中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。
本楼に到着するとThe Whoが大音量で流れていた。薄暗い本の楼閣には見慣れた顔ぶれが、見慣れぬ装いで、彼方に睨みを効かせている。強烈なフラッシュとシャッター音。その気にさせたのはYohjiかSeigowか、4人の表情は既に出来上がっていた。
編集的不良少年少女たちの悪だくみのようなフォト・セッション。撮影は川本聖哉、ディレクション松岡正剛、キャスティング太田香保、モデル吉村堅樹、金宗代、衣笠純子、桂大介、ミキサー寺平賢司、エディスト上杉公志、カメラ林朝恵。皐月のある夜の話。

セイゴオちゃんねるで近日公開予定の新プロジェクト「冊影帖」のために山本耀司さんのFRAGILEジャケットを撮影するプロカメラマン川本聖哉さん。赤い本楼にジャケットが微かに揺れる。見ているこちらの気持ちも次第に揺らいでいく。

「遊ぶなら老荘俳諧。迷ったときの禅とバロック」
14[離]退院式では司会の大役を務めた右筆 桂大介のしなやかな背中。編集学校でいちばんファッションを遊んでいるのは間違いなくこの人。


「寄せるならリベラルアーツ。攻めるならパンクか数理哲学」
遊刊エディスト副編集長 金宗代。すらりとした肢体で華麗に踊る。昨日もまるでそうしていたかのように自在にYohjiと戯れる。

「こわれもの FRAGILE」
金髪に銀色のハイヒールのコンビネーションは学林局の”ずんこ”こと衣笠純子。
松岡「どうしてほしい?」
衣笠「好きにしてほしい」
挑発されたのは我々か彼女か。

「喧嘩するならアナキズム。守るだけなら墨子とプラトン」
泣く子も黙る遊刊エディスト編集長 吉村堅樹。異様な迫力を醸し出す。「喧嘩するならアナキズム」を地でいく男。

セットチェンジの合間の休憩。「これは藤本晴美さんにもらったんです」黒い肺のTシャツ。松岡校長の代わりに胸の猫が紫煙を燻らせている。

階段をスタジオにして撮影は続行。「金ちゃん、真ん中に来て手を繋いでみて」誰も思いもしない発想が松岡校長の口から飛び出る。

『フラジャイル』(筑摩書房)を片手にいくつものポージングを生み出していく衣笠。一瞬で空間を我がものにしていく。

交差する二人の視線でどんな言葉が交わされていたのか。それは誰も知らない。
松岡校長もついにFRAGILEジャケット&パンツを装い登場。右胸には「こわれもの」左膝には「取扱注意」があしらわれている。
仕掛けたのはYohjiかSeigowか。本楼にラディカル・ウィルが発現したある皐月の夜の話である。
◆川本聖哉さんによる撮影写真はこちらでぜひご覧ください。
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後藤由加里
編集的先達:石内都
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!
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コメント
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2025-10-29
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