発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

子どもフィールドに「ことば未満ラボ」がオープンした。まだ言葉があまり話せない子どもとできる編集ワークを作り、実験する場である。子どもとの相互編集はいかように広げられるだろうか。
12月12日に開催された第一回目のワークは「お絵かきリレー」。ひとつの絵に参加者が順番に線を加えていき、どんな絵になっていくかを楽しむ遊びだ。編集かあさん・浦澤美穂の発案である。
自分の番がきたら「この絵は何に見えるか?」「何になりそうか?」と考えながら、新たな線を自由に加えていく。子どもなら、思うがままに線を描かせる。描き加えるごとに絵のバックグラウンドにあるイメージ(地)が移り変わっていくと面白い。
スタートは、浦澤が描いた楕円に1歳のみちちゃんが思うがままに線を加えた絵。
②そこへ1歳半のみかちゃんが線を加えた。(母はレディ・ガラ教室師範代の長島順子)
③ここから大人も参加。原田祥子は、楕円をトラックに見立てて駆けっこを応援する人をのぞかせた。
④松井路代は楕円を「ファイヤー!」と光らせて、「地」をガラリと変えた。
⑤光るのなら…とカミナリ雲を加える吉野。
⑥松井がさらに目を加える。
「お絵かきリレー」は、伝言ゲームのようでもあり、絵しりとりのようでもある。みなの注目は、描いた人の「つもり」と読み取った人の「つもり」のあいだにある。このズレを面白がった。
わざとずらして描いた人はおらず、誰もが回ってきた絵に最適な線を加えようとした。ここには「イメージメント」が動いている。
コミュニケーションはイメージが伝わらないと成立しない。イメージは状況、あるいは小さな世界と言える。例えば、触っていいものと良くないものの判断がついていない子どもは、その世界のしくみ、および全体像がわかっていない。その子にその世界に紐づかない単語で注意して、「言ったでしょ!」といっても何も届かない。言葉以前にイメージ(世界)を子どもにつなげる。このことをイシス編集学校では「イメージメント」という。
イシスの稽古では「伝わる」快感を体験する。大事なことまで摩滅しそうな「わかりやすさ主義」から抜け出す快感だ。その経験から、編集を使えば子どもとの気持ちのやり取りがうまくいきそう、豊かになりそう、という予感を得る人は多い。まだ言葉があまり話せない時期の子どもと分かりあいたいと願う親にとっては、なおさら期待がふくらむ。
ただ、その期待の先に、意識せず、仕上がりのイメージが浮かんでいることも多い。これは、子どもが言い間違いをした時に、親や大人から、ちょっと冷やかした言葉や残念そうな表情を引きだしてしまう。子どもはそれを見て敏感に反応する。自由な想像力の育ちにブレーキをかけかねない連鎖。親にも子にもがっかりなことだ。
今回の「お絵かきリレー」実験は、「わかりあえる」という幻想を良い意味で裏切ってくれた。見たことのない絵が飛び出し、自由にイメージを受け渡しあえた。その場でふくらむ生きたイメージだ。
肝心なのは、絵を仕上げることではなく、次の線をどう描くかを考えることをいかに面白がるか。連想やアプローチの方法という編集をいかに面白がるかだ。子どもフィールドでは今後もこの問題を考えていきたい。
スタートしてから10分。完成したそれぞれの絵。
文:吉野陽子
イドバタ瓦版組
「イシス子どもフィールド」のメディア部。「イドバタイムズ」でイシスの方法を発信する。内容は「エディッツの会」をはじめとした企画の広報及びレポート。ネーミングの由来は、フィールド内のイドバタ(井戸端)で企画が生まれるのを見た松岡正剛校長が「イドバタイジング」と命名したことによる。
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コメント
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2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。