稽古は楽しく、志は大きく-[守]エディットツアー開催レポート

2022/08/26(金)13:33
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 イシス編集学校は正解を求めない。いくとおりもの問いを立てながら、遊ぶように情報の動向を追いかける。情報の行き来を意識できれば時代の見え方も変わる。いまこそイシスの稽古を体験してほしい。「正解のない時代に効く」と題した[守]エディットツアーはそんな思いで企画された。
 8月14日(日)お盆の最中に集まったのは13名。いずれも遊ぶように[守]のお題と交わっていった。


 最初のワークは、自分をおかしにたとえる自己紹介、「おかしなわたし」。1分半のシンキングタイムのあと、参加者たちの”お菓子な”自己紹介が始まった。「素朴なするめ」「洋菓子っぽい和菓子」「不揃いなチョコレート」…。自分をおかしに【見立て】ることで、「かめばかむほど味が出るわたし」、「伝統を大事にする挑戦者のわたし」、「しっかり者にみられるけれど実は柔らかいわたし」と、複雑なわたしが一言で表現されていく。Zoom内には、参加者の声とチャットや紙に書かれた文字が行き交った。

 

  続いては、【地と図】のワークだ。ひとつの情報には【地と図】という、2つの側面がある。ある情報について、前提となる「地」を入れ替えると、その捉え方が変わる。「地」を着替えることで、次々とさまざまな「わたし」が「図」として発現した。例えば…

 

 幸せのかたまり
 ───────
 大好物を食べる

 

   亀
 ───────
  本を読む

 

 マルチプレーヤー
 ───────
   料理

 

 もう一人の私
 ───────
  旅行中

 

例を出しながら「地」と「図」をひも解き、参加者の思考を引き出す阿曽祐子師範。終了後「図と地で情報をみていくことは、人との付き合いを円滑にする、相互理解へ繋がると知り、日々の暮らしで生かしていきたいと思いました」との感想が届いた。

 

 

 締めは【ルル三条】だ。ものごとは、「ルール(決めごと)・ツール(道具)・ロール(役割)」の「3つのル」が組み合わさったシステムとして捉えられる。3つのルを動かすことで家事も仕事も世界も変えていけるという、基本の編集の型だ。
 キャンプを変えるワークでは、3つのルを動かすことで、既存のキャンプとは全く異なる「海の中でやるキャンプ」が誕生。ツールは、酸素ボンベに沈めることができるテント的なもの、シャチやエイ。では、シャチとエイはどんなロールか?食料調達はどうするか? ひとつの「ル」を入れ替えると別の「ル」も連動して変わっていくことに気づいた参加者もいた。水族館でのキャンプもあり得るというアイデアも飛び出した。


苦手な皿洗いをルル三条でラクチンに。イラストを用いて解説するアイドルママこと新井和奈師範


 この日体験した【見立て】【地と図】【ルル三条】は、[守]で学ぶ38の型のうちの、ほんの一部だ。秋開講の50[守]では、たくさんのお題と多様な師範と師範代、まだ見ぬ学衆仲間が待っている。

 

 


Zoomやパワポの操作を一手に引き受けた森本康裕師範(左)と編集の型と社会のつながりを語った鈴木亮太師範(右)

 

 

 

 

 

 

 

 



■[守]基本コース 2022秋講座受付中!

受講期間:2022年10月24日(月)~2023年2月19日(日)

申し込みはこちら

  • 石井梨香

    編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。

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コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。