多読ジム 茶々々な夏の振り返り

2020/10/15(木)10:56
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 編集かあさんのもうひとつの顔が多読ジムの冊師である。担当するのは「スタジオ茶々々」。シーズン03≪夏≫は、輪読座や感門之盟と重なったこともあり、とりわけ熱かった。
 多読ジムでは、ブックツリーをつくる「ブッククエスト」→千夜千冊エディションを共読する「エディション読み」→三冊で知文する「三冊筋プレス」という3ステップで、「読んで」「書く」読書筋肉を鍛える。
 野田秀樹を編集的先達とする読衆・山田寛さんは、ペースを落とさないトレーニングでスタジオにリズムを刻み続けた。さらに、なんと、全てのお題を終えた後「エディション読み」お題を、課題本を変えてもう一周したのである。
 一冊目は『本から本へ』。二冊目は『理科の教室』。2周目については、閉講数日前に2-02番から2-06番までを一気にポストするという一気呵成ぶり。山田さんらしいコクだけではなくキレも加わった回答に、エディションの中で『理科の教室』が一番好きな冊師はPCの前で思わずガッツポーズした。

 エディション読み最後のトレーニングは各章にリード文をつけるというお題である。山田さん作の、モードで伝えるエディットなリード文をお目にかけたい。

『理科の教室』
□第一章 科学のおじさん

 偏愛する変態こそ
 天体や物体に万歳して
 先端から全体へと
 歓待してくれる。

□第二章 鉱物から植物へ

 じつとする
 鉱物植物化石コケ
 耳をすませば
 地球レコード

□第三章 虫の惑星・ゾウの耳

 見なよ、
 間借り身分の分際で
 我が物顔の人間てのは
 こんなに多様に囲まれて
 すましてひとりで
 つんけんしてらあ。

□第四章 背に腹はかえられるか

 理科とは、思い出すこと。
 実験とは、確め合うこと。
 カラダは庭。
 ココロは鏡。
 ワタシは翅。
 セカイは脅威。
 ううん。
 セカイは驚異。


 そうそう、理科だって【想起】であって【照合】なのだ。共読することで何度もめくっているはずの『理科の教室』の新たな相が見えてくる。一人では多重多層な読みはなかなか起こせない。

 山田さんをはじめとする11人の読衆が集ったスタジオ茶々々の本棚からは、多くの未知なる本にであうことができた。特に言語哲学エッセイ『エコラリアス 言語の忘却について』(ダニエル・ヘラー=ローゼン 著、関口涼子 訳)、91年生まれの著者による現代アメリカ小説『フライデー・ブラック』(ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー著、押野素子 訳)は、すぐに買って読んだ。
 三冊筋プレスのテーマが「幼な心」であったことも、『ピーター・パンとウェンディ』(J.M. バリー著、石井桃子 訳)や『オズの魔法使い』(ライマン・フランク・ボーム著)、『秘密の花園』(フランシス・ホジソン・バーネット著)等を読み直すまたとない読機となった。
 1日90分の読書をというのが松岡正剛校長の多読術の基本である。冊師を務めるたびに、どんどん本が増えていく。

「きっと、ものを書くということに、どこか犯罪に似たところがあるからにちがいない」(江藤淳『犬と私』)
 
 山田さんが振り返りで触れていた一節。冊師と読衆が、仕事も家事も子育てもそっちのけの共読・共犯関係になり、後ろめたさを感じるほど読書できるのが多読ジムである。
 10月12日、シーズン04≪秋≫がはじまった。本まみれの日々、再び。いざ。


  • 松井 路代

    編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。

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