2020ETS編集聖火ポスト02『孤独な天使』最優秀作品賞に選ばれた理由は?(神保町)

2020/03/09(月)16:24
img

 読書も映画も編集だ。そこには「3A編集工学」が動いている。

 

 「3A」とはアフォーダンス(接知力)・アナロジー(連想力)・アブダクション(仮説力)のこと。情報が与える<らしさ>を捉え、情報から連想を広げ、仮説を立てて情報を動かしていく。クリエイティビティとは0から新たな1を生み出すことではなく、すでにある情報を自由自在に動かしていくことである。

 

 2月22日(土)に開催されたエディットツアー神保町では、[守]師範の林朝恵と[破]学匠の原田淳子がそれぞれの得意手を活かし、映画にまつわるカット編集術と松岡正剛直伝目次読書術で参加者の編集力を引き出した。本と映画に遊んだグループワークの様子を12カットでお届けする。

 

 会場は神保町で唯一の子ども本専門店「ブックハウスカフェ」。靖国通り沿いに北向きに建てられている。ここに「読書と映画」に関心を寄せる19名の参加者が集まった。

 

 プログラムの前半は目次読書術。目次とは著者による究極の本の要約であり、ガイドである。読前に目次をよく読んで本との関係を作っておくのが大切。原田学匠の華麗なナビゲートで参加者たちは持参した積読本をひらいていく。

 

 目次読書にも「3A」が動いている。目次から受ける本のらしさを受けてカマエを作り(アフォーダンス)、自分が持っている知識と目次のキーワードを高速で結びつけて連想をし(アナロジー)、本の内容について仮説を立て相手に伝える(アブダクション)。まだ読んでいない本なのに話は止まらず会場の温度は急上昇。

 

 休憩を挟み、後半は映画のカット編集術。NYの大学で映画を学び、CM制作会社での勤務経験もある林師範は映像を見る目利きでもある。「4枚のカットを並べてストーリーを作ってください。3分で!」

 「3分」に会場はどよめくも、カチンコが鳴ると5チームは一斉にストーリー作りに取り組んだ。しかし、これは序盤である。

 

 ここからが本番。組み立てたストーリーに「3A」を意識しながら別の2カットを追加して新しい物語を作る。画から受けるらしさを入り口にしてジャンルを決める(アフォーダンス)、次に類似する作品からイメージを広げて飛躍する(アナロジー)、そして新しい物語を仮留めで出す(アブダクション)。

 

 追加する2カットのために林師範が用意したのは24枚の画。本人曰く「選んでいたらどれも面白い画で捨てることができなかった」。とは言え、いくら何でも多すぎである。テーブルに並べ切れないほどのカットたち。

 

 ワーク終了のブザーが鳴り、各チーム監督を立てて作品をプレゼン。それに対してテーブルコーチたちが寸評をつける。出来上がった5作品はこちら。

 

・爆破あり大どんでん返しのラブドラマ『Departure』

・人間に恋した天使の悲しきファンタジー『なりそこねた男』

・夢を追いかける青春サクセス物語『独人歩記(ひとりあるき)』

・冷え切った夫婦のB級SFコメディ『冷却期間』

・生死観を問うシリアスロマンス『孤独な天使』

 

 

 

 

 

 ここから林師範が選んだ最優秀作品賞は・・・『孤独な天使』!

 

 

 

 受賞理由は思い切ったモノカットを使い、そこで強烈にストーリーを展開させたこと。モノカットはそれだけだと物語にはならないが、カットの間に入れることでアナロジーを動かすことができ、あるアブダクションを相手に預けることができる。

 また、林師範は最後に解決してしまうハリウッド映画があまり好みでないため、あえて結論が曖昧になっているストーリーが受賞の決め手となった。

 

 読書も映画も編集だ。いつもの読書の仕方、いつもの映画の見方が変わる2時間のワークは今日初めて会ったメンバーと1つの作品を作り上げた高揚感を持って幕を閉じた。

 


  • 後藤由加里

    編集的先達:小池真理子。NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。

  • 松岡校長が学匠に託したいもの 47[守]46[破]伝習座 20shot

    ▼同時進行する守破パラレルワールド 時同じくして開始した47[守]、46[破]伝習座。[守]が集う1階本楼では生まれたばかりの教室名とともに大海に漕ぎ出そうとする師範代に向けて「これでもか!」と指導陣が背中を押す。インプ […]

  • 1000記事間近! 切り番ゲッターは誰だ?!

    あれから525日が経ちました。遊刊エディストがオープンしたのは2019年9月3日のこと。この1年5ヶ月、毎日記事を更新しています。公開記事も970を超えて、ついに1000間近となってきました。来るべき1000記事目はど […]

  • 『江戸問答』帯撮影の裏側 10shot

    『日本問答』から三年。松岡正剛校長と田中優子先生の『江戸問答』(岩波新書)がついに刊行された。本は31ページ増え、1ミリ厚くなった。帯は1.7センチ高くなり、帯文字は横書きから縦書きになった。松岡校長は腕組みの時に左腕 […]

  • 史上初 松岡火元校長オンライン講評会14[離] 10shot

    [離]史上初。第4週のあるお題に対して、松岡火元校長が離学衆一人一人にオンラインで直接講評するという。これは千離衆であれば「そんな贅沢なことを!」と指を咥えて羨ましがる大事件である。門外不出の[離]カリキュラムの一部の […]

  • 松岡正剛、初詣と3つのヒント 10shot

    2021年の10shotは初詣からはじめます。  「あけましておめでとうございます」1月5日 11:00AM 寒空の下、新年の挨拶を交わす。一行が向かうのは吉田松陰が眠る松陰神社。   豪徳寺から世田谷線に乗 […]