンビ教室師範代、尾島可奈子が願いと決意を込めたネーミングだ。
 開講以来、学衆の回答を丁寧に掬い続けてきた。指南はもちろん、囁くような声も聞き逃さず勧学会に共読の場を立ち上げた。稽古はお題を重ねるごとに深まっていた。しかし第1回番選ボードレールには悔いが残った。もっともっと、バンビのようにジャンプできたのではないかと。
 汁講は過去をエッキョウ・今とエッキョウ・未来へエッキョウの三間連結仕立て。稽古を振り返り、互いのつながりを深めるためのワークが準備されていた。お菓子や動物に喩えての他己紹介では、金平糖や水ようかん、トラやパンダが飛び出した。担当師範の武田英裕は教室を「たべっ子どうぶつ」に喩えた。「いろんな動物がいるバンビの森、みなさんは動物から神獣に進化できるはず」の言葉に、それぞれの気持ちが引き出された。番ボー講評に選ばれなかった悔しさ、逃げ場をつくっていたことへの気づき、師範代への申し訳なさ。過冷却の水に小さな振動が加わると一瞬で氷柱が出現するように、教室に蓄積されていたエネルギーが一気に結晶化した。全員の気持ちの震えが合わさって相転移が起きた瞬間だった。
 尾島は汁講を「決起集会」と結んだ。師範代の目に光る涙を学衆は見逃さなかった。年が明け、第2回番ボーでの襟足バンビ教室の活躍は目を見張るものだった。回答と指南のスレッドは長く伸び、エントリーした全員が入選・入賞を果たした。武田は驚嘆の賛辞を贈った。

 2月の第2回汁講プランは学衆が組み上げ、[破]だけではなく、[花伝所]へ、師範代へ、編集の人生へと向かう対話が飛び交った。
 教室みんなの力で壁も境も乗り越え、バンビは神獣となった。跳躍はもう止まらない。


武田師範による汁講のイラスト。似ているだけではなく、各自の最高の笑顔を捉えている。2回目の汁講には[破]植田フサ子評匠と[花伝所]深谷もと佳花目付が駆けつけ、編集する人生を垣間見せてくれた。
 

  • 石井梨香

    編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。

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コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。