【77感門】校長第一声は「ヒゲだけかよ」

2021/09/04(土)14:17
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 5月に肺がんの手術をし、自宅にも本楼にも酸素ボンベ。そしてこれが、イシス全体に顔を見せる初めての機会である。松岡校長は、第77回感門之盟で何を口にするのか。誰もがその言葉を待った。
 さすが校長は期待を違えない。これが第一声だ。

 

「ヒゲだけかよ」

 

 司会の嶋本昌子さんが「校長のヒゲのファンなんです」と語ったことへのツッコミだった。
 編集は機を逃さない。このひと言で場には動きが生まれ、司会にドライブがかかった。

 グレーのスーツ姿で登壇した校長が、テーマ「DANZEN」を引き取って真っ先に口にしたのは、「ダンテン」だった。破断点、遮断点、切断点、中断点、区切点、休止点、横断点の「断点」だ。
「私たちは断点をたくさん持っています」
「例えば」と校長はパラリンピックを例に挙げる。障害はいわば断点だ。だが障害度にあわせて細かくルル三条を編集することで、そこにはイキイキとした場が出現する。
「断点は、私たちの学習、知識、表現力にもあります」
 断点は言い換えれば、分節点だ。フラジャイルや不足、編集の機と言い換えることもできるだろう。
 だがこれらの「断点」は、摩滅しているか、目に見えなくなっている。捨てられたり、忘れられたりしているものもある。
 ではどうするか。
「潜んでいる断点を掘り返して繋げていかなければいけない」
 守の38のお題は、校長らが練り上げた「断点」だ。この断点をめぐり、「ワカル」「カワル」――問感応答返を繰り返す。これがイシスの稽古だ。


「自らダンゼンを導き出してください」

 

 それぞれのダンゼンを極める2日間――第77回感門之盟が始まった。

  • 角山祥道

    編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama

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コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。