37[花]ガイダンス 却来のループで師範代に「成っていく」

2022/05/07(土)17:06
img JUSTedit

5月7日、37[花]の「ガイダンス」が開催された。オンライン画面を通じて30名の入伝生と18名の指導陣が一堂に会した。
ここでは学衆から入伝生へ着替えカマエとハコビを持ち換えていくためのヒントがたった二時間に凝縮されて手渡される。花伝所では教室から道場へ、学衆から入伝生へと舞台やロール名が変わる。しかし「自身が変わらないと何も変わらない」と田中晶子所長はぴしりと最初のカマエを示した。

 続いて花目付の深谷もと佳は自身のアトリエからエンゼルスのユニフォーム姿で登場。7週間の演習における「型」との向きあい方を「守破離」と川上不白の言葉と共に入伝生へ手渡す。

 

守破離と式目(5M)を重ねて語る、深谷花目付。

 

■直線ではない、直接ではない

 

錬成師範の平野しのぶが世阿弥の『却来華』を紐解きながらフィードバックループの手ほどきをする。師範代としての成長と深化を、異なる次元ともとの次元との往き却りを繰り返す却来の「らせん構造」に重ねてみせた。それに続く吉井優子花伝師範は『芸と道』を引用しながら「花伝式目を丸のみしろ」「代になりきれ」と静かに言い切る。「師範代という方法」は誰かの「代」になりつつ、いつの間にか「成っている」もの。なんとも禅問答のような「師範代という方法」に新たなQを抱えた者も多いだろう。

 

■仮説的に何度も動かす

 

実践的な指南演習である錬成の解説をする内海太陽錬成師範は手書きの図解で「仮説的なターゲット」を強調する。固定化されたヴィジョンに向かうなとくぎを刺した。また村井宏志錬成師範も指南の過程に用いる「問感応答返」の五文字を手に、リバースエンジニアリング(RE)を「何度も行き来させる」必要があるのだと重ねた。仮説を動かせ、何度も行き来せよ、と「却来」を思わせる言葉が繰り返される。

 

 

左から平野師範、吉井師範、内海師範、村井師範、武田師範 入伝生をレクチャーで導く。

 

■すでに「成っていく」にさしかかっている

 

入伝生たちにとってはガイダンスが互いの初顔合わせの場だ。しかし実は入伝生たちはガイダンス前からすでに活発な交わし合いを続けている。プレワークだ。そんなリバースエンジニアリングあふれるプレワークを紐解いたのは[守]学衆からの同期という堀田幸義、佐藤健太郎の両錬成師範。対話を重ねてコップを言い換え続ける入伝生たちが、すでに師範代に「成っていく」過程の入口に立っていることをインタースコアたっぷりに見せる。外部からの触発だけでなく、自らが持っている想像力を解き放つことこそが「解発」だというのは武田英裕錬成師範。自身がビジネスの中で見つけたというアナロジーコレクションは圧巻だ。

 

堀田師範(左)、佐藤師範(右)Zoomの向こうの入伝生と対話する。

 

ガイダンスの最後に林朝恵花目付はレクチャーをこう締めくくった。
「負を抱えているのは当たり前。自信がないと言わなくていい。場を信じて欲しい。簡単に道を外れないで欲しい。道は続いていくのです」

一週間後は入伝式。直後から道場演習がスタートする。そこで30人の入伝生たちはこれからの七週間で数えきれない却来を繰り返すのだろう。編集の道はまだ始まったばかりだ。

 

文 神尾美由紀(錬成師範)
アイキャッチデザイン・写真 阿久津健(錬成師範)

  • イシス編集学校 [花伝]チーム

    編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。

  • 発掘!「空梅雨」――当期師範の過去記事レビュー#03

    イシス編集学校の目利きである当期の師範が、テーマに即した必読記事を発掘&レビューし、みなさんにお届けする過去記事レビュー。3回目のテーマは、世間を賑わす「空梅雨」。空梅雨をどう読み替えたのか。ここからどんな連想を広げた […]

  • 松岡校長と探究するコップの乗り換え 43[花]

    マッチが一瞬で電車になる。これは、子供が幼い頃のわが家(筆者)の「引越し」での一場面だ。大人がうっかり落としたマッチが床に散らばった途端、あっという間に鉄道の世界へいってしまった。多くの子供たちは、「見立て」の名人。それ […]

  • 43[花]特別講義からの描出。他者と場がエディティング・モデルを揺さぶる

    今まで誰も聴いたことがない、斬新な講義が行われた。  43花入伝式で行われた、穂積晴明方源による特別講義「イメージと編集工学」は、デザインを入り口に編集工学を語るという方法はもちろん、具体例で掴み、縦横無尽に展開し、編 […]

  • 43[花]描かれた道場五箇条、宵越しの波紋をよぶ

    (やばい)と変な汗をかいたに違いない、くれない道場の発表者N.K。最前列の席から、zoomから、見守ることしかできない道場生は自分事のように緊張した。5月10日に行われた、イシス編集学校・43期花伝所の入伝式「物学条々 […]

  • 発掘!「アフォーダンス」――当期師範の過去記事レビュー#02

    2019年夏に誕生したwebメディア[遊刊エディスト]の記事は、すでに3800本を超えました。新しいニュースが連打される反面、過去の良記事が埋もれてしまっています。そこでイシス編集学校の目利きである当期講座の師範が、テ […]

コメント

1~3件/3件

若林牧子

2025-07-02

 連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。