編集かあさんvol.11 エディット・ツアー

2020/08/23(日)08:22
img NESTedit

「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。



 夏休みが始まって10日あまり。「暑いー」と床でごろごろしながら、兄のハンディ扇風機を勝手に借りて使っていた7歳の長女が、むくっと起き上がって話し始めた。
 
 「あのね、うちわっていうのは、『扇風機に負けるもの』だと思う」。

 これは! 7月28日に参加したイシス祭オンラインエディットツアー@大阪の残響だ。山根尚子ナビが出したお題の一つが、うちわを手に「これはなんでしょう」と問いかけるものだった。
 長女は即座に「うちわ!」と答えたあと、他の部屋に走っていって、家にあるうちわをパソコンの前まで持ってきた。パタパタあおぎながら、幼稚園のキャンプで白いうちわを絵具で染めたことなどを思い出して、「雨の時に工作して遊ぶもの」と、一緒に答えたのである。山根ナビにしっかり届き、「うちわはキャンバスにもなるということですね」というコメントが返ってきた。編集かあさんは、「京都のお店に舞妓さんのうちわが飾られている」と答えた。
 他の参加者からは、行政の案内チラシがわり、キャンプで火を起こす時に使うなど、いろいろな答えが飛び出した。長女はうなづきながら聞いていた。よくわからないときはどういうことなのと尋ねてきた。

 オンラインエディットツアー、本音では大人だけでゆったり参加したい気持ちもあったけど、パソコンの前でワイワイやっている雰囲気に子どもが惹きつけられないわけがない。サブの梅澤奈央ナビが「こんばんはー! 前髪かわいいね!」とウェルカムモード全開でもてなしてくれてほっとする。他の家の子も画面に写りにやってきた。
 本業がヨガ講師である山根ナビが画面から消えてポーズをとり始めた時は、本気でぎょっとして「なにしてんの?」とまずは素でつっこんでいた。いろいろな回答を聞いているうちに、だんだん見立て力が動き出した。エアコンの無い部屋で汗だくになりながら、長女も夜9時半のエンディングまで一緒に遊んだのだった。

 うちわの見方が2時間で変わる。他のもの――たとえば扇風機の見方も同時に変わる。情報どうしに対角線を引く方法が自然に動くようになる。その変化は一過性じゃないというのを目の当たりにした。

 今年は、短いけど宿題のない夏休みだからこそ、「型」がすっと体に入り込んだというのもあるかもしれない。大人も子どもも、ちょっと「夏休み」にして、日本列島津々浦々エディットツアー@オンラインに出かけよう。

 

下敷き、厚紙、保冷剤、水、かき氷。「うちわに似たもの」を集めようというお題への「回答」で集まったモノ。このあとも、スクレイパー、段ボール箱のふたなど、次々見つかっている。



○○リンク

 【イシス祭@大阪】天神祭にツッコミを学べ

 【ISIS FESTA エディットツアー 一覧】

 

○○お知らせ

 

ISIS FESTA [EX広島&奈良](親子向け)「おやこ五感ワーク」
/ナビ浦澤美穂、松井路代
日時:9月3日(木)10:30 – 11:30(開場10:20)

「編集かあさんの方法」をテーマにしたオンラインエディットツアー。親子で編集ワークしながら、遊びにひそむ「型」の見つけ方のコツをつかみます。大人のみの参加も歓迎です。

お申し込みはこちら


  • 松井 路代

    編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。

  • 編集かあさんvol.54「おおきなかぶ」の舞台裏

    「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。 […]

  • 【Archive】編集かあさんコレクション「月日星々」2025/4/25更新

    「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る、編集かあさんシリーズ。 庭で、街で、部屋で、本棚の前で、 子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。 2025年4月25日更新 【Arch […]

  • 編集かあさんvol.53 社会の縁側で飛び跳ねる【82感門】DAY2

      「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩み […]

  • 編集かあさんvol.52 喧嘩するならアナキズム【82感門】DAY1

      「子どもにこそ編集を!」 イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。 子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩み […]

  • 【追悼・松岡正剛】「たくさんの生きものと遊んでください。」

    校長に本を贈る   松岡正剛校長に本を贈ったことがある。言い出したのは当時小学校4年生だった長男である。  学校に行けないためにありあまる時間を、遊ぶこと、中でも植物を育てることと、ゲッチョ先生こと盛口満さんの本を読む […]

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。