知覚×全身、読書尽くしの3カ月【多読ジム×読衆インタビューVol.1】

2021/03/24(水)08:00
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 開講から2年目を迎える多読ジム。

 

 「本を何となく読み進めてしまう」「文系(あるいは理系)の本が読めない」。
 そんな読書癖の襟元を見直しながら、ジムに集う読衆たちは今日も本から本を伝い歩く。

 多読ジムは継続型のトレーニングだ。年4回、冬春夏秋ごとに3か月のスパンで開催される。現在はseason05冬が佳境を迎えている。ジムの読衆は冊師から出されるお題に向き合ううち、気づけば多数の未読本や積読本を手にし、マーキングに集中する。

 season01から継続受講メンバーも多数在籍する。
 「同じお題への回答を繰り返して意味があるの?」と疑問に思われるかもしれないが、1節、1キーワードごとの「読み書き」が次の本を手に取るきっかけになる。少しずつ読書量が増え、その実感が嬉しくてまた別の本に手が伸びる。

 ここでジムを継続している、読衆の声をお届けしたい。


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 高宮光江さん(season05スタジオ茶々々)京都在住、season02から参加

 【知覚×全身、読書尽くしの3カ月】

 受講のきっかけは、編集学校の吉村堅樹林頭から「多読ジム」が開講することを教えてもらったため。帝京大学の共読ナビゲーターを経験した時に、まったく同じ本なのに学生によって読みが違う、その気付きが多様である面白さを感じた。ウェブに関わる仕事の反動からか、自分自身も同じ本を読みながら違う視点を楽しめる「共読体験」をしてみたいと思ったという。

 

Q.初めて受講したときの多読ジムの感覚は?


 入門したものの、現実はなかなかハードスケジュールでした。season02スタート直前、2020年4月に緊急事態宣言が始まって、欲しい本が入手しづらくなりました。今まで自分の嗜好のみで選んでいた選書から、新たな視点でチャレンジすることは、自分の苦手分野に向き合う勇気が出てきました。
 選書を高望みしたため、<3>の三冊筋プレスで行き倒れたので、次からはなるべく無理しない三冊を選んで最後まで行きつく事を目標にしました。
同じ本を選んでいるはずなのに引用も振り返りも変わってしまう共読を体験して、多読ジムは自分を透き通すトレーニングなのだと気付きました。
スタジオへ回答を出すことで、むしろ自分の読書経験の強さ弱さを見つけることができました。

 

Q.回答=自分なんですね。継続トレーニングで手ごたえを感じるのはどんな点ですか?


 season04の課題本である、作家米原万里さんの書評『打ちのめされるようなすごい本』をきっかけに、普段手にしない小説にもチャレンジできました。タイトルの通りで、読み始めるとノンストップで徹夜読書が続きました。

 

 多読ジムでトレーニングしていると、読むスピードは確実に速くなります。従来は速読とはいえ、字面を追うだけで読み落としがあったのですが、
マーキングすることで、本の頁に自分の感情という楔を打ち込むようで、読み返した時に、あの瞬間の記憶が立ち上がってくる感じです。
一度読み通した後にマーキングに更に追加していく過程も、本全体、さらには他の類書との繋がりが発見できます。

 未踏のジャンルへのチャレンジから自分の読書畑が広がり、以前読んだ本も再読で全く違う貌を見せてくれたりする体験から、自分の脳内の癖に気づくことができます。多彩な人の共読を通じて多面的な視野でものが見られます。

Q.多読ジムの魅力はどんなところですか?


 編集学校に在籍していると、季節によって転機が訪れます。守・破コースを越えたらチャレンジできる多読ジム入門の切符。共読多読で、どんどん知や情報の関係線が日常と繋がる体験が出来ます。トレーニングの途中で四季折々の変化や、目にする耳にする情報の回路も変わってきます。息切れしないように細く長く続けることで、少しずつ筋力が付いてくることを実感しています。


 多読ジムで鍛える身体、まさに全身で読書!しています。

 【エディション読み回答より、高宮さんの図解紹介】

   

 

 千夜千冊エディション『理科の教室』のチームを分けてみました。表紙に合わせて水色の色鉛筆にしました。追伸によるワードは赤にしました。
理科、そして科学の専門分野ごとに大きく分けてみました。基本章立てに従っていきます。
 第1章は個性的なへんなおじさんを大集合させました。女性の足フェチと「ガ、ガッ、ガモフ、ガーモフ万歳!」と行進する靴音のイメージから両足に配しました。
 第2章は中央を縦断します。下へ鉱物、上へ樹木が伸びていきます。
 第3章は生物が多いので「〇〇の惑星」のフレーズから地球に見立て、ダ・ヴィンチもどきにと地球が一体化した図にしました。右脇はゾウの耳、左脇は虫の翅を配します。あらゆる生き物たちを時代や愛着から並べました。ペンギンもメダカも飛びます。
 第4章は人体を貫き、またヒトの惑星とし人体て全体を包むテーマもあるのでやや分散しました。最後の2冊はこれからを考えるための課題本となりそうとピンクでマークしました。


  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞

 

 【増岡麻子冊師からのメッセージ】
 新型コロナの第二波に揺れた2020年夏。season03スタジオこんれんで共読を交わした高宮さん。「自分を透き通す稽古」と称した通り、真っすぐな本との交際が毎晩のトレーニングで輝き続けていました。課題本から数寄のフィルターをどんどん切り替えてゆき、絵本に始まり、白州正子、五木寛之、レイチェル・カーソンまで読書を広めてくれる。汗をかき続けた猛暑のなか、知覚と身体を連ねて共読を推してくれました。
『理科の教室』の表紙からインスパイアされた図解が見事でした。

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 多読ジム season06 春は2021年4月12日(月)スタートです。
 申込締め切り3月31日(水) 申込はこちらから
 https://es.isis.ne.jp/gym

 

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  • 増岡麻子

    編集的先達:野沢尚。リビングデザインセンターOZONEでは展示に、情報工場では書評に編集力を活かす。趣味はぬか漬け。野望は菊地成孔を本楼DJに呼ぶ。惚れっぽく意固地なサーチスト。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。