一杯のコーヒーから始まるプランニング

2021/10/15(金)21:20
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『「警固の昼さがり」をテーマにした小説を募集します。』

 

46期「破」の師範代を終えたばかりの品川未貴が突然、宣言した。
自身が経営するコーヒーショップ「イエナコーヒー」で開始したプランの第一声である。目標は高く、映画化を目指している

 

 

 

「警固の昼さがり」と聞いて、何を連想されただろうか。

 

まずは「警固」という言葉から説明しよう。
品川が営むコーヒーショップは福岡市中央区警固(ケゴ)という町に所在する。天神から西に1.5キロ。昔ながらの商店街と住宅街が併存するエリアだ。

 

 

福岡城址(地図の左のお城。江戸時代に黒田家が築いた城。)があるエリアには、その昔の平安時代、「鴻臚館(こうろかん)」があった。時の朝廷が海外からの要人をもてなすために設置した施設で、帝国ホテルのアーキタイプだとイメージすると良いだろう。福岡の人々はもてなし上手と言われるが、納得できる。ここは出入国の窓口・税関でもあり、約400年間、国際交流の拠点だったとされている。

 

このエリアに配された国防施設が「警固所」(鴻臚館警固所)。その後の鎌倉時代の元寇に際して設置された軍役「異国警固番役」、室町幕府下の「博多警固番役」が由来の町名だ。

 

ちなみに、菅原道真が太宰府へ向かう途中に通ったと言われる道も付近にある。当時の地図を見ると、現在の警固町は旧海岸線で目前(東側)に海を臨む浜だったようだ。天神界隈は海の中、と言うことになる。警固は、福岡の中でも歴史の古い街なのだ。

 

 

「警固の昼さがり」は、2014 年4月、中野由紀昌(九天玄氣組組長)がイエナコーヒーで開催した「九州参座」(現在のエディットツアーに相当)に端を発する。

 

この九州参座のテーマは「珈琲と編集」。自己紹介から始まるワークのメインイベントが、この日のために品川がブレンドしたコーヒーのネーミング編集だった。ブラジル、タンザニア、グァテマラ産のコーヒー豆をブレンドしたコーヒー。まろやかな飲み口、後味に広がる甘い余韻が特徴である。

 

右にかけられているのは校長直筆の書


12人の参加者による、六つのネーミング案の中から選ばれたのが「警固の昼さがり」。地域に愛されるお店になって欲しい、という品川の思いが根底にあった。

 

フランス映画のタイトルとも見間違える「警固の昼さがり」と名付けられたブレンド・コーヒーはその後イエナコーヒーの店頭で販売される。テレビや雑誌でも紹介され、今ではショップの一番人気商品だ。

 

 

ところで、小説募集のお題として以下の条件が書かれている。

 

 テーマは「警固の昼さがり」
 BGMは「警固の昼さがり」(Music by HaRuRu)
 イエナコーヒーでのシーンを含むオリジナル小説を書いてください。

 

BGM「警固の昼さがり」とは? 
HaRuRuとは誰なのか?

 

 

2020年6月のコロナ禍、最初の緊急事態宣言が解除された直後のことだった。コーヒーショップの常連客でアイリッシュハープのプロ奏者HaRuRu(ハルル)が、いつものようにイエナコーヒーを訪れ、こう言った。

 

「予定されていた今後の演奏会が全てキャンセルになってしまった」
「今だから、YouTubeでの配信ではなく、生の音を聞いて感じてもらいたいのに」


品川はすぐさま「イエナコーヒーを演奏の場にしませんか?いつでも好きな時に演奏して大丈夫です」と提案した。

 

 

アイリッシュハープはアイルランドの国民的楽器で、国章やユーロ・コインの絵柄に使われている。 写真よりも小さい手軽に持ち運べるサイズが主流で、アイルランドのパブには欠かせない。この木製フレームは「本楼」でおなじみのブビンガである。

 


うして誕生したのが新月と満月の夜のハープの演奏会「HaRuRu’s Moon Harp」だ。2020年8月より、15日に一度、定員12名の小さな小さなアイリッシュハープの演奏会が開催されることとなった。

 

「月」に因んだこの演奏会では、映画『ティファニーで朝食を』の挿入歌で有名なあの楽曲”Moon River” が毎回アレンジ違いで欠かさず演奏される。

 

ある日HaRuRuは笑いながら言う「ヘップバーンが、ギターではなくてハープを弾きながら(映画の中で)この曲を歌っていたら、ハープは全世界でもっと身近な楽器になって、ハープ奏者の立場は今とは違っていたでしょうね」と。

 

大雨の日も、台風の日も、雪の日も(新月、満月は何かと事件が多い)演奏会を欠かさず続けた。「コロナ禍の不安で不自由な毎日、新月と満月の自然のサイクルの中で音楽を聴きながら心を落ち着け自分と向き合う時間を作って欲しい。それが演奏者の役目だ」と言う思いを込めて。

 

“旅するハープ奏者”HaRuRu in FUKUOKA

【或る夏の日の演奏旅 ー都会のオアシス『福岡市編』】

 

 

演奏会が1年を迎えようとする頃、HaRuRuが「警固の昼さがり」という名で作曲した楽曲を届けてくれた。

楽曲を受け取った品川は考えた。

 

今こそHaRuRuの切実を引き受けて、イシス編集学校で学んだプランニング編集術を実践するべきだ!

 

「警固の昼さがり」をテーマにした物語を作り、さらにはHaRuRuの演奏をBGMにした映画化を目指そう。

”Breakfast at Tiffany’s”に対抗して”Mid-afternoon in Kego”だ!

 

 

こうしてこの企画が立ち上がったのだ。

 

 

イシス編集学校 応用コース「破」を終えたみなさんなら「警固の昼さがり」をテーマにした物語を書いていただけるだろう。ぜひとも番稽古で手にした方法を使い、社会で挑戦していただきたい。

 

エントリーフォームはこちら

https://forms.gle/WmFk6mC3QvUHXBwH8

 

緊急事態宣言が解除されたからには、まずは福岡市中央区警固へ!

ふふふ。この企画、実は地域おこしも狙っているのです。

 

 

来福の暁には九天玄氣組が、心を込めてお迎えいたします。

 

 


文:品川未貴 
イラスト:品川唯夏(43期「どろんこ天鵞絨教室」突破)

 

イエナコーヒー警固店
福岡市中央区警固2-12-20
電話: 092-982-1007


  • みとま麻里

    編集的先達:藤原定家
    めんたいエディトン、中洲マリリン。二つの福岡ゆかりの教室名。イシスの九州支所・九天玄氣組の突撃女隊長。その陽気さの裏には知と方法と九州への飽くなき探究心をもつ。着付師をしていたという経歴の持ち主。

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