巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。
スニーカーならエアマックス。NBAはエアジョーダン。ダイノジはエアギター。そしてイシスにはエアサックスと呼ばれる男がいる。
感門之盟で音楽を学ぶ卒門学衆としてフィーチャーされたものの、サックスの演奏が未熟だったため、校長から吹かないで持ってるだけにしてとディレクションされたことから、「エアサックス」の愛称がついた。49[破]学衆・ヤマネコでいく教室、加藤陽康。これは3度目の正直ならぬ3度目の突破にかける若者の4ヶ月に渡る編集稽古のドキュメントである。
エアサックス加藤、三席。
初めてのエントリーは、アリストテレス賞三席に終わった。未エントリーを続けた加藤にとっては大きな成果である。「師範の最後の指摘はその通りだと思います」。加藤も納得の講評が竹川智子師範から届いた。
『フラジャイル』をしっかり読んで、丸ごと飲み込み、向かい合っていることが伝わってくる創文です。世界が始まった時から生じている全ての情報を対象として多様な面を見せてくれているフラジャイル。多様性が伝わるように様々な例示を展開しているこの本のエッセンスを伝えるべく、要約に努めてくれました。その過程で感じ取った「ひきこまれ」という言葉でフラジャイルを再定義しようとしています。その挑戦はあっぱれですが、引き込まれるのはフラジャイルだからなのか本書で使われている松岡正剛の創文方法によってなのかが整理しきれていないようです。最後、唐突に引用した“弱さ”を“近さ”に変えるとの関係と共に整理し直せば、より味わい深い創文になったでしょう。(講評=師範:竹川智子)
三席入選だったのは提出者が少なかったのかなと思いました、とは謙虚になった加藤の弁。しかし、編集天狗はもちろん結果には満足していない。物語AT賞では大賞をとる! ドイツとスペインに勝ったサッカー日本代表のように、学林局に見放されたエアサックス加藤がアップセットを起こす!と意気込んでいる。
その前にクロニクル編集術である。
稽古は順調にできている? 加藤「進めているというだけかもしれないです」。でもそれで十分じゃない。加藤「そうですね。そういう意味では変わってきているかもしれないです」。
クロニクル本として選んだ『杉浦康平のデザイン』(平凡社新書)の読み込みを誇らしげにエアサックス加藤は見せた。『多読術』や松岡校長の映像の見よう見まねだというマーキングもなかなか堂に入っている。加藤はマーキングが楽しくなってきたという。本の文章は類似でつながっていることに気づきました、それを意味の括りの連続として、他のことでもできないかと思っています、と加藤。稽古も徐々に波に乗ってきたようだ。
しかし、天狗は慢心や妥協を許さない。クロニクル編集術においても「壊す・肖る・創る」のプロセスを徹底するべし。自分史、課題本のクロニクルの歴像の抽出、3つに仮グルーピング、グルーピングしたものには安易なタイトルをつけずに何かに肖る、最後は見出しをブラッシュアップする。クロニクルでの徹底した鍛錬が、明日のエアサックスをつくるのだ。波乗り状態の加藤とはいえ、稽古の締め切りには遅れている。教室の先頭集団に追いつくのだ加藤! 天狗と加藤、2人の目はすでに遠い編集道を見ている。
【エアサックス加藤の三度目の突破】バックナンバー
■【エアサックス加藤の三度目の突破07】波乗りエアサックスの慢心を諫める
■【エアサックス加藤の三度目の突破06】たくさんの天狗とたくさんのわたし
■【エアサックス加藤の三度目の突破05】歴史的快挙そして新たなる野望(本記事)
■【エアサックス加藤の三度目の突破04】守の型を使い尽くすべし
■【エアサックス加藤の三度目の突破03】心がわりの相手は君に決めた!
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
鈴木健×田中優子緊急対談「不確かな時代の方法としての政治~PLURALITYと相互編集~」
鈴木健×田中優子緊急対談「不確かな時代の方法としての政治~PLURALITYと相互編集~」がYouTubeイシスチャンネルで公開されました。 田中優子学長が以前より熱望していた鈴木健さん(東京大学特任研究員 […]
編集部が選ぶ2025年10月に公開した注目のイチオシ記事6選
公開されるエディスト記事は、毎月30本以上!エディスト編集部メンバー&ゲスト選者たちが厳選した、注目の”推しキジ” をお届けしています。 2025年10月といえば、日本人のノーベル賞受賞にわき、女性首相がは […]
【12/23火】編集×音楽×食を満喫! エディットツアー・クリスマス特別編、今年も開催!
〈編集〉とは、雑誌編集や動画編集などの特定の分野に限られた行為ではありません。私たちは普段の生活の中でもたくさんの〈編集〉を行っていることをご存知ですか? 仕事のために身支度をしたり、通勤の移動中に音楽を聴 […]
イシス編集学校で予定されている毎月の活動をご案内する短信「イシスDO-SAY(ドウ-セイ)」。 今年最後の1カ月となりました。寒さが増す中ですが、イシス編集学校の12月は多彩なプログラムで熱気を帯びています […]
ISIS co-mission対談|啄木の「相互編集」する人生 こまつ座代表井上麻矢×イシス編集学校学長田中優子
こまつ座の舞台「泣き虫なまいき石川啄木」を巡る、ISIS co-missionの井上麻矢(こまつ座代表 )と田中優子(イシス編集学校学長 )による特別対談がイシスチャンネルで公開されました。 今の時代の […]
コメント
1~3件/3件
2025-12-16
巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。
2025-12-10
マンガにおける短詩系文学といえば四コママンガということになるだろう。四コママンガに革命をもたらした最重要人物の一人である相原コージは、そのものズバリ『漫歌』をものした。
2025-12-09
地底国冒険譚の主人公を演じ切った幼虫と灼熱の夏空に飛び立った成虫、その両方の面影を宿すアブラゼミの空蝉。精巧なエンプティボックスに見入っていたら、前脚にテングダニの仲間が付着しているのに気づきました。