師範代は回答がお好き――回答があれば似顔絵も描ける

2021/12/23(木)09:10
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「らしさ」は守の主題だけに、本気でむつかしい。かつて伯楽と呼ばれた師範は語った。
この「らしさ」に真っ向勝負を挑んだのは、48[守]平時有事教室師範代、石黒好美である。
ターゲットは12月12日の汁講。開講してから3週間で交わしたテキストだけを手がかりに、学衆の似顔絵を描くというのだ。
汁講当日は参加者にカメラオフでZoomに入るというルールを課した。似顔絵をお披露目したのちにカメラオン。画面上で「ほんと」と「つもり」が並ぶ演出も万全だ。

「Tさんは、ちゃんとした高田純次だと思うんですよね~」との前振りで似顔絵を投影する石黒。現れたTさんはこの通り。

 

この日に似顔絵を用意した理由を石黒は語る。「『コンテンツの秘密』という本に、アニメのキャラクターは、人間のアタマの中にいる人や動物を模倣していると書かれていました。だったら顔を見なくても似顔絵は描けるはずだと試してみたんです。カブキのお題で稽古した“らしさ(略図的原型)”は、物事の本質に一気に到達する力を持っています」。似顔絵は本質に到達できたのか。汁講で発せられた学衆の言葉と並べてみよう。

 

石黒「Aさんの回答はキラキラしている」
Aさん「日々のお題をみて、調べることが当たり前になった。何かが起こった時に流さないようになってきた」

石黒「毎日お仕事頑張っている男子」
Mさん「週末まとめての回答になりがちだけど、毎日続ける方法を見つけたい」

石黒「Nさんは絶対クールビューティー」
Nさん「夜型なので、寝る前にお題を見て、朝から考え、翌日の夜には回答を返せます」

 

石黒「自信あったんだけど、似てない?おかしいなぁ」
Yさん「創造的な人は意味の遠いものを組み合わせるのが得意なんです」

 

石黒「師範代以上に教室を見てくれています」
Sさん「師範代が常に動いていて、具体的な糸口をすぐにもらえ、稽古のペースが保ててます」


参加者からは「ホントにキラキラだ!」「メガネはないけど感じ出てる」「内面はこうかも」などの声が挙がった。
速修コースは用法3に入った。「不足もきっちり伝える師範代になる」と宣言した石黒の指南と「らしさ」の力を目撃した学衆の回答がアナロジカルウェイで響きあう。


【追記】
イシス編集学校経験者なら、この似顔絵で石黒の画力を実感できるはず。

  • 石井梨香

    編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025