七夕の伝承は、古来中国に伝わる星の伝説に由来しているが、文字や学芸の向上を願う「乞巧奠」にあやかって、筆の見立ての谷中生姜に、物事を成し遂げる寺島ナス。いずれも東京の伝統野菜だが、「継承」の願いも込めて。

田中優子氏が一番好きな[守]のお題は、037番「イシスな文体練習」だという。ある新聞記事の意味内容を変えずに、5つのモードに書きかえる稽古だ。あたかも着替えるように。
私はこの課題で、常に思うことを再確認しました。「どんな出来事も考えるに値する」ということです。
50[守]の特別講義で田中氏はこう語った。お題として取り組んでみると、普段であれば見出しだけを見て通り過ぎていただろう新聞記事が考える対象となった。記者や登場人物の解釈に疑問を感じ、別の可能性はないかと探りもした。モードを変えるだけで視点が変わり、思考の実践につながることに驚いたという。
037番は、ラストから2番目のお題である。全番回答締め切りまであと3日、50[守]の学衆たちは、記事に登場する商品を知らなかった関西人になったり、宇宙人に対話させたり、4歳のわが子に説明するつもりになったり、シナリオに仕立てたりしながら、文章の着替えに格闘している。藻掻いたからこその視点の変化も生まれている。
・良い未来になってくれ、という気持ちが入りました。
・気がついたら、モードによって、記事の切り取る部分が変わっていました。
・表現が変わると、ポイントにしたい部分が微妙に変わるのも面白かったです。
・モード変更によって、ぽろぽろ零れ落ちてしまうニュアンスなどもあるなと感じました。
・それぞれの文章の「らしさ」を言葉で表現すると、キーワード・ホットワードを組み合わせていろんな文章が出てきたので驚きました。
・モードを変えることで単語や動詞が変わっていくのがおもしろいなと思いました。
・このお題で着替えてみたことで、「たくさんの私」の中の、まだ見ぬひとりに、命を吹き込んだような気がしました。
・型とは、無意識でおこなっていることを意識化して取り出すことで、今まで自分が気がつかなかった見方に気づかせてくれるもの、
今まで自分には難しいと思っていたことにもそれを足掛かりに挑戦できるようになるもの、だとおもいました。
モードを変えるとは誰かのメガネや着物を借りること。他者の注意のカーソルの動きが自分に乗り移ってくること。その結果「考えるに値しない」と思われたことが「値する」ことに変換される(『田中優子の編集宣言』より)。
037番は[守]に続く[破]コースの序章でもある。もっと変わりたい、着替えたいと望むなら、迷わず50[破]に進もう。
◆51[守]申し込み受付中
[守]基本コース(51期)
2023年5月8日~8月20日
https://es.isis.ne.jp/course/syu
◆50[破]申し込み受付中
※2023年2月28日(火)18:00まで、早得!
[破]応用コース(50期)
2023年4月24日~8月13日
https://es.isis.ne.jp/course/ha
石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20周年。発足会を行った秋をめざし、周年事業を進めている。軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠した雑誌の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグループをつ […]
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コメント
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2025-07-07
七夕の伝承は、古来中国に伝わる星の伝説に由来しているが、文字や学芸の向上を願う「乞巧奠」にあやかって、筆の見立ての谷中生姜に、物事を成し遂げる寺島ナス。いずれも東京の伝統野菜だが、「継承」の願いも込めて。
2025-07-03
私の28[花]キャンプは、吉阪隆正の建築思想【不連続統一体】の体験だった。場面ごとに異なる空間が次々と立ち現われてくる。よく分からないままに一周すると、ようやく建物を貫く原理のようなものが見えてくる。この「遅れて」やってくる全体性がたまらなかった。
2025-07-02
連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。