【冊師が聞く06】本から未知なる自分を借りてくる(景山卓也)

2021/06/30(水)08:45
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多読ジムの名物冊師が”気になる読衆”にずばりインタビューする新企画「冊師が聞く」。

第5回のインタビュアーは景山卓也冊師(スタジオ凹凸)。そろそろ次シーズンの多読ジムSeason07の申し込みも締切間近。「マジか!?」と思ったそこのあなたはご一読を。多読ジムとはどんな講座なのか?

 

◆阿部幸織さん(スタジオ凹凸)◆
46[守]スターシード教室師範代。仕事は労働組合。好きなテレビ番組はタモリ倶楽部。そして双子でもある。多読ジムにはシーズン06春より参加。
 
阿部さん、これまで多読ジムのお題をほぼ回答し続けていますね!
多読ジムを受講しようと思ったきっかけを教えてください。
景山冊師
景山冊師


阿部さん
阿部さん
編集学校の守・破・花のコースを経て師範代を経験するなかで、自分の知識の不足を感じていました。気になる本を次々と購入して積読の山を増やし、それを眺めては「本を読む時間が足りない」と呟いていました。でも不足していたのは、時間ではなく本を読む力だったのです。そんな気持ちを編集学校の先達に吐露したところ、多読ジムを進めてくれました。いまこそ読筋を鍛えたいと思い、受講を決めました。


つい時間を言い訳にしてしまうのはわたくしの悪い癖でもあります。
トレーニングをしているおもな時間帯や場所を教えてください。
景山冊師
景山冊師
 
阿部さん
阿部さん
平日は、昼間に職場の読書スペースで行いますがあまり大胆にはできません。会社を退社した後19時から21時頃まではコワーキングスペースでも読書をします。さらに帰宅後、食事と入浴をして24時から就寝する25時までにも少し本を開きます。
休日は、洗濯を済ませて11時から13時頃までは自宅近くの喫茶店で。夜は食事をし入浴後に23時から就寝する24時までにといった具合です。
自宅では机、食卓、ドレッサー、台所などあちこちで読書をしています。


読書をするコワーキングスペース。
 
一週間、一日の中の時間や場所をフル活用して読書をしているのですね。
多読ジムのトレーニングによって、これまでの読書にどのような変化がありましたでしょうか。
景山冊師
景山冊師
 
阿部さん
阿部さん
まず「この本難しそう!」と怯むことが少なくなりました。今までなら読めない理由として「分厚い」「未知の分野」と決めつけていましたが、出会ってみたい、知り合ってみたいと思うようになりました。これは大きな変化です。
さらに目次読書をすると、本と自分のアイダに繋がりができるので、そのあとの足取りが軽く楽しくなるのです。相手のモードや特徴を掴んでから臨む、これは本に対する礼儀作法ですね。
 
『多読術』には「読書は分からないから読む」とあります。それを実感されたようですね。
未受講の方に向けて「ここがオススメ多読ジム!」を教えてください。
景山冊師
景山冊師


阿部さん
阿部さん
目次読書法、セイゴオ・マーキング、マーキング読書法など、たくさんの方法を得られることももちろんですが、同じ本を同じ手順で読んだとしても、一人ひとり何をどう読んだかが違う、それを改めて実感しています。人によって読みが違っていいのだと。むしろそれが読書の豊かさでもあります。
お題に取り組むなかで、自分でも驚くほどに「ワタシの読み」が浮かび上がってきます。いまの自分が世界をどう見ているのか、読書を通じてクリアになる。見せつけられる。そのオモシロさを感じています。


自宅の本棚。エディションがズラリと並ぶ。千夜千冊などで取り上げられた本も。
 
共読」は多読ジムの旗印です。読書に正解はなく多様な読みがあるのですよね。
では最後に<三冊筋プレス>にかける意気込みをどうぞっ。
景山冊師
景山冊師
 
阿部さん
阿部さん
準備連想運動から始まった<三冊筋プレス>。まさしく読筋を鍛えるトレーニングです(ブルっ(武者震い))。与えられたテーマは「旅」。私は具体的などこかではなく意識の旅をすることにしてみました。次なるターゲットを見いだす旅になるのでは、という景山冊師の鋭いおコトバを受け、今の私と次のターゲットとなる目標を浮かび上がらせるべく、読筋を鍛えたいと思っています。
 
本の力を借りて未知なる自分に出会ってまいりましょう!
阿部さん、ありがとうございました。
景山冊師
景山冊師


<三冊筋プレス>で選書したバーベル本。左から、
『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』森達也/ちくま文庫
『気流の鳴る音 交響するコミューン』真木悠介/筑摩書房
『倍音 音・ことば・身体の文化誌』中村明一/春秋社春秋社
本の右側に映るのは、細野晴臣さんのラジオでその音色を聴き一目ぼれならぬ一音ぼれしたウィンドチャイム・サウンドロール。
 
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Info
◉多読ジム season 07・夏◉ 締切間近!!
∈START
 2021年7月12日(月)
∈MENU
 <1>ブッククエスト(BQ):ノンフィクションの名著
 <2>エディション読み   :『文明の奥と底』
 <3>三冊筋プレス     :笑う3冊
∈URL
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  • 景山卓也

    編集的先達:佐藤雅彦。中高はサッカー、大学でアニメ三昧、家庭では毎日子どもとEテレ。ハマると想像ジャケットを翻し、実直にとことん。師範代を経験後に2度目の離にリトライ、そして子ども編集学校に多読冊師と今は編集中毒。

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025