コロナも停電も乗り越えて――46[守]師範代座談会

2021/04/11(日)10:06
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 2020年10月26日に開講し、133日間走りきった46[守]。この期は、別院が想定外の盛り上がりを見せたり、各教室でエディティングキャラクターが突出したりと、「NEXTイシス」のうねりを感じさせる期となった。

 ではその裏側で、師範代は何を考え、どう振る舞っていたのか。

 石井梨香番匠の声かけに、5人の師範代が集まり、今だから話せる本音を交わし合った。

 

登場人物

 

■石井梨香番匠(司会進行)

46守で初めて番匠ロールを担う。「援番」として守全体をあたたたく見守り続けた九天玄氣組の中心メンバーのひとり。

 

■荒川樹里師範代/ピロシキ・チャーム教室

ロシアのウラジオストックから日夜、指南を送り続けた。「うっかり者」を自称するが、学衆からは「樹里師範代」と慕われた。

 

尾島可奈子師範代/襟足バンビ教室

[離]出身のツワモノ。教室名はかわいらしいが、第一回汁講を「決起集会」と名付けるなど、実は46守一の血気盛んな師範代である。

 

■角山祥道師範代/角道ジャイアン教室

師範代登板中に「46[守]新師範代登板記」を連載。「イシスという池に石を放り込むロール」を自認するも、毎度、自分に水しぶきがかかる。

 

■高木文堂師範代/アクセス鍋奉行教室

経営コンサルタントとして活躍する。愛称は「ぶんどう師範代」。今回、災難に襲われるも、持ち前の愛嬌と大らかさで乗り切った。

 

松永真由美師範代/いいちこ水滸伝教室

九天玄氣組組員。チェロ奏者でもある。守3回、破2回、離など、多数の受講暦を持つ。守師範代は3度目、46守で速修コースを受け持った。

 

 

  • ■不安と不足と歓びと

 

石井:みなさん、終わってみてどうですか?

高木:ホッとしてます。不安の連続でしたから(笑)。開講初日、実は誰も点呼に応えてくれなくて、一睡もできませんでした。このまま始まる前に終わってしまうこともあるのかな、と。夜中の3時過ぎに点呼が返ってきて、ようやく眠れました。

尾島:良かったですね。私も初日のことを思い出していました。15時に最初のお題を出題したのですが、回答が全然返ってこない。夜遅くに初回答が届いたのですが、気になって眠れず、真夜中に最初の指南を書きました。師範からは「師範代ってそういうものだよ」と言われましたが。不安はありましたが、学衆の回答によって不安を上回る感動が返ってきました。

荒川:私は自分の中での「不足」が大きくて、自分から「師範代」と言えなかったんです。それで「樹里です」と名乗ってたのですが、クラブのママみたいですね(笑)

石井:樹里師範代は、卒門のあとも指南をし続けましたよね?

荒川:56個、未指南があったんです。2週間、指南に埋もれていました。でもこの時に必死に走り続けて、ようやく最後に、教室がひとつになれたように思います。「てらい」や「迷い」を吹っ切ることができました。自分も卒門できたのかもしれない。「師範代が私でいいのかな?」とずっと思いながらやってきましたけど、最後の最後で「師範代って名乗っていいんだ」と思えた。全うできて本当に良かったです。

松永:私は10年振りの登板だったのですが、まさかの速修コース。「大丈夫か?」と思いましたが、騒いでもしょうがないし、毎日出題するので悩んでいる暇もない。いい意味で開き直ってやっていました。

石井:定常コースとの一番の違いは何でしたか?

松永:違いですか? 3度の目の登板だったので全体像は見えていたのですが、本当に余裕がなかったですね。だから、いろいろとやらかしたんです。失敗をスルーしてなかったことにしましたが(笑)。

角山:お、忘却力ですね。

松永:覚えている余裕がないんですよ、平均で指南が20個貯まっていましたから。最初は「あと何個」と数えていたのですが、すぐにやめました。とにかく学衆と一緒に走り続けよう、それだけでした。しんどかったですけど、非常に充実していました。角山さんはどうでした?

角山:今だからいえますが、プレッシャーが大きかったですね。自分で提案した登板記の連載ですが、連載中に教室が崩壊したら洒落になりません。必要以上に力が入っていました(苦笑)。教室では日々、さまざまな事件が起こりますし。

 

  • ■事件は教室で起こる

 

石井:事件の起きない教室はありません。ぶんどう師範代はご自身が大きな災難に襲われましたものね。

高木:ああ、コロナになった件ですね。

角山:え、コロナになったんですか? 初耳です。

高木:ちょうど第1回の番ボーが始まるタイミングでした。いつも調子が悪い時は、鍼を打って鍋を食べたら全快するんですが、この時ばかりは3日間、ベッドから起きられなかったんです。で、検査をしたら陽性で、入院せざるを得なくなりました。指南できるのか心配されましたが、『字通』を持ち込んで、病室から指南を返していました。

松永:それは大変。

石井:樹里師範代もいろいろ大変でしたね。

荒川:あ、停電事件ですね? そうなんです、ウラジオストックで3日、停電が続いたんです。それが原因で、家のネットも3週間回復せず……。

松永:どうしたんですか?

荒川:携帯から指南したり。あとは夜中、無断で会社に入って、会社のパソコンから指南を送っていました。

角山:事件ばかりですね(笑)。うちの学衆は師範代に似て(笑)、「思ったことを言葉にする」面々だったので、激震がたくさん走りました。でも今思えば教室が動いていく「機」になりましたね。自分の中で大きかったのは、第1回番ボーかな。全員エントリーしてくれたことで手応えを感じました。

尾島:私も第1回番ボーが大きかったですね。いろんな意味で悔しかったんです。自分なりにやったつもりでいましたが、講評が返ってきて結果が身に染みました。指南が足りなかったんじゃないか、お題研究が足りなかったんじゃないかって。汁講の時、その悔しさを正直に、学衆の前で吐露できたんです。「第2回番ボーの決起集会です」と宣言したところ、ZOOMの画面越しに学衆に気合いが入ったのがわかりました。

角山:第2回番ボーの時は、バンビの勢いをひしひしと感じましたよ。ドドドドっとチームで激走していましたもん、バンビは。

尾島:ほんと、第2回番ボーは特に学衆のみんなのガンバリがすごくて。チーム戦でした。番ボーは。回答を見て、パソコンの前で手を叩くこともありました。

松永:速修コースは番ボーが一回きりなんですが、たくさん再回答した学衆の方が未入選になってしまって。回答も滞ってしまった。今思い出しましたが(笑)この時はピンチでしたね。でも他の方が自身の番ボーについて悔しい気持ちを回答の際に書いてくれたり、また別の方もご自身の稽古の構えを語ってくれたりして、教室が動き始めました。

▲左上から時計回りに、高木ぶんどう師範代、角山師範代、尾島師範代、松永師範代、荒川樹里師範代、石井番匠。

 

  • ■なぜ師範代をやるのか
  •  

石井:ところで、みなさんはなぜ師範代をやろうと思いましたか? 

高木:正直言うと、師範代が務まる自信はありませんでした。守の学衆の時、感門之盟に出ましたが、あれってどこかで、師範代のために用意されていますよね。この時、イシスは師範代のための学校だと気づいた。ということは、師範代をやらないと稽古を終えたことにならないぞ、と。

角山:でも自信がなかったんでしょ? そこをどう乗り越えたんですか?

高木:プールから突き落とされたと思えばいい、と考えました。溺れながらでも手足を動かしてみなければ、いつまで経っても泳げない。編集稽古って、そういうもんじゃないですか?

荒川:私も自信はありませんでした。特に錬守が大変でした。自分の中で想定していた指南と、師範の指導が違う。最初は指導が全然腑に落ちませんでしたが、師範と何度もやりとりしているうちに、掴めてくるものがあって。最後まで「短文で指南しなさい」という師範のアドバイスは守れませんでしたが(笑)

松永:みんな迷いますよね。私は楽天的なのかもしれないけど、それでもなんとかなるって思ってやっていました。チェロをやってるのも大きいですね。チェロって失敗を引きずるとさらに失敗するんです。「ま、いいか」と次へ進んでいかないとダメ。指南もそんな感じでした。

尾島:師範代って、学衆の人生に出会えますよね。日頃から、「いろんな方の話を聞きたい!」と思っているのですが、師範代はそれができます。しかもいっぺんに10人近くの人生に出会える機会なんてほかにありません。

石井:師範代は指南しているうちに「わたし」というものがなくなっていきますよね。学衆と重なり合って、自分が抜けていく。指南を通じて「たくさんのわたし」になっていくと言ってもいいかもしれません。混じり合っていくのがたまらなく嬉しい。

高木:本当にそうですね。うちの教室では、わたしに感謝状を書いてくれた学衆もいました。

荒川:学衆とのやり取りは、感動もありますものね。私なんて、学衆の声が嬉しくて、泣いてばかりいました(笑)

角山:自分の学衆の頃と比べると、教室での再回答も多かったですし、別院も盛り上がった印象があります。

石井:これは全教室に共通していましたが、実際、46守は自主的再回答が多かったですね。その勢いで、別院にも学衆主導の企画が幾つも立ち上がり、目を見張っていました。学衆ひとりひとりが、自分のロールを作ろうとしていたように思います。

尾島:(パチパチパチパチ)

松永:46守はみんなが大人だった印象がありますね。好き勝手にやるんじゃなくて、気遣いながら楽しんでいる。

荒川:46守は本当に刺激的でした。「面白かった」と自信をもっていえます。

石井:私は46守の師範代、学衆の皆さんを誇らしく思います。みなさんを見て、「あ、私よりすごい」と思うこともしばしばですが、「追い抜かれる」ことは何よりも嬉しいんです。46守に関わった皆さんが今後、どんな変化を遂げるか、本当に楽しみですね。


  • 角山祥道(ジャイアン)

    編集的先達:黒岩涙香。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り続け、感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系にする異端児。

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