宮谷一彦といえば、超絶技巧の旗手として名を馳せた人だが、物語作家としては今ひとつ見くびられていたのではないか。
『とうきょう屠民エレジー』は、都会の片隅でひっそり生きている中年の悲哀を描き切り、とにかくシブイ。劇画の一つの到達点と言えるだろう。一読をおススメしたい(…ところだが、入手困難なのがちょっと残念)。

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編集ウメ子vol.3 ゴロあわせの記憶術
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早押しクイズです。
平安京遷都は何年?
はいっ!
なくよウグイス平安京、794年!
おぉ~~大正解です。
おっと、名乗りそびれました、
イシス編集学校師範の梅澤奈央(通称ウメ子)です。
学生時代、ゴロ合わせって
お世話になりましたよね。
いま流行りの「鎌倉殿」も、
「いい国つくろう鎌倉幕府♪」と
すぐにゴロが思い浮かぶでしょう。
じゃあ、聞いてみましょう。
室町幕府滅亡は何年?
奈良の大仏が建ったのは?
日清戦争は?日露戦争は?
……こう聞かれると、
パッと答えられませんよね。
でも不思議じゃありませんか?
鎌倉幕府も室町幕府も
おなじく中学時代に覚えたのに、
室町幕府のほうはすっかり
忘れてしまう。
なぜなんでしょう。
ここには、
人間の記憶と再生に関わる
大きな謎が隠れています。
◆ ◆ ◆
じつは「ゴロ」というのは、
かつて「語路」と綴りました。
つまり、
言葉に道筋をつけるのが
「ゴロあわせ」。
たとえば五七五にするとか、
リズムを付けることも
広義のゴロあわせと
言えるでしょう。
ほら、
「墾田永年私財法」って
なんだか知らないけど
覚えてません?これって、
「コンデンエーネン・シザイホー」
という七五調だから
記憶に残るわけです。
ほかにもほら、
「三井住友ビザカード」とか
「千と千尋の神隠し」だって、
「セブンイレブン、いい気分」も、
そういえば、
「飛んで火に入る夏の虫」も、
米津玄師の《Famingo》も
《津軽海峡・冬景色》も
よくみてみれば七五調でできています。
そして冒頭の
「鳴くよウグイス平安京」も
七五調だからなんとなく
心地がいいんですよね。
794年とか
1192年(いまは違うようですが)
など、無味乾燥な数字であっても、
リズムや意味を追加することで
何十年も記憶に残る言葉へと
作り変えることができるんです。
◆ ◆ ◆
人間が何かを思い出すとき、
つまり記憶を再生するときは、
なんらかの「インデックス」が必要です。
「平安京」とか「鎌倉幕府」とか。
でも、そのような
インデックスだけがあっても
中身もくっついてこなければ意味がない。
本棚から本を出すとき
本の表紙だけがベロンと
出てきても意味ないですもんね。
インデックスと
中身にあたる部分を
やわらかいゴム紐で結ぶのが、
今日お伝えした「ゴロ」だったわけでした。
みなさんもぜひ、なにか
覚える必要があることがあったら
「言葉の道」を作るのを
意識してみましょう。
また、プレゼンをするときや、
スピーチをするときなど、
なんらかの
「記憶に残りやすい言葉」を使うと、
グッと印象に残りやすくなります。
こちらもおすすめです。
◆ ◆ ◆
イシス編集学校は、
私たちが脳みそで行っている
「情報編集」を学んでいきます。
ということは、
記憶と再生にまつわる謎にも迫れるし、
もしかして記憶力もよくなるのかも?
そんなイシスの編集稽古が気になる方は
いつでも無料の「編集力チェック」で。
https://es.isis.ne.jp/web_taiken/entry1.html
ではまた~
イシス編集学校 師範 梅澤奈央
◆本日の参考書籍
『ちょっと本気な 千夜千冊虎の巻』松岡正剛、求龍堂
『日本文化の核心』松岡正剛、講談社現代新書
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梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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2025-09-09
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