「きときと禁止!」。エディットツアーを開催するにあたって、ナビを務める藤田小百合は密かにこう誓った。
富山きときと空港、きときと寿司、きときと市場など、新鮮や精力的なことを意味するこの方言は、富山を語る際のキーワードとなっている。藤田は、参加者がこの常套句から離れて、「新しい富山」に出会う場にしたかった。
会場は、富山駅から路面電車で10分のところに位置する数寄書斎。その名に合わせて、桜の花や葉の切り絵が飾られたり富山の名産品が展示されたり。室礼(しつらい)も嗜む藤田らしい演出に、会場には開演前からハレの気配が満ちていた。
ワークのテーマは「『わたしの富山/富山のわたし』が目覚める編集術」。きときとをはじめ、寒ぶり、白エビ、ホタルイカなどの画一以外で、自分の中に眠る自慢したい富山をいっしょに見つけに行こう、との試みだ。
自分をお菓子にたとえる自己紹介ワーク「おかしなわたし」からスタート。別のものに見立て、そのらしさやっぽさを用いて自分の意外な一面・イメージを素早く伝える編集術である。参加者の浪瀬佳子さんの「おかしなわたし」は「複雑なまんじゅう」。そのこころは「見た目ほど甘くない」のだそうだ。
つづけて、もうひとりのナビの白川が、視点やカテゴリーを動かせば同一の情報でもガラリと姿を変えることができる「地と図」を説明する。地を動かしてコップの使いみちを考えてもらったところ、鉛筆立てや糸電話という図が飛び出した。富山衆、なかなか筋がいい。ここで前半終了。休憩時間には、富山の銘菓(迷菓?)「昆布おはぎ」が振る舞われた。
富山の「地と図」編集が効いたお菓子の会話で盛り上がり、顔がほころび打ち解けて後半のワークへ。ワークの編集対象は「富山」。県民気質や季節、食文化などの「地」に乗せて多様な富山を発見し、同時に、いまはないけど富山にほしいモノを探してもらった。
集めたを情報をもとに、「2分で2030年の富山に残したいモノ3つ選んで」「1分で3つを順位付けして」といった高速ラリーで個人ワーク終了。
次の作業に必要な「編集思考素」のレクチャーを受けた後、グループに分かれて、メインワーク「新しい富山」のキャッチコピーづくり。個人ワークで最後にひとつ選んだ情報をグループに持ち寄り、編集思考素でつないで富山の新しいコンセプトをつくろうというものだ。
「雪のカベ」「グレーな空」「美味しい水」「(四季のような)劇団」「車に乗らなくてもよい町」など、自分の思いがつまったモノたちを、編集思考素の型に当てはめて、6つの「新しい富山」のキャッチコピーが誕生した。
「雪どけ富山」 幻魚チーム/三間連結
「顔がわかる文化街富山」 白蝦チーム/一種合成
「春夏秋冬『四季』のある富山」鰤チーム/一種合成
「浸み出す富山」 ズワイ蟹チーム/一種合成
「きときと暮らし」 蛍烏賊チーム/二点分岐
「共遊共生ワクワク富山」 鱒チーム/三間連結
なかなか打ち解けない県民気質を「雪のカベ」に見立て、融雪することでコミュニケーションが活発になっている富山を三間連結で思い描いた幻魚(げんげ)チーム。気質と気候がうまみとなっていると一種合成をつかって連想したズワイ蟹チーム。
白蝦チームの大郷さんは、「初めて会った方とも短時間にアイデアを融合できることに気づ」き、鱒チームの池上さんは「意外性を伴った、まったくあたらしいモノが出来上がっていく工程を楽しめた」と語った。
藤田には、富山を編集王国にしたいという野望がある。
「新しい富山」を編集できる人々が増えれば、藤田の夢はもう蜃気楼ではない。
白川雅敏
編集的先達:柴田元幸。イシス砂漠を~はぁるばぁると白川らくだがゆきました~ 家族から「あなたはらくだよ」と言われ、自身を「らくだ」に戯画化し、渾名が定着。編集ロードをキャメル、ダンドリ番長。
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