『野望の王国』原作:雁屋哲、作画:由起賢二
セカイ系が猖獗を極める以前、世界征服とはこういうものだった!
目標は自らが世界最高の権力者となり、理想の王国を築くこと。ただそれだけ。あとはただひたすら死闘に次ぐ死闘!そして足掛け六年、全28巻費やして達成したのは、ようやく一地方都市の制圧だけだった。世界征服までの道のりはあまりにも長い!

■光を浴びたスナイパー
後藤がいつもの黒ジャケットを脱ぎ捨てた。感門之盟初日のラストを飾ったのは「エディストジャストLive!」。2日で6000枚の写真を撮るカメラマンは、2週間前から心に決めていたドレスに身を包み、30分だけ女優にお着替え。相方は、その直前までテクニカルブースの真横で康代[守]学匠のニュース速報を書きあげていた上杉公志。ふたりはそのコーナーのあいだだけ、いつもの裏方装束から、持参した舞台衣装にまといを変え、本棚劇場でスタイリッシュに照明を浴びていた。
近年のイシスで後藤由加里を知らぬ者はいない。しかしその登場頻度とは裏腹に、後藤の正体を知る者も少ない。42[守]で師範を、42[破]MMプリテンダー教室で二度目の師範代を務めたあとは、バーチャルな教室を飛び出して、リアルな現場に主戦場を移したのだ。
イシスでのイベントごとがあれば、そこにはかならずカメラを構える後藤がいる。神出鬼没のスパイダーウーマンは、感門之盟や伝習座はあたりまえ。校長松岡正剛の著作『江戸問答』の撮影会にも同行、1000名以上が視聴したソロトーク「千夜千冊の秘密」では記録カメラマンとしてエンドロールに名を連ねた。感門タブロイド10面でも明かされたように、松岡がメガネを外した散髪姿までもとらえるその密着ぶりは「情熱大陸」を思わせる執念だ。
ハレの舞台から誰も入れぬ楽屋裏まで、黒服をまとった後藤はするりと忍び込み、会場内を瞬間移動。シャッター音だけを残して去っていく。手練の黒衣は、その存在を意識させない。後藤は、白昼堂々獲物を仕留めるスナイパーなのだ。
▲感門当日、休憩時間こそ撮影チャンス。麗しの姿を写真におさめる。
▲番組中は、ビデオカメラや照明スタッフとともにスタンバイ。
■またの姿は、感門タブロイドディレクター
遊刊エディスト編集部としても、おっとりとした口ぶりながらカミソリのようなマネージャーとして鳴らす。全記事の公開権限をもち、最適なタイミングで読者に届くよう分刻みでスケジュールを調整。2019年9月のオープン以来、1年半以上毎日欠かすことなく舞台裏で奔走しているのだ。そして決して、みずからの仕事を表に見せることはない。
後藤の本領が発揮されたのが、感門之盟「Inform共読区」でのタブロイド紙制作である。上杉公志とともに制作ディレクターを任された後藤は、特設された「第75回 感門之盟 メディア編集部」ラウンジでありったけの手裏剣を投げていた。
制作のスケジュールはあまりにタイトだった。感門之盟のテーマ「Inform共読区」が佐々木局長よりアナウンスされたのが、2月10日午前02時11分。入稿デッドラインは3月1日17時00分。作業期間は3週間足らず。そのなかで、上杉公志・佐々木千佳・吉村堅樹・穂積晴明らとともに全12面の企画や校正を考え、各記事を割り振る。後藤のミッションは、企画とともに、それぞれの執筆者から上がる記事を集約し、完成まで全体を牽引することだった。
記事を寄せたのは、46[守]・45[破]・35[花]・風韻・物語・多読、輪読座、AIDA、情報の歴史、子どもイシスなど編集学校のありとあらゆるプロジェクトのメンバー、総勢47名。
後藤はすべての記事に目を通し、タイトル選びから名前表記などのファクトチェック、果てはQRコードの反応までチェックしてゆく。その速度と密度は、物語AT賞締切1時間前の師範代のようだった。突破学衆ならわかるだろう、あの指南を3週間、47人に対して行いつづけるという信じがたい苛烈さが。イシス民が集った共読区、その地下に後藤は潜りこみ、筋肉質な細腕で広場を支えつづけたのだ。
「Inform共読区、タブロイド制作」の文字は、ISISクロニクルの1ページに色褪せることのない記憶のインクで刻印されている。
▲電車内でも読んでも遜色のない新聞デザイン。各広告にも注目。
◆ ◆ ◆
■求む編集力!遊刊エディスト、ライター募集中
コーナー終盤、誇らしげにエディスト記事を紹介していた後藤が、とつぜん上杉と顔を見合わせてモジモジしはじめた。何を言うかと思えば、「遊刊エディスト ライター募集」というリクルートだった。後藤はここに来て、裏方マネージャーが表舞台に立っている居心地の悪さを感じたようである。
エディストライターは、卒門以上の学衆なら誰でも応募可能。編集の国ISISメディアで、共読を超える共筆を。希望者は、好きなエディスト記事3本を添えて【edist@eel.co.jp】まで名乗りをあげられたし。
▼遊刊エディスト上でも、感門タブロイドの一部がご覧になれます。
●特報!感門番組表、見所はここだ!(吉村堅樹)
https://edist.isis.ne.jp/just/kanmon75_bangumihyo/
●寄り道どのみち俺の花みち【感門75】(白川雅敏)
https://edist.isis.ne.jp/just/75kanmon_hanamichi/
写真:後藤由加里(タブロイド撮影)、梅澤奈央(舞台、オフショット撮影)
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
イシス編集学校メルマガ「編集ウメ子」配信中。
大澤真幸が語る、いまHyper-Editing Platform [AIDA]が必要とされる理由
Hyper-Editing Platform[AIDA]は、次世代リーダーたちが分野を超えて、新たな社会像を構想していく「知のプラットフォーム」です。編集工学研究所がお送りするリベラルアーツ・プログラムとして、20年にわ […]
【多読アレゴリア:MEdit Lab for ISIS】もし順天堂大学現役ドクターが本気で「保健体育」の授業をしたら
編集術を使って、医学ゲームをつくる! 「MEdit Lab for ISIS」は2025夏シリーズも開講します。 そして、7月27日(日)には、順天堂大学にて特別授業を開催。 クラブ員はもちろん、どなたでもご参加いただけ […]
【ARCHIVE】人気連載「イシスの推しメン」をまとめ読み!(27人目まで)
イシス編集学校の魅力は「人」にある。校長・松岡正剛がインターネットの片隅に立ち上げたイシス編集学校は、今年で開校23年目。卒業生はのべ3万人、師範代認定者数は580名を超えた。 遊刊エディストの人気企画「イシスの推しメン […]
イシス最奥の[AIDA]こそ、編集工学の最前線?受講した本城慎之介師範代に聞くSeason5。
イシス編集学校には奥がある。最奥には、世界読書奥義伝[離]。そして、編集学校の指導陣が密かに学びつづける[AIDA]だ。 Hyper Editing Platform[AIDA]とは、編集工学研究所がプロデュースする知と […]
【多読アレゴリア:MEdit Lab for ISIS】編集術を使って、医学ゲームをつくる!?
伝説のワークショップが、多読アレゴリアでも。 2025年 春、多読アレゴリアに新クラブが誕生します。 編集の型を使って、医学ゲームをプランニングする 「MEdit Lab for ISIS」です。 ■MEd […]
コメント
1~3件/3件
2025-07-13
『野望の王国』原作:雁屋哲、作画:由起賢二
セカイ系が猖獗を極める以前、世界征服とはこういうものだった!
目標は自らが世界最高の権力者となり、理想の王国を築くこと。ただそれだけ。あとはただひたすら死闘に次ぐ死闘!そして足掛け六年、全28巻費やして達成したのは、ようやく一地方都市の制圧だけだった。世界征服までの道のりはあまりにも長い!
2025-07-08
結婚飛行のために巣内から出てきたヤマトシロアリの羽アリたち。
配信の中で触れられているのはハチ目アリ科の一種と思われるが、こちらはゴキブリ目。
昆虫の複数の分類群で、祭りのアーキタイプが平行進化している。
2025-07-07
七夕の伝承は、古来中国に伝わる星の伝説に由来しているが、文字や学芸の向上を願う「乞巧奠」にあやかって、筆の見立ての谷中生姜に、物事を成し遂げる寺島ナス。いずれも東京の伝統野菜だが、「継承」の願いも込めて。