読書も映画も編集だ。そこには「3A編集工学」が動いている。
「3A」とはアフォーダンス(接知力)・アナロジー(連想力)・アブダクション(仮説力)のこと。情報が与える<らしさ>を捉え、情報から連想を広げ、仮説を立てて情報を動かしていく。クリエイティビティとは0から新たな1を生み出すことではなく、すでにある情報を自由自在に動かしていくことである。
2月22日(土)に開催されたエディットツアー神保町では、[守]師範の林朝恵と[破]学匠の原田淳子がそれぞれの得意手を活かし、映画にまつわるカット編集術と松岡正剛直伝目次読書術で参加者の編集力を引き出した。本と映画に遊んだグループワークの様子を12カットでお届けする。
会場は神保町で唯一の子ども本専門店「ブックハウスカフェ」。靖国通り沿いに北向きに建てられている。ここに「読書と映画」に関心を寄せる19名の参加者が集まった。
プログラムの前半は目次読書術。目次とは著者による究極の本の要約であり、ガイドである。読前に目次をよく読んで本との関係を作っておくのが大切。原田学匠の華麗なナビゲートで参加者たちは持参した積読本をひらいていく。
目次読書にも「3A」が動いている。目次から受ける本のらしさを受けてカマエを作り(アフォーダンス)、自分が持っている知識と目次のキーワードを高速で結びつけて連想をし(アナロジー)、本の内容について仮説を立て相手に伝える(アブダクション)。まだ読んでいない本なのに話は止まらず会場の温度は急上昇。
休憩を挟み、後半は映画のカット編集術。NYの大学で映画を学び、CM制作会社での勤務経験もある林師範は映像を見る目利きでもある。「4枚のカットを並べてストーリーを作ってください。3分で!」
「3分」に会場はどよめくも、カチンコが鳴ると5チームは一斉にストーリー作りに取り組んだ。しかし、これは序盤である。
ここからが本番。組み立てたストーリーに「3A」を意識しながら別の2カットを追加して新しい物語を作る。画から受けるらしさを入り口にしてジャンルを決める(アフォーダンス)、次に類似する作品からイメージを広げて飛躍する(アナロジー)、そして新しい物語を仮留めで出す(アブダクション)。
追加する2カットのために林師範が用意したのは24枚の画。本人曰く「選んでいたらどれも面白い画で捨てることができなかった」。とは言え、いくら何でも多すぎである。テーブルに並べ切れないほどのカットたち。
ワーク終了のブザーが鳴り、各チーム監督を立てて作品をプレゼン。それに対してテーブルコーチたちが寸評をつける。出来上がった5作品はこちら。
・爆破あり大どんでん返しのラブドラマ『Departure』
・人間に恋した天使の悲しきファンタジー『なりそこねた男』
・夢を追いかける青春サクセス物語『独人歩記(ひとりあるき)』
・冷え切った夫婦のB級SFコメディ『冷却期間』
・生死観を問うシリアスロマンス『孤独な天使』
ここから林師範が選んだ最優秀作品賞は・・・『孤独な天使』!
受賞理由は思い切ったモノカットを使い、そこで強烈にストーリーを展開させたこと。モノカットはそれだけだと物語にはならないが、カットの間に入れることでアナロジーを動かすことができ、あるアブダクションを相手に預けることができる。
また、林師範は最後に解決してしまうハリウッド映画があまり好みでないため、あえて結論が曖昧になっているストーリーが受賞の決め手となった。
読書も映画も編集だ。いつもの読書の仕方、いつもの映画の見方が変わる2時間のワークは今日初めて会ったメンバーと1つの作品を作り上げた高揚感を持って幕を閉じた。
後藤由加里
編集的先達:小池真理子。
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。
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