【エアサックス加藤の三度目の突破09】ダース・カトウの再生はなったのか?

2023/01/20(金)08:00
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スニーカーならエアマックス。NBAはエアジョーダン。ダイノジはエアギター。そしてイシスにはエアサックスと呼ばれる男がいる。

感門之盟で音楽を学ぶ卒門学衆としてフィーチャーされたものの、サックスの演奏が未熟だったため、校長から吹かないで持ってるだけにしてとディレクションされたことから、「エアサックス」の愛称がついた。49[破]学衆・ヤマネコでいく教室、加藤陽康。これは3度目の正直ならぬ3度目の突破にかける若者の4ヶ月に渡る編集稽古のドキュメントである。


 

 彼には教えられない。この子は忍耐が全くない。
 ダークサイドは全てを曇らせてしまう。未来が見えなくなるんじゃ。

 

 年末年始、エアサックス加藤は暗黒面に落ちていた。親子応援団からも励まされたにも関わらず、彼は一切の稽古を行っていなかった。クロニクル編集術は途中放棄。物語編集術は翻案対象の映画を『スター・ウォーズ エピソード4』に決めただけで、何も進めていなかったのである。

 編集天狗と約束をしていた1月10日の前日、エアサックス加藤はいつもの開き直った態度でメールを送りつけてきた。

 

 編集についても音楽についてもそうですが、数寄に向かったはずが折り合いが想像以上に悪い場合、自分は膨大な余白期間をつくる傾向にあるようです。それは宇宙船に例えればある惑星に突入したものの環境に適応しかねて再度飛び立ち、惑星の周回軌道に乗るような。
膨大な余白というのは、稽古を進められるように仮説を立てた末に書道を始めるような本末転倒的長大さのことです。つまり稽古の進捗を告白すると、何の回答も出来ていません。

 

 かくして10日16:30、加藤は豪徳寺に現れた。来るなり直立不動で、天狗とオネスティーに深々とお辞儀をする。「申し訳ありません」。編集天狗は、言い訳を聞かなかった。ただ、加藤が選んだスター・ウォーズの伝説のジェダイ、ヨーダの言葉を引いて手渡した。「ヨーダは諦めの早いルークに、なぜフォースの力を信じないのじゃと言って嘆いた。エアサックス加藤! 君にはこの言葉を贈ろう。『なぜ、コースの力を信じないのじゃ!』。ごたくはいい。回答をしろ!稽古すりゃいいんだよ。今日はやるまで帰るな」。

 エアサックス加藤は、24時というタイムリミットを示され、そこまでストップウォッチを持って監禁監視されての編集稽古に臨んだ。やるか、さもなければやらないかなのだ。何が必要かはすでにエアサックス加藤自身が分かっているはずだった。

 

 「できたのか」「できました」「じゃあ次30分でやって」「できたのか」「すみません。あと15分です」「できたのか」「はい、あと5分です」。24時のタイムリミット。エアサックス加藤は物語編集術のお題を3つ回答した。さて、エアサックス加藤はAT賞にエントリーできたのか?

 

 やり遂げた感を出している加藤に天狗は、絶対にエントリーだけはするのだと厳命し、予祝の言葉を与えた。
  May the Course be with you コースと共にあらんことを。

 

 

・・・・・5days after. エアサックス加藤、エントリー。コースが一人の落ちこぼれエディストに微笑んだ。

 


【エアサックス加藤の三度目の突破】バックナンバー

■【エアサックス加藤の三度目の突破09】ダース・カトウの再生はなったのか?

■【エアサックス加藤の三度目の突破08】嗚呼!エアサックス母子応援団

■【エアサックス加藤の三度目の突破07】波乗りエアサックスの慢心を諫める

■【エアサックス加藤の三度目の突破06】たくさんの天狗とたくさんのわたし

■【エアサックス加藤の三度目の突破05】歴史的快挙そして新たなる野望(本記事)

■【エアサックス加藤の三度目の突破04】守の型を使い尽くすべし

■【エアサックス加藤の三度目の突破03】心がわりの相手は君に決めた!

■【エアサックス加藤の三度目の突破02】インタビューは天狗さまに

【エアサックス加藤の三度目の突破01】編集天狗と突破を誓う!

  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。