宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。

イシス編集学校は正解を求めない。いくとおりもの問いを立てながら、遊ぶように情報の動向を追いかける。情報の行き来を意識できれば時代の見え方も変わる。いまこそイシスの稽古を体験してほしい。「正解のない時代に効く」と題した[守]エディットツアーはそんな思いで企画された。
8月14日(日)お盆の最中に集まったのは13名。いずれも遊ぶように[守]のお題と交わっていった。
最初のワークは、自分をおかしにたとえる自己紹介、「おかしなわたし」。1分半のシンキングタイムのあと、参加者たちの”お菓子な”自己紹介が始まった。「素朴なするめ」「洋菓子っぽい和菓子」「不揃いなチョコレート」…。自分をおかしに【見立て】ることで、「かめばかむほど味が出るわたし」、「伝統を大事にする挑戦者のわたし」、「しっかり者にみられるけれど実は柔らかいわたし」と、複雑なわたしが一言で表現されていく。Zoom内には、参加者の声とチャットや紙に書かれた文字が行き交った。
続いては、【地と図】のワークだ。ひとつの情報には【地と図】という、2つの側面がある。ある情報について、前提となる「地」を入れ替えると、その捉え方が変わる。「地」を着替えることで、次々とさまざまな「わたし」が「図」として発現した。例えば…
幸せのかたまり
───────
大好物を食べる
亀
───────
本を読む
マルチプレーヤー
───────
料理
もう一人の私
───────
旅行中
例を出しながら「地」と「図」をひも解き、参加者の思考を引き出す阿曽祐子師範。終了後「図と地で情報をみていくことは、人との付き合いを円滑にする、相互理解へ繋がると知り、日々の暮らしで生かしていきたいと思いました」との感想が届いた。
締めは【ルル三条】だ。ものごとは、「ルール(決めごと)・ツール(道具)・ロール(役割)」の「3つのル」が組み合わさったシステムとして捉えられる。3つのルを動かすことで家事も仕事も世界も変えていけるという、基本の編集の型だ。
キャンプを変えるワークでは、3つのルを動かすことで、既存のキャンプとは全く異なる「海の中でやるキャンプ」が誕生。ツールは、酸素ボンベに沈めることができるテント的なもの、シャチやエイ。では、シャチとエイはどんなロールか?食料調達はどうするか? ひとつの「ル」を入れ替えると別の「ル」も連動して変わっていくことに気づいた参加者もいた。水族館でのキャンプもあり得るというアイデアも飛び出した。
苦手な皿洗いをルル三条でラクチンに。イラストを用いて解説するアイドルママこと新井和奈師範
この日体験した【見立て】【地と図】【ルル三条】は、[守]で学ぶ38の型のうちの、ほんの一部だ。秋開講の50[守]では、たくさんのお題と多様な師範と師範代、まだ見ぬ学衆仲間が待っている。
Zoomやパワポの操作を一手に引き受けた森本康裕師範(左)と編集の型と社会のつながりを語った鈴木亮太師範(右)
■[守]基本コース 2022秋講座受付中!
受講期間:2022年10月24日(月)~2023年2月19日(日)
石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
【販売開始】11月2日(日)Qten Genki Book『九』刊行イベント-九州の千夜千冊vol.7-
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20周年。秋をめざして周年事業を進めている。軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠した書籍の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグループをつくる「三十三冊 […]
Qten Genki Book『九』クラファンスタート!-九州の千夜千冊vol.6-
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」20周年記念、松岡正剛の千夜千冊から組み上げた1,000冊のブックナビゲーション「Qten Genki Book『九』」のクラウドファンディングがスタートしました! ●発 […]
クラウドファンディングで出版へのご協力を!-九州の千夜千冊vol.5-
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20周年。発足会を行った秋をめざし、周年事業を進めている。軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠した書籍の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグループをつ […]
方師もBSEもアレゴリアンも。選者の顔ぶれ-九州の千夜千冊vol.4-
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20周年。発足会を行った秋をめざし、周年事業を進めている。軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠した書籍の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグループをつ […]
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20周年。発足会を行った秋をめざし、周年事業を進めている。軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠した書籍の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグループをつ […]
コメント
1~3件/3件
2025-09-18
宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。
2025-09-16
「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。
2025-09-09
空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。