スニーカーならエアマックス。NBAはエアジョーダン。ダイノジはエアギター。そしてイシスにはエアサックスと呼ばれる男がいる。
感門之盟で音楽を学ぶ卒門学衆としてフィーチャーされたものの、サックスの演奏が未熟だったため、校長から吹かないで持ってるだけにしてとディレクションされたことから、「エアサックス」の愛称がついた。49[破]学衆・ヤマネコでいく教室、加藤陽康。これは3度目の正直ならぬ3度目の突破にかける若者の4ヶ月に渡る編集稽古のドキュメントである。
振り仰げば赤い月。振り返れば赤い奴。
エントリーまで5日。皆既月食の夜に現れたエアサックス加藤は追い込まれていた。「まだ文章には書けていなくて、すみません。章ごとにフラジャイルってこういうもんだっていうのはまとめてみたんですけど、それしかできてないです」。オネスティー上杉と編集天狗が、加藤のPCを覗き込んでみると、アウトライナーで章立てされて、そこに長々と文章が書き込まれている。アウトライナーの良さは活かされておらず、ただ要約しただけの文章がだらだらと続いている。
言い訳はいい。フラジャイルの腑分けは、グループ分けはどうなった。初稿を出すという締め切り、約束はどうなった。天狗の顔はさらに紅潮した。いますぐラベリング・トラベリングしなさい。制限時間は20分。終わるまで絶対に帰さない。
「できました」。できるじゃないか!追い込まれればできるのだ。加藤は3つにフラジャイルを分けていた。じゃあ、次はそれを文章にしてみなさい。「できました」。加藤はフラジャイルのプロトタイプ的な説明を書き連ねていた。ダメ、やり直し。それぞれのフラジャイルにステレオタイプをつけなさい。例示を3つずつ出しなさい。「できました」。よし、つぎはまたそれを文章にしなさい。「書きました」。
鬼の形相で背後から迫る天狗におびえる加藤を見かねて、オネスティーがまず私が読んでみますねと声をかけた。「うん、これまでのエントリーできなかった加藤くんの文章とは全然違うことが取り出せていると思うし、加藤くんのフラジャイルの見方もすごく変わったと感じられたんじゃないかなと思うんですね」。お抱え役上杉の丁寧なあたたかい言葉に加藤の顔もほころんだ。
「でも、このあとどう書けばいいのかわからないです」。どこまでも手のかかるエアサックスなのだ。守の型を使い尽くすべし。BPTを君は忘れたのか。ベース・プロフィール・ターゲット。2回も突破できず、エントリーもできず、独りよがりなフラジャイルに酔っていた君がベースだ。今回あらためて『フラジャイル』を読み込んでみて、どう変わったのかがターゲット。そして、ターゲットに向かうプロフィールは『フラジャイル』の中にあるでしょうが。ここからあとは師範代と教室の仲間と頑張りなさい。
ラベリング・トラベリング、略図的原型、BPT。エアサックス加藤がすっかり忘却している守の型は、編集天狗からあらためて手渡された。ここからは天狗とオネスティーはいない。でも加藤はひとりではない。安田晶子師範代やヤマネコでいく教室の学衆がいる。エアサックス加藤は、初めてのエントリーの栄冠を勝ち取ることができるのか。それともまたもや現実逃避を重ね、天狗の鉄槌を受けることになるのか。次回のドキュメントに乞うご期待である。
【エアサックス加藤の三度目の突破】バックナンバー
■【エアサックス加藤の三度目の突破04】守の型を使い尽くすべし(本記事)
■【エアサックス加藤の三度目の突破03】心がわりの相手は君に決めた!
■【エアサックス加藤の三度目の突破02】インタビューは天狗さまに
■【エアサックス加藤の三度目の突破01】編集天狗と突破を誓う!
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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