【冊師が聞く02】読みっぱなしで終らせてくれへん多読ジム(渡會眞澄)

2021/06/22(火)13:00
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多読ジムの名物冊師が”気になる読衆”にずばりインタビューする新企画「冊師が聞く」。

まつみち冊師に続く第二回のインタビュアーは渡會眞澄冊師(スタジオゆいゆい)。今季Season06ものこり1週間を切りました。「三冊筋プレス」に取り組む、読衆たちのナマの声をお届けする。多読ジムとはどんな講座なのか?

 

◆植村真也さん(スタジオ凹凸)◆
 京都府京都市出身・在住。身長186cmの44歳。右投げ右打ち。学生時代は野球史の研究に取り組み、油断すると野球本ばかり読んでしまうというほどの野球フリーク。現在は精神障害者就労支援施設で事務仕事を担当。多読ジムにはseason 01 冬から参加。

離を退院後いくつかの道があるなかで、多読ジムを選ばれたのはどうしてですか。
わたらい冊師
わたらい冊師

植村さん
植村さん
師範代をやるのもええなあと思っていたのですが、退院後、なにかもうワンステップ欲しかった。そんなとき京都の福田容子さん(多読師範)から「多読ジムっていう講座が始まるんやけど、どう?」と声をかけていただいて。

本は好きやったけど読み方って意識したことがなかったですし、新しい講座への興味もあって申し込みました。


なるほど、読書も方法が大事ですものね。season 01からずっと続けていらしゃいますが、その原動力は何でしょう。
わたらい冊師
わたらい冊師

植村さん
植村さん
本との付き合い方が変わっていくのを実感すればするほど、まだまだ読相術をわかってへんことに気づかされ、より一層、自分と本の新たな関係を見いだし深めていきたくなります。

カワルとワカル、ワカルとカワルの積み重ねが力となっているようですね。付き合い方はどんなふうに変わりましたか。
わたらい冊師
わたらい冊師

植村さん
植村さん
たとえば本へのマーキングですが、season 01ではシャーペンで弱々しい線を引いていたんですよ。消して取り返しのつくツールのほうがええなあと。それが今や、ボールペンを使って迷いなくいろいろ書き込んでいます。

マーキング読書もすっかりお手のものですね。本との関係そのものにも変化はありましたか。
わたらい冊師
わたらい冊師

植村さん
植村さん
多読ジムをやる前は、最初から最後まで同じ熱量で、一字一句ぜんぶ読まなあかんと思い込んでいましたが、そうやなくて、本にも山あり谷ありだから、読み方や向きあい方も変えてええんやろうなと思えるようになりました。
本は仰ぎみるものではなく、もっと身近な存在のようにも感じています。

 

千夜千冊エディション『本から本へ』

多読ジムで出会った本のうち、とりわけ印象深い1冊で、
ひとつの文章から世界が広がっていくのを感じたと言う。
読書し続ける者が立ち返るべき場所でもある。

読書への思い込みから自由になれて、よかったです。読者はわがままでいいんですよね。
わたらい冊師
わたらい冊師

植村さん
植村さん
読んで理解できへんでも、あまりがっかりしなくなりました。時間をやりくりできず読めへんときは凹みますが、そんなときは本に触って自分を落ち着かせています。

理解できないのも読書のうちですものね。スタジオという場でのトレーニングはいかがですか。
わたらい冊師
わたらい冊師

植村さん
植村さん
冊師や師範、冊匠や月匠、代将や林頭など、いろんなロールの人が読衆として一緒にトレーニングしているのは、おもしろいですね。
今季は吉村林頭と同じスタジオです。ブッククエストでは同じ本(『山の音』川端康成)を選んだのですが、引用したキーセンテンスはまったく違うものばかり。1冊で2冊読んだ気分になりました。ほんまにありがたい体験です。

ロールに関わらず、だれもが読衆というのは編集学校のなかでも希有な場かもしれませんね。しかも、共読の醍醐味まで味わえる。
そんな植村さんにとって、多読ジムの魅力とは?
わたらい冊師
わたらい冊師

植村さん
植村さん
本を読むという行為の可能性を広げてくれる、しかもマーキングの方法ひとつとってもわかるように、トレーニングは自己編集のチャンスにもなります。
ほんまにぼく、油断すると野球の本ばかり読んでしまうので、知らない本と出会えるのもうれしいです。
もうひとつ、読みっぱなしで終らせてくれへん(笑) 書くこととリンクしているのは、大変だけどとても鍛えられますね。

読書の可能性を広げ自己編集へと向かう。読相術を極めんとする植村さんならではの言葉をありがとうございました。
この先も、読みっぱなしで終らせてくれへん多読ジムを共にたのしんでまいりましょう。
わたらい冊師
わたらい冊師



植村さんの三冊筋プレスバーベル本
左 :『わけいっても、わけいっても、インド』蔵前仁一/旅行人
右後:『深い河』遠藤周作/講談社文庫
右前:『ガンディーの経済学』アジット・K・ダースグプダ/作品社

Info


◉多読ジム season07・夏◉ 締切間近!!

 

∈START

 2021年7月12日(月)

 

∈MENU

 <1>ブッククエスト(BQ):ノンフィクションの名著

 <2>エディション読み   :『文明の奥と底』

 <3>三冊筋プレス     :笑う3冊

 

∈URL

 https://es.isis.ne.jp/gym

 

 

  • 渡會眞澄

    編集的先達:松本健一。ロックとライブを愛し、バイクに跨ったノマディストが行き着いた沖縄。そこからギターを三線に持ち替え、カーネギーで演奏するほどの稽古三昧の日々。知と方法を携え、国の行く末を憂う熱き師範。番匠、連雀もつとめた。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。