【参丞EEL便#026】「ほんのれん」がつくる組織内外の資本とは

2022/11/02(水)17:32
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「潜在能力(ケイパビリティ)」という概念を打ちだした経済学者のアマルティア・センや、『孤独なボウリング』で米国コミュニティの特質と変遷を論じたロバート・パットナム、社会学と経営戦略論をつなげるロナルド・バートに「ソーシャル・キャピタル」という見方がある。

彼らの研究によると、AとBという(それぞれの閉じた)ネットワークの間には「ストラクチュラル・ホール」が出現するという。それはネットワーク間に生じる「構造的な隙間」で、それがAとBだけでなく、C、D、Eと多くがつながって高密度になりストラクチャル・ホールのような隙間がなくなると、情報交換に機能不全がおきてしまう。

経営戦略においては、重層的なネットワークが高密度に形成されているが、組織間や部門間には隙間や境界があり、その境界を超えたり、未知の会社や業界と人と関わったりして、ネットワークのハブをつなぐ「越境者」が、新たなストラクチャル・ホールを見つけたり生み出したりして、イノベーションの契機をつくっていくと考えられる。

このストラクチュラル・ホールを起点にした活動によるつながりは、仕事上だけのつながりではなく、最初から「共感」の連鎖をつくっていく可能性が高いという。それが組織の内外をまたいだ社会関係リソースとしてのソーシャル・キャピタルをつくる。越境者は関係や情報を編集する編集者にもなる。これは社会資本というより、社会関係資本と訳したい。

前回のEEL便では、新本棚サービスの「ほんのれん」が、新たな「オフィス空間」に登場する実験をご紹介した。
この「ほんのれん」という装置は、ワーカーが越境をおこすためのオフィスやフロアや部門の「境界」にこそ、設置されると良いかもしれない。そこでは、毎月届く問いと本によって触発された一人ひとりの見方が交わされ、共感の連鎖がおこることで、組織の新たな関係資本や越境者(編集者)の創出を目指すことを提案することになる。
どんな問いと本が触発させるのかは、ただいま編集中です。

 

[編工研界隈の動向を届ける橋本参丞のEEL便]

//つづく//

 

  • 橋本英人

    函館の漁師の子どもとは思えない甘いマスクの持ち主。師範代時代の教室名「天然ドリーム」は橋本のタフな天然さとチャーミングな鈍感力を象徴している。編集工学研究所主任研究員。イシス編集学校参丞。

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