独読から多読、継続はチカラなり【多読ジム×読衆インタビューVol.2】

2021/03/25(木)08:00
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 多読ジム、読衆インタビュー第二弾(第一弾はこちら)。season01からトレーニングに邁進中のゴールドメンバー。ジムの扉を開いたきっかけは、息子さんが通う学校だったという。

 

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 椿和恵さん(season05スタジオNOTES)神奈川県在住、season01から参加

 

【独読から多読、継続はチカラなり】

編集学校との出会いは、息子が通う高校の図書館主催で行われていた読み書き講座【OBI-1】に保護者参加し、リコメンド文を帯にしたのが楽しかったから。
そんな講座を再体験してみたかったからというのが受講理由だという。目次読書、三冊屋、先達文庫などの読書ツールには、読みを広げつつ深める
秘密がある気がしていた。そんな矢先、多読ジムの受講案内をみて、継続型の読み書き講座であること、自分のペースで独習かつ、時々共読する流れに乗ると、結果的に多読ができるのではないかと申込みした。

 

Q.初めて受講したときの多読ジムの感覚は?


 腑に落ちたお題は、<1>ブッククエストの「3冊を道しるべに」です。課題本から3冊を選んで、さらに3冊、またさらに3冊と本をつなげていく自分の本選びの方針が感覚的にわかりました。お題<2>エディション読みの課題本で『本から本へ』を題材にしましたが、
本棚そのものが本なのであるという感じが腑に落ちました。さらに本棚の写真を撮影し、立体化すると選んだ本の相互の関係性が連環していきます。
まさに本の森を歩いていく感じが心地よかったです。

 掴めなかったお題が、<3>三冊筋プレスです。要約・著者の背景を1冊ずつ書いた後に3冊をつなぐとはどういうことか。3人の著者と読者としての私をどのような立ち位置で並べるべきなのか。さらに、3冊をつなぐ斜め線を見つけて、文章化するというのが難しくて歯が立ちませんでした。

Q.三冊筋プレスは難しいお題ですよね。継続していて、どんなところに手ごたえを感じますか?


 目次読書とマーキングで読書スピードが上がった。本は二度読む。1回目は、目次読書による鳥の眼で大体大枠をつかんでから、
2回目はマーキング読書により、キーワードからキーワードへ飛び石のように飛んで虫の眼で読む。そんな切り替えができるようになりました。

また、著者情報に注目して本を選択するようになりました。例えば『青山二郎の話、小林秀雄の話』(宇野千代著)。
宇野千代の眼を通した青山二郎や周辺の人物である白州正子、小林秀雄の人となりが可視化されます。
そのうえで、青山次郎や白州の著書を読むと親近感が増してきます。今まではバラバラに読んでいたのが、同時代人のつながりや時代背景を共有できるようになりました。

最後に、本棚の並べ方から本の思想が見えるようになりました。書店に行っても、文学館で文豪の本棚を見学しても、本が伝えようとする「思想」が
見えるようになり、手に取る楽しみが倍増しました。

Q.多読ジムの魅力はどんな点ですか?


 目次読書とマーキング読書で読むスピードが確実にアップします。一度会得しておけば、新聞も仕事本や資料も、雑誌から専門書まで全部応用できます。また、本と本の連環を実感できるようになります。既知な分野が広がり不足する未知へぐんぐん本を選んでいけます。

 そして、継続は力なり。多読ジムを継続して読み書きを習慣化できます。

 読書は一人でするものだけれど、時々共読する人がいて感動を分かち合えるという不思議な講座です。

 

画像:season04ブッククエストお題より、椿さんが選んだ12冊をリアル本棚に設えた。

 

 

 一番印象に残った本は『私の家は山の向こう』のテレサ・テン。そこで、テレサを中央に配置し、上段に中国・台湾の歴史と民衆の想いの詰まった本を並べ、左側にAmazonや介護施設で働く労働者(日米英)についてのルポルタージュの本を、右側にイラク戦争の政治的背景とイラク市民から見た戦争の本を並べました。
 本棚を見る人の視線がテレサに集まるようにし、アジア発でテレサに各国の近現代史を教えてもらうような構図にしました。
写真と一緒に読んだ記憶がよみがえるように、願わくば内容も蘇るように、秋の本棚の記憶として。

 

  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞

 

 【増岡麻子冊師からのメッセージ】
 多読ジムがスタートした2020年1月。椿さんは、右も左も分からぬまま生まれた<スタジオこんれん>を訪れてくれました。当初のスタジオメンバーには、木村月匠をはじめ、編集学校の先輩たちがずらり。肩を並べて読み書きをするのは不安も大きかったことでしょう。しかし、真摯なトレーニングは次第に輝き、加速しました。season04でスタジオこんれんで再会したときには本選びから、マーキング、知文のトレーニングまで自分のペースを保ちつつ、仲間の読み書きもインプットする懐の深さに頼りっぱなしの3カ月でした。

 

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 多読ジム season06 春は2021年4月12日(月)スタートです。
 申込締め切り3月31日(水) 申込はこちらから
 https://es.isis.ne.jp/gym

 

  • 増岡麻子

    編集的先達:野沢尚。リビングデザインセンターOZONEでは展示に、情報工場では書評に編集力を活かす。趣味はぬか漬け。野望は菊地成孔を本楼DJに呼ぶ。惚れっぽく意固地なサーチスト。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。