P1グランプリ イルマニアのキセキ②【77感門】

2021/09/22(水)08:22
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◆77回感門之盟の「P1グランプリ」。本選に出場するためには、予選を勝ち抜かなければならない。ジャイアン対角線教室は、プランをブラッシュアップするため、オンラインと勧学会をフル活用し、対話による相互編集を加速させていった。P1グランプリ優勝を飾ったイルマニアのキセキをレポートする第2回目。

 

■ハイパーを「対話」で生み出す

 

 遊刊エディストの紹介記事の〆切りは8月21日。P1グランプリの告知があったのが同月9日。相互編集と考えると、時間はない。ジャイアン対角線教室では、すぐに突破を祝う汁講も兼ねた、ZOOM作戦会議を決行することにした。

 

▲ジャイアン対角線教室のZOOM作戦会議(兼汁講)の模様。これまた楽しい時間であった。


 川上鼓太郎さんの「東京イルマニア博物館」が代表プランに決まったものの、受け手を唸らせる何かが必要だった。イルマニアの大きな特徴は「埼玉県入間市」という具体的な地名を出し、かつ「東京に近いけれど何もない」ということを逆手にとったことだった。入間市に点在する入間市ならではの「場所」を繋ぐようにモノリスが配置され、来場者は市内のモノリスを歩いて探す。モノリスのQRコードを読みとると、ARを用いたゲームができる、というプランだ。

 ポイントは、「なぜ入間市なのか」ということだった。「東京に近いけれど何もない」地方都市は、他にもある。入間ならではの特性を打ち出さなければならない。師範代は勧学会に問いをぶつけた。

 

 問・なぜ入間市なのか。

 

 となれば、まずはコンパイルだ。
 師範代は、それぞれの視点から入間市を掴み直すことを要請しつつ、学衆が持っていないであろう辞書からの情報を勧学会に放った。『日本歴史地名大系』で歴史と地理をフォローし、『日本国語大辞典』で、【入間(にゅうかん)】や【入間詞・入間言葉(いるまことば)】など、ケバケバした言葉を抜き出した。
 中でも「入間詞」は反対言葉のことだが、室町時代は広く知られていたらしい。これを用いて作られた狂言が『入間川』だった。

 

【入間川(狂言)】(ジャパンナレッジ「新版 能・狂言事典」)

永らく在京の大名は太郎冠者を伴い本国へ帰ることになる。途中、富士山を眺め、やがて埼玉の入間川に行きあたる。入間在の何某が深いと止めるのもきかず川に入った大名は深みにはまる。「入間の逆ことば」という意味が逆になる方言だと思ったからで、怒った大名は成敗すると言う。何某は成敗するとはしないことだと、入間ことばを使うので、急に楽しくなった大名は太刀など持ち物をいろいろ与える。しかし最後に惜しくなり、入間ことばを利用してうまく取り返してしまう。

 

 それぞれのコンパイルを持ち寄って、8月14日夜、ZOOM作戦会議(兼第2回汁講)が開かれた。「多忙で参加が難しい」と言っていた由水充さんを含め、参加者は川上鼓太郎さん、石川英昭さん、倉内祐子さん、三浦克枝さんの突破者5人。のちにこの5人は「イルマニアレンジャー」を自称することになる。

 

▲多忙の由水充さんも作戦会議に駆けつけ、プランに深みを付与した。本番で掛けた眼鏡はお手製。キャラ変のアイデアも自身だ。

 

 作戦会議では、丁々発止のやりとりが繰り広げられた。
「入間市は狭山市と合併したがっていたそうです。名前も『狭山市でいいです』とへりくだっていたが、袖にされた。このあたり、入間っぽいですよね」(倉内さん)
「入間市は池袋から40分弱でアクセスすることができるのに、有名テーマパークがなにひとつない」(川上さん)
「子どもと一緒に訪れたい場所にしたい」(三浦さん)
「ゲームをクリアした感覚を取り入れては?」(石川さん)
「狂言『入間川』の反対言葉もあることですし、『なにもない』を強調できるのでは?」(由水さん)
 結果、ないものフィルターも活用した「東京イルマニア博物館」の細部が煮詰められた。

 

・モノリスは人が近づくと実体化し、QRコードを読みとると、ARオブジェがスマホ画面に浮かぶ(仮想と現実のインタースコア)。
・ARオブジェを展示するだけでなく、ゲーム(お題)によって消す(訪れるたびに、消す条件が変わる)。
・オブジェを消すと、モノリスが透明になり、景観の邪魔にならない(参考例は渋谷の「透明トイレ」)。
・モノリスから浮かぶのは「東京の待ち合わせスポット」。入間っぽくなくて東京っぽいもの。待ち合わせスポットは今や、トマソン的無用の長物で、かつ東京の「記憶」を有している(場所の記憶)。
・専用アプリ(兼入場券)をダウンロードしている人なら、この「消す」ミッションに挑んでいる様子を眺めたり、参加することができる(90年代のアーケードゲームの熱気そのまま)

 

 茶畑に浮かぶ渋谷モヤイ像も、この作戦会議で固まったアイデアだった。
 師範代にとって何より嬉しかったのは、相互編集が目に見えて深まったことだ。交わし合いが新たな創発を生み、プランが粒立っていく。この「時間」を共有できただけでも、P1グランプリは価値あるものとなった。(つづく/全3回)

 

アイキャッチイラスト(川上鼓太郎・作)は、入間の「ジョンソンタウン」に浮かぶオブジ「浅草浅草雷門ちょうちん」。

 

◆前回の記事 こちら

 

▲本楼で巨大モヤイを製作する北原ひでお師範。師範のサポートは心強かった。(撮影/植田フサ子)


  • 角山祥道(ジャイアン)

    編集的先達:黒岩涙香。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り続け、感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系にする異端児。

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