発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

「このエディションフェアがすごい!」の第三弾は都内有数の本の冊数と売り場面積を誇る、ジュンク堂書店池袋本店。フェア期間は6月1日(火)から6月30日(水)まで、水無月のあいだ中ずっとです。水無月やあしたゆふべに棚替へて。
ジュンク堂書店池袋本店は、今回の棚づくりエディターの一人であり、この連載のトップバッターをつとめた多読ジムの多読師範・米川青馬さんがご贔屓にしている本屋さんでもあります(さすがにかつて松岡正剛の「司書」をつとめたこともある”本豪”だけあって、米川さんは一回の買い物で必ず1万円以上の本を購入するそうです)。
3階エスカレーター付近のフェアコーナー。いつもはグリーンがトレードカラーの米川さんですが、この日はブルーが勝負服。エディストで「シバセン(芝居と読書と千の夜)」絶賛連載中。
今回の棚づくりエディターは、松岡事務所の寺平賢司さん筆頭に、多読ジムの冊匠・大音美弥子さん、米川青馬さん、林頭・吉村堅樹、代将・金宗代の編集学校メンバー4名。加えて、「千夜千冊エディション」の担当編集者の廣瀬暁春さん(KADOKAWA)が最後まで全力でサポートしてくれました。
制限時間は21時から22時半までの1時間半。4階の人文コーナーは寺平・廣瀬ペア、3階エスカレーター付近のフェアコーナーの一棚は大音・米川ペア、同じく3階文庫・新書コーナーは吉村・金ペアというふうに、一つの棚につき、それぞれメンバー2人が担当するというチーム編成で臨み、担当コーナーが終わり次第、のこる1階の新刊・話題書コーナーへと駆けつけ、退出時間が迫る中で全員で一挙に仕上げました。
上:1階の新刊・話題書コーナー
左:3階エスカレーター付近のフェアコーナー 右:文庫・新書コーナー
4階人文コーナー
そう、何を隠そうここジュンク堂書店池袋店の「このエディションフェアがすごい!」は「3フロア4棚にまたがって展開」しているということです。これほどに縦横無方に棚展開されるのはかなり異例のこと。ぜひフェア期間中に訪ねて、1階から4階までブックトラベルしてください。
けれども実は「すごい!」はそれだけではありません。棚づくりエディターだけが知っている、小さな「すごい!」がいくつも隠れています。そのすべてを紹介することできませんが、今回はこの記事の筆者である金が担当した3階文庫・新書コーナーのミニ「すごい!」を少しだけご案内します。「すごい!」というより、棚を面白がるためのポイントです。
エディションは例えば『芸と道』と『面影日本』と『ことば漬』、『大アジア』と『文明の奥と底』、『理科の教室』と『情報生命』など分類して配置している。
まず、先ほどもご案内したとおり、この棚は吉村・金ペアが担当しました。奇しくもエディスト編集長と副編集長がペアを組むハコビとなりました。われわれエディストチームが最初に考えたのは、「松岡正剛パネル」をどうするかということでした。写真で見ると、「エディション20冊のパネル」とくっついていますが、この二つのパネルは本来は別々のものでした。
(1)その別々のものをあえてくっつけて大きく見せることで目立たせよう。
(2)さらに、各エディションをグルーピングしよう。
(3)それから、真ん中の棚板を一つ外してイシス編集学校のフライヤーを大きく見せよう。
この三位一体の方針を立てたことで、二人は棚にエディストのソウルが宿った気がしました。向かうべきディレクションが定まりました。勢いがついて、棚づくりはぐんぐんスピードが上げていきます。ときどき二人は「何かが足りない」と棚に近づいたり、離れたり、行ったり来たり。そのうち二人はその「不足」の正体を「手書きのポップ」と「新書・文庫以外の本」だと確信し、ついにフィニッシュの道へとにいたります。
吉村編集長の手書きポップ。「こんな下手な字でいいのかな」と呟くと、すかさず金が「味があっていいですよ」「色使いがいいですね。これは申込増えちゃうな」と持ち前のそっけない返事で応じる。
これを「すごい!」なんていうと自画自賛と怒られてしまいそうですが、棚づくりはまさにエキサイティングなエディティング。そんなエディションフェアと、「このエディションがすごい!」の連載は今後もどんどかどんどか続いていきます。
こんなふうに棚づくりの編集と方法の妙にも着目ながら、引き続き、どうぞお楽しみください。では、バトンタッチです。
1階の話題書コーナーの棚横の壁スペースにポスターを貼る吉村編集長。書店員さんから「壁の白い部分には貼らないでください」と言われ、棚のキワに慎重に貼り付ける。背中のバックパックにブラブラぶらさがっているお守りの数は5つ。ご利益(りやく)への多分な執念をうかがわせる。
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金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
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2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。