11月27日、2年振りに本楼でリアル開催された48[守]伝習座。ここでは師範が講師となって、師範代たちにさまざまなモノを手渡していく。用法4の「用法語り」を担当した師範の角山が、そこでつたえたかったこととは何か。
えー、せっかくなので着物に着替えて、扇子片手に一席伺います。
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えェ、オリンピックのインタビューなんかァみておりますと、アナウンサーという連中はなんであんなしょーもないことを聞くんでしょうな。
アナウンサー「金メダルを獲得して、どんなお気持ちですか?」
選手「金メダルを獲得できてとても嬉しいです」
嬉しいに決まってる。聞くだけ野暮ってェもんです。
ところがこの野暮な質問が世の中に蔓延してる。親が子に「宿題したの?」と聞く。えェ、してないから聞いている。当然返ってくる答えもわかってる。「今からする」ってね。これは質問でなくてただの小言です。国会中継なんぞをみていましても、あれですな、最初からなんと答えるかわかっていて聞いている。茶番です。
問う側も問われる側も「答え」がわかってる質問を、これ、「愚問」といいます。最初から答えが分かっているから、場がこれっぽっちも動かない。交わし合いも創発もおこらない。
動かしたくないならいいんですよ? 予定調和で横並び、お手々繋いでチイパッパ、仲良しごっこをしてりゃァいい。
でもそれって面白いの? というのが、これ、あたくしの「問い」であります。
じゃあどうすンの、てェ話なわけですが、それが守の用法4「きめる/つたえる」、というわけです。これ、言葉のまんま受け取って、「自分を表現するぜ!」なんて力んじゃいけませんぜ。自己表現なんてェもんは脇に置いといて、「きめるって何?」「つたえるって何?」と問わなきゃなりません。
簡単に言ってしまえば、「きめる」とは「モードをキメる」ってェことです。手持ちの服が少ないのが玉に瑕ですが、あたしだって時と場に応じて着替えます。文章だって服とおんなじ。キメキメの勝負服に身を包めば気分もアゲアゲでしょ? 文章だって着替えた途端に、自ずと中身も言葉も変わってくる。
「つたえる」っていうのは少々ややこしいので、虎の巻を持ち出してみましょう。
《どんな情報内容であれ、それを子どもが聞いたのか、病人が知ったのか、またその情報内容が誰に伝えられるかによって最後の編集の仕上げは変わっていくべきなのである。それをここでは「語り手の突出」とよんでいる》(『知の編集術』)
「語り手の突出」とは、イシスの秘伝・編集八段錦の最後を飾る言葉ですが、「誰に」が決まると、語り手が突出すると書いてある。いいです? 「オレが!」じゃないんです。「誰に?」なんです。ここに「つたえる」のコツがある。あたしとあなたがいて、その「あいだ」も丸っと含めて「語り手が突出」するというわけです。
用法4は、9つのお題でできておりますが、乱暴にまとめてしまえば、これ、「問う技法」を学んでるんです。あたしとあなたの「あいだ」を「問い」で「つなぐ・ゆさぶる・ずらす」稽古をしているってェわけです。問う側も問われる側も答えを知らない「問い」で、ツルツルの表面をケバケバさせようてェわけです。
表現するとは 問う ことである。
箴言っぽくキメればこういうことになりましょう。
さらに舶来の言葉でキメてみれば、こうなります。
イシスの稽古とは Interview することである。
「Inter」はお馴染みですな。インタースコアのインター。「相互に」「あいだ」という意味です。では「view」は? 見る? そう、そうですな。でも「見る」だけじゃない。辞書を引っ張り出すと、「調べる」「考える」「見つける」「思い巡らす」と書いてある。
つまり、インタビューとは、相互に思いを巡らす、お互いに考える、ということだったんですな。決して一方通行じゃァない。行き来がある。ここには「問い」の交わしあいがある。エディティング・モデルの交換がある。そこで初めて、「きめる」「つたえる」が起こってくるというわけであります。
さあ、用法4を手に、お互いにインタビューしてくださいな。場がビューっと動きます。
えー、おあとがよろしいようで。
角山祥道(ジャイアン)
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。
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