夏の“第3日曜日”は、<多読ジム>を立ち読み・試し読み!

2022/07/03(日)12:00
img POSTedit

 開講から2年を越え、多読ジムが本領発揮しはじめた。
 各スタジオでのブック・コミュニケーションに加え、シーズン10から始まった新企画【共読online◎目次読書】。松岡正剛[イシス編集校長]直伝の「目次読書」に「マーキング読書」も加味した<多読ジム>オリジナルのスペシャル・カリキュラムである。未読の新書を持ち寄って、みなで一斉に目次読書トレーニングする。
 事前の予習は禁止。多読インストラクラーのナビに従い、分刻みで表紙読み→目次読み→キーワードのピックアップ→……と進めていく。キーワードを目印に本全体をスキャン読みしたあとは、グループに分かれて内容をシェアする。
 本を「読む」時間はが45分間、本について「話す」「聞く」が15分間という加速読書だが、場の力で可能になる。
 ワークで実践する目次読書法は、もともと、松岡正剛がスタッフに直に伝授したものである。ルーツは江戸時代に各地の私塾で行われていたさまざまな読書法だ。その一つが「掩巻(えんかん)」で、「書物を少し読み進んだら、そこでいったん本を閉じてその内容を追想し、アタマのなかですぐにトレースしていく」という読み方である。(『多読術』129ページ)
 ただ読むのではない、身体的かつ編集工学的な読書の方法で、スピードと深さで「本の相」がつかめるようになる。つまり読めなかった本が読めるようになる。
 シーズン10では3人の多読インストラクターによって3回実施され、いずれの会も27名から28名の参加があった。

=6月19日の【共読online◎目次読書】で行き交った本=

◆ルーム1
『生き物をめぐる4つの「なぜ」』長谷川眞理子/集英社新書
『客室乗務員の誕生』山口誠/岩波新書
『女と男 なぜわかり合えないのか』橘玲/文藝春秋新書

◆ルーム2
『世界の調律』R.マリー・シェーファー/平凡社ライブラリー
『白川静』松岡正剛/平凡社新書
『LGBTを読みとく―クィア・スタディーズ入門』森山至貴/ちくま新書

◆ルーム3
『映画を早送りで観る人たち』稲田豊史 光文社新書
『ロシア点描』小泉悠/PHP研究所
『脳・心・人工知能』甘利俊一/講談社ブルーバックス

◆ルーム4
『東京は郊外から消えていく!』三浦展/光文社新書
『量子論で宇宙がわかる』マーカス・チャウン/集英社新書
『伝わる文章の書き方教室』飯間浩明/ちくまプリマ―新書

◆ルーム5
『〈弱いロボット〉の思考』岡田美智男/講談社現代新書
『クオリアと人工意識』茂木健一郎/講談社現代新書
『無思想の発見』養老孟司/ちくま新書

◆ルーム6
『ポストモダンの共産主義』スラヴォイ・ジジェク/ちくま新書
『性のタブーのない日本』橋本治/集英社新書
『ゾウの時間 ネズミの時間』本川達雄/中公新書

◆ルーム7
『映画を早送りで観る人たち』 稲田豊史/光文社新書
『プルーストと同性愛の世界』原田武/せりか書房
『「江戸前」の魚はなぜ美味しいのか』藤井克彦/祥伝社新書

◆ルーム8
『脱成長』セルジュ・ラトゥーシュ/文庫クセジュ
『10分で名著』古市憲寿/講談社現代新書
『元・宝塚総支配人が語る「タカラヅカ」の経営戦略』森下信雄/角川oneテーマ21

 1時間でこれだけの本が同時に読まれ、本を媒介にして「しゅはりよし」なインタースコアが起こった。

 参加者からは「数年間にわたって積読していた本が読めた!」「これから物語以外の全読書に目次読書法を導入してみようと思います」という声が届いている。3回連続参加者も少なくない。
 大きな反響を受けて、多読ジムシーズン11の共読onlineは、多読ジム受講者でない方も参加できるオープンな形で実施することになった。
日程は7月17日(日)、8月21日(日)、9月18日(日)、時間はいずれも10:30~11:45。夏の第三日曜日は【共読online◎目次読書】の日!と覚えてほしい。
 3回参加すれば、確実に3冊の未読本が読める。グループワークでは、自分では選ばなかった「未知の本」が耳から読書できる。
 
 本から本へ。目次読書法は、古今東西の本と付き合っていくための基本の方法だ。
 近づきがたい本も、「方法」と「場の力」を借りれば読めるようになる。
 読書が好きな人、読書に悩む人、本を買うのが好きな人、本について話すのが好きな人、本を手に取るすべての人に触れてほしい。

 

info


【多読ジムシーズン11夏・共読online◎目次読書】参加要項

編集術でかわるリーディング&ライティング
『目次読書ワークショップ』
【共読online】(多読ジムseason 11 夏)

■日時:2022年7月17日(日) /8月21日(日)/ 9月18日(日)
    いずれも時間は10:30~11:45
■会場:オンライン(Zoomを利用します)

■参加費:無料
■詳細・お申込み:
https://shop.eel.co.jp/products/list?category_id=41

 

 

 

  • 松井 路代

    編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。

  • 編集かあさんvol.54「おおきなかぶ」の舞台裏

    「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。 […]

  • 【Archive】編集かあさんコレクション「月日星々」2025/4/25更新

    「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る、編集かあさんシリーズ。 庭で、街で、部屋で、本棚の前で、 子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。 2025年4月25日更新 【Arch […]

  • 編集かあさんvol.53 社会の縁側で飛び跳ねる【82感門】DAY2

      「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩み […]

  • 編集かあさんvol.52 喧嘩するならアナキズム【82感門】DAY1

      「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩み […]

  • 【追悼・松岡正剛】「たくさんの生きものと遊んでください。」

    校長に本を贈る   松岡正剛校長に本を贈ったことがある。言い出したのは当時小学校4年生だった長男である。  学校に行けないためにありあまる時間を、遊ぶこと、中でも植物を育てることと、ゲッチョ先生こと盛口満さんの本を読む […]

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025