巨大な仏に見守られながら、講座はスタートした。2020年、2月23日のエディットツアースペシャル福岡。ナビゲーターは、仏もかくやの柔和な笑みを湛えた石井梨香師範だ。
会場は福岡アジア美術館内のアートカフェだ。九州有数の歓楽街中洲と、川端商店街を見渡すビルの7階にある。冒頭の、仏様が微笑む壁いっぱいの絵画は、ミュージアムの展示品なのである。
「様々なお客様がいらっしゃるので、メニューも多彩にしました。ちょうど百貨店のように」と、「アジ美店のらしさ」を紹介してくれたのは、アートカフェ店長の品川未貴師範代だ。
そんな場所柄を反映してか、13名の参加者も多彩な顔触れである。年代、性別、職業、居住地もバラバラで長崎や東京からの参加者もあった。
まずは自分の「らしさ」をお菓子に見立てて紹介する「お菓子なわたし」から、ワークがスタートする。職業などの属性ではなく、「見立て」によるユニークな自己紹介に、だんだんと場がほどけていく。この日はなぜか「あんこ」に自分を見立てる人が多かった。なんだろう。商店街名物・川端ぜんざい(激甘い)の念が飛んできたのだろうか。
次はポストイット編集術。まずはこの半年間に買ったものを、ポストイットに書きだしていく。それを、「価格順」「気に入っている順」「100年後の福岡に残したいもの」と次々と軸を取り換えて、並べ替えていく。これは、なんといってもスピードがいのち。加速するドライブ感覚が、連想を引きずり出していく。
「はーい、時間です。できましたか?」と石井が促す。柔和な顔して、決めるところはビシッと決める人だ。
「うわー、お気に入りでは上位の物が全部下の方に来ちゃった」軸を換えるごとに、ダイナミックに変化する情報の姿に、驚きの声があがっていた。
さて、この日のメインは、グループワークによるプランニング編集術である。プランニングするのは、「100年後のアジ美にあってほしいカフェ」
さきほど書きだしたポストイットから要素を2つ選び、それに本を一冊加えて、三位一体の型を使ってプランニングしていく。参加者はグループに分かれ、カフェにある本を一冊選んで話し合いを始めた。
「この本のどこを取ろうかな・・」
「100年後って宗教とかあるかな・・・」
「意外な物を組み合わせたほうが面白いんじゃ・・・」
「アジアっぽさは意識する?・・」
白熱する対話。見知らぬ者同士の相互編集のアイダで、未来のアジアン・カフェのプランがみるみる立ち上がっていく。時間内になんとか着地させて、さあ発表!
各チームがプランニングしたカフェは以下のラインナップ
・チームA 「時がないカフェ」
選択本『ゆっくり、いそげ カフェからはじめる人を手段化しない経済』
景山知明 大和書房
・チームB 「タイムトラベルカフェ」
選択本『よるのねこ』ダーロフ・イプカー/光吉夏弥訳 大日本図書
・チームC 「アイディアが集うカフェ」
選択本『緑の抒情』安次嶺金正展
・チームD 「お守りカフェ」
選択本『みち であい』アジア太平洋博覧会 テーマ館展示図録
どこも、本の「らしさ」をしっかり取り出して、プランに組み込んでいる。日常超越的な内容が多いのは、現在の不足がバネになったのだろうか。
チームCの発表者はこう説明してくれた。
「アイディアが集うカフェは、オーガニックと集いがテーマです。ここでは原料から商品までそろいます。そして、たくさんのアイディアが集まってきます。そこは、知らない人同士が知り合えるロマンティックな場所です」
聞きながら、そのドリームカフェは100年後と言わず、今ここで、すでに生起しつつあるもののように思えた。グループ内での対話に、参加者同士のアイダに、それはもう芽生えつつあるのではないか。
グループワークを終えて、石井が『知の編集術』の冒頭を読み上げた。
「編集は遊びから生まれる/編集は対話から生まれる/編集は不足から生まれる」
参加者たちは、大きく頷いた。
最後に、中野由紀昌組長が、九州支所「九天玄氣組」と千夜千冊エディションの紹介をする。そのなかで、こんなことを言った。
「型があるから、発想が生まれる。型があるから、自由になれる。型の力です」
さらに大きな納得の頷きが、返ってきた。
ワークのあとは、希望者とスタッフで小さなお茶会。品川が焙煎したコーヒーで、フル回転した頭と身体をリフレッシュした。
さあ、皆さま。
再会はぜひ、エディットカフェ(編集学校ラウンジ)にてお待ちしています!
written by 三苫麻里
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
【参加者募集中】4/15(土)石井梨香のエディットツアー「見え方がかわる・自分をひらく・編集ではじめる」
木を見て森を見ず――細かなところに目が行き、全体像や本質が見えていないことを戒める言葉である。しかしこの世は多様で複雑だ。細部にこそ全体が潜んでいることもある。社会をつかまえるには、木も森も一緒にとらえることが必要だ。 […]
松岡正剛が校長をつとめるイシス編集学校で予定されている毎月の活動をご案内する短信「イシスDO-SAY(ドウ-セイ)」。 4月3日は読書コース[多読ジム]の申し込み締め切り。 4月24日は応用コース[破]の開 […]
【連続開催】4/9藤田小百合の第一回「日本を感じる編集ワーク床の間編」
蔵・三棚・書院。これをイシス編集学校では、レパートリー・カウンター・トレイとも言う。 アーカイブした情報を一旦取り出し、仮置きし、そこから季節や時期、必要に合わせて取り出す。日本人は季節に応じて、情報を取り合わせるこ […]
【緊急開催】3/29久野美奈子の「編集的コミュニケーション」エディットツアー!
編集は対話から生まれる。 この「対話」を鍵に起業支援やコンサルティングを続けてきた師範代・久野美奈子が久々にエディットツアーを緊急開催する。今回のエディットツアーの仕立ても、久野のこだわり満載のものだ。 […]
【51[守]教室名一覧】おいでシナプス、カタルトシメス、一月二十五日も仲間入り【81感門】
第81回感門之盟も、いよいよ佳境を迎えている。最後にひかえた松岡正剛校長の講義”校長校話”の直前を飾るのは、シン教室名発表のコーナー「冠界式」だ。感門ツウの方は覚えているだろうか、これは49[守]のときに刷新されたコーナ […]