エノキの葉をこしゃこしゃかじって育つふやふやの水まんじゅう。
見つけたとたんにぴきぴき胸がいたみ、さわってみるとぎゅらぎゅら時空がゆらぎ、持ち帰って育ててみたら、あとの人生がぐるりごろりうごめき始める。

テキスト重視のイシス編集学校にさざ波を立てる企画が立ち上がった。九州支所・九天玄氣組(以下、九天)のアワード企画第ニ弾「Q・TENフォトコンテスト」だ。フォトコンテストと言っても撮影技術を競うことが目的ではない。お題をフィルターとして、写真で九州らしさを表現する大いなる編集稽古である。
第1回めのお題は、A部門:1157夜『九州水軍国家の興亡』とB部門:「フラジャイル×九州」の二題。17名から31の作品が寄せられた。
ここでは組員の投票と特別審査員(今回は九天玄氣組組長)と棋譜陣によって選好された受賞作を紹介する。観光写真では見られない、九州の面影とトポスを堪能あれ。
◆組員賞:A部門 (アイキャッチ画像)
『久多島:東シナ海を跋扈した海賊のメルクマール』小川景一(鹿児島)
鹿児島県日置市、東シナ海に面した吹上浜の沖合に浮かぶ久多島神社の御神体。海賊が目印にした島にドローンが飛ぶ。構図と色彩、対比とコントラストで観る者の心を大きく動かした。得票多数の一因は九天組員の海賊数寄か。
◆組員賞:B部門
『招く神が依り代』佐土原太志(宮崎)
霧島山の噴火を鎮めようとつくられるようになった「田の神さぁ」。祈りに応じて、いつしか米粒のような白い苔がしゃもじに降りたのか。名も無き神と人の感応に、依代の本質を見る。
◆中野由紀昌賞:A部門
『金甲見守る水の郷』政近玲子(東京)
九天加入からひと月も経たぬうちに水郷柳川「御花」を訪れて切り撮った一枚。16年前の九天玄氣組発足式の翌日、組長中野の目に入ってきた光景と寸分たがわずだったという奇跡。
◆棗絽賞:A部門
『その島々を飛び越して来い!』吉田麻子(熊本)
天草・倉岳から臨む八代海。美しいけれど時間も天気も曖昧な景色に外からの視点を持ち込み、「飛び越して来い!」と告げることで、肥後の見え方を変えた。
◆桃翰賞:A部門
『舜天海』宮坂千穂(東京)
お気に入りの地図と帯と本。部屋にいながらにして、東シナ海を呼び込んだ。これはごっこ遊び? 遊ぶとなったらとことんやるのが宮坂流。ひいては九天らしさ。
※舜天海とは 九天玄氣組内の遊読冒険的プロジェクト。朱舜水という儒学者を追うことで、日本の南北朝、江戸時代の初期から幕末、明治維新から大戦へと歴史の串刺しを体感し続けている。
受賞作に共通するのは、タイトルやコメントの編集にひと工夫があったこと。全員が[守]卒門者である九天玄氣組ならではである。「フラジャイル」の被写体に、山、海など大きなものが選ばれているのも意外な特徴であった。
なによりも、写真と撮影者の説明に投票者のコメントが重なることで、九州や九天が立体的に見えてきたことが収穫だった。
「Q・TENフォトコンテスト」は今後も続く。棋譜陣は、九州と九天の「らしさ」を引き出す相互編集を目論んでいる。
受賞者には賞品として、棋譜陣セレクトギフト「幸味餞(こうみせん)」が贈られた。エンボス加工が美しいカードと熨斗は九天のスーパーハンド内倉須磨子作。中身は九天組員の手によるお茶(白谷清茶堂)とコーヒー(イエナコーヒー)。
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石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
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コメント
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2025-08-19
エノキの葉をこしゃこしゃかじって育つふやふやの水まんじゅう。
見つけたとたんにぴきぴき胸がいたみ、さわってみるとぎゅらぎゅら時空がゆらぎ、持ち帰って育ててみたら、あとの人生がぐるりごろりうごめき始める。
2025-08-16
飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。
2025-08-14
戦争を語るのはたしかにムズイ。LEGEND50の作家では、水木しげる、松本零士、かわぐちかいじ、安彦良和などが戦争をガッツリ語った作品を描いていた。
しかしマンガならではのやり方で、意外な角度から戦争を語った作品がある。
いしいひさいち『鏡の国の戦争』
戦争マンガの最極北にして最高峰。しかもそれがギャグマンガなのである。いしいひさいち恐るべし。