「文明の発生は、キリスト教的・一元的ではなく、多元的な相互編集によって起こったのではないか」。
2020年12月27日の輪読座「白川静を読む」第三輪は、バジラ高橋の「見方の問いなおし」から始まった。前回の時間軸で組み立てた図像から一転し、地図を多用した空間軸の図像を用いつつ、黄河文明の形成と「興」の発生を講義した。
黄河・遼河・長江文明の発生においては、羌(キョウ)族・濊貊(ワイハク)族・苗(ミャオ)族という、言語族も異なる民族の分布に注目する。すでに長江中流では世界初の水田耕作が始まり、裴李崗文化では亀卜やピクトグラムが既に発生していた。
紀元前3500年ごろには柳田國男も『海上の道』で言及する「子安貝」の流通ネットワークが発生する。ネットワークができれば価値の統一がおこり、産物が商品化される。そうしてネットワークの拠点が生まれ「都市」が誕生した。バジラはこうした流通の網の目を辿りつつ「文化は想像以上に混ざっており、むしろ混じり合った場所でこそ文化は発展するのでは」と見る。これも一つの見方の問いなおしだろう。
そうして都市ネットワークの一つから帝を戴く士族社会制の「殷」が発生し、甲骨文字が作られ、続いて身分制・封建制の「周」へと続いていた。そのプロセスで音楽によって天下を教化する「礼楽」が登場し、周代の商容がこれを整えた。人間が自然現象との調和を図る礼楽は、殷時代の神による神裁政治から周時代に人間による政治へ移行するための編集行為であった。
孔子は礼楽の構成要素の一つである詩編を編纂し『詩経』を著したとされる。「これまで『詩経』は儒教における五経の一つとして位置づけられることが多いが、周の民族学的解釈として、儒教にとどまらない世界像が入っているのではないか」というのがバジラの見立てだ。
第三輪の締め括りに『詩の発想と表現』を輪読する。『詩経』の六義の一つでありながら、その本質がなお明らかにされていない「興」を中心に、白川の見方の問いなおしに迫った。
年内の本楼イベントはこれが最後。来年1月31日の第四輪では「国家神話と宇宙神話」と題し、周建国神話や楚辞天文篇の宇宙生成神話の輪読を予定している。
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
37[花]入伝式 松岡校長メッセージ 「稽古」によって混迷する現代の再編集を
現代は“乱世”である 刻一刻と状況が変化するロシアのウクライナ侵攻。北京オリンピックを終えた中国では上海のロックダウンをはじめ、習近平による締めつけが強まり、フィリピンでは残忍で権威主義的な統治をしたマルコ […]
なぜ戦争は止められないのだろうか。毎日のように報道されるロシアによるウクライナ侵攻のニュースに胸を痛めない日はない。破壊と悲劇ばかりを生み出すこの戦争はなぜ起こるのか。20世紀は「戦争の世紀」と呼ばれたが、2022年の現 […]
【速報】4/24〜輪読座「湯川秀樹を読む」情報公開&申込受付中!
物理学者でノーベル賞の受賞者。京都市名誉市民で、全ての核兵器と戦争の廃絶を訴える「パグウォッシュ会議」の第1回からの参加者。『目に見えないもの』など物理思想に関する書籍を多数執筆。その人こそ「湯川秀樹」であり、今春の輪 […]
田中優子さんの語る『情歴』の3つの読み【ISIS FESTA SP速報】
2022年4月10日、ISIS FESTAスペシャルシリーズ「『情歴21』を読む」が開催され、リアル・オンライン含め70名を超える参加者が集まった。第3弾となる今回は江戸文化研究家の田中優子さんをゲストに迎え、江戸時代以 […]
師範代はたくさんの属性を公私混同すべし【49[守]伝習座開催中】
春のイシスは着替えの季節である。3月21日の感門之盟からわずか10日のうちにすっかりロールチェンジをはたす。学衆から師範代へ、師範代から師範へ。師範から再び師範代へ。10年ぶりに師範の袖を通す者もいる。 こ […]