発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

春の嵐のように、その男は突然やってきた。 感門初日の深夜25時。1本のメールに品川未貴(46[守]四次元カフェ教室師範代)は驚いた。 品川と齋藤は「46[守]チーム夾綺らんでぶ~」の仲間で、以前から交流はあった。初日の冒頭、通信トラブルで幻となった支所中継だが、一瞬映った九州会場は品川が経営するアートカフェ(福岡市アジア美術館内イエナコーヒー2号店)だった。齋藤はそこで感門2日目を迎えたいという。だが、齋藤は知らなかった。九州会場は初日だけのしつらえだったということを。 品川はあわてた。夕刻からはカフェ警固店での仕事があり、自分1人では応接できない。中野由紀昌(九天玄氣組組長)に深夜の電話で相談するが、中野も瓢箪座からの中継があり、そうそう動けない。 そこからは電光石火で、九天の心あたりの組員に連絡がまわる。東京からのお客人を無下にしては九天の名折れである、誰か動けないかと。結果、品川と三苫麻里(45[守]中洲マリリン教室師範代)がアジア美術館アートカフェにて、齋藤を迎えることとなった。 2日目の昼刻。卒門式を無事終えた朗らかさをまとって齋藤はあらわれた。カフェのテーブルでパソコンを開きさっそく感門に見入る。 46[守]メンバーにとっての、この日のハイライトは出世魚教室名の発表だ。誰が46[破]の師範代となり、教室名がいかなる出世をとげるのか気になるのが当然だろう。そして、品川の新教室名もここで発表されるのである。 「新教室名は互次元カフェ教室です」 思わず破顔する品川。 『互次元!もっと交わっていってくださいね!背後に、なんと、らっかろー齋藤師範代が映り込みました!』 書き込んだのは「チーム夾綺らんでぶ~」担当の若林牧子師範だ。ほんの一瞬だけ映り込んだ齋藤の姿を見逃さなかったのだ。ものすごい注意のカーソルの発動である。 ★ 2日目の夜、齋藤を囲むZOOM歓迎会が開かれた。 速修は、通常38題17週間のところを13週間で駆け抜け、初めの一ヶ月は毎日出題というハイスピードコースだ。学衆の数も、いいちこは11名、落花狼藉は14名と通常より多かった。この指南生活がどれほど苛烈なものか、師範代経験者ならば容易に想像がつくだろう。 しかしそれを語る2人の笑顔は力みが抜け落ち、なんとも晴れやかだ。 さて、そもそもなぜ齋藤は突然の九州訪問を思い立ったのだろう。当然、その質問がぶつけられる。 「もし齋藤さんに何かあったときは、私が代わりにやります」 齋藤はこの品川の心意気に感じて、いつか返礼をしたいと思っていた。 期をともにした師範代同士の友情を聞いて、皆が胸をうたれた。 感激が場を満たすなか、誰かがふと「齋藤さん、その胸の文字は何ですか?」と尋ねた。 あまりにもその通りすぎて、座は一転、大爆笑となった。 九州に嵐を巻き起こし、落花狼藉オトコは東へと帰っていった。
文:三苫麻里
|
石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20周年。発足会を行った秋をめざし、周年事業を進めている。軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠した雑誌の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグループをつ […]
8年近く続いた黒潮大蛇行終息の兆しが報じられる中、イシス界隈に、これまでにない潮流がおこっている。 松岡正剛の「千夜千冊」をキーブックとし、「九州の千夜千冊」を冠した雑誌づくりが動き出したのだ。 イシス編集学校の九州支所 […]
本から覗く多読ジム——『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』【ニッチも冊師も☆石井梨香】
少し前に話題になった韓国の小説、ファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(集英社)を読んでみました。目標を持つこと、目指す道を踏み外さないこと、成功することや人に迷惑をかけないことに追い立てられている人々が、書店と […]
[守]講座の終わりが近づくと、決まって届く質問がある。「教室での発言はいつまで見られるのですか?」 インターネット上の教室でのやりとりがかけがえのないものだということの表れだ。見返すと、あの時のワクワクやドキドキが蘇る。 […]
「編集しようぜ SAY!GO!」師範代は叫んだ【81感門・50守】
インターネット上の稽古場に50[守]学衆の声が届かなくなって10日が過ぎた。次期に受け渡すものを交し合っていた師範のラウンジももうすぐ幕を下ろす。卒門式の師範代メッセージには、メモリアルな期を走り切った充実がみなぎって […]
コメント
1~3件/3件
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。