名作の物語には、サプライズがつきものである。
第79回感門之盟「イシス題バシティ」の二日目も佳境にさしかかろうという夕暮れ時、“あの人”にサプライズが起きた。
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感門二日前のリハーサル。
「当日は、赤い口紅で決めてね」ーー松岡校長から直々に「お題」が届く。
「赤のリップありますか?」翌日、資生堂の化粧品コーナーに足を運んだ。
「どんな服がいいかしら?」装い編集の名手、佐々木千佳にすかさずメールを入れた。
青のトップに黒のボトムも考えたけれど、最終的にリップに合わせたマゼンタのワンピースに決めた。
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感門当日。卒門式での役割を終え、あとは松岡校長による「校長校話」を残すのみ。ISISバーカウンター前の椅子に腰掛け、ようやく緊張がほぐれてきたその時。
「この方を壇上にお呼びしましょう」
突然、声がかかる。呼ばれるがままに壇上へ上がると、司会の美濃越香織花伝師範が、大きな花束を抱えて待ち構えていた。
「[守]学匠を10期つとめてくださりありがとうございます!」
“あの人”こと、鈴木康代は、感門を寿ぐ[守]学匠から、寿がれる主役へロールチェンジした。
鳴り止まぬ拍手の中、突然のサプライズに思わず両手を口で覆う鈴木康代[守]学匠
伝習座でも感門之盟でも、康代学匠が登場するとその場が一気に明るくなるーー「人や場を生き生きさせる」編集を、存在そのもので体現してきた康代学匠も、今回ばかりは思わず涙、また涙。
冨澤陽一郎道匠が病に倒れられて以来、康代学匠は学匠代を経て、40[守]から今まで10期もの間、学衆にとっての原点である[守]を支えつづけてきた。
メッセージを求められた康代学匠は、「校長がどのようなおもいを込めて編集学校やお題をつくってきたのかを、もう一度読み解きたい。そのおもいで40期から学匠をつとめてまいりました。何より、学林局のみなさん、番匠、師範、師範代、そして学衆のみなさんが、毎期その場にいあわせてくださいました。だからこそ、私はこの今この場に立たせていただいています」と、花束を胸に心境を言葉にした。
「あと10期、よろしく頼むよ」ーー松岡校長から、すかさず次の「お題」が届く。
お互いに礼をする松岡校長(左)と康代学匠(右)
「学匠はですね、教室をもたないために、誰も止まらずにみんなが過ぎ去っていくんです」(康代)
「孤独だよね」(松岡)
「はい。私でもちょっぴり孤独になるんですよ」(康代)
思わずこぼれた学匠のつぶやきに、会場は笑いに包まれる。突然のサプライズの場であっても、人や場を生き生きさせる“康代節”は健在だった。
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サプライズで幕を閉じた10期のフィナーレは、「あと10期」というお題からはじまる、新たな物語のプロローグとなった。
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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