ポケモン・たかじん・走る女に脱ぐ男―48[守]師範代座談会

2021/12/10(金)08:59
img JUSTedit

 伝習座は言葉の矢が降ってくる。用法・指南語り、NOW、編集道。師範の愛情と方法と熱意で作られた矢だ。ずばり命中すれば、師範代は変わりたくてムズムズする。11月27日の48[守]第2回伝習座、師範代にはどんな矢が刺さったのか。3日後の30日、師範代による緊急座談会が開かれた。

 

 参加したのは與儀香歩(断然ユイマール教室)、竹岩直子(はいから官界教室)、佐藤裕子(しんがりスサビ教室)、畑本浩伸(いつもトンネリアン教室)の4人。オブザーバーを番匠の若林牧子、師範の角山祥道、そして進行を景山和浩が務めた。4人はどんな思いを持って48[守]のこの先に進むのだろう。


★出るか10万ボルト指南

 WEBライターに興味がある與儀香歩。48守で最も若い師範代だ。きょうだい教室の輪島良子が「ワジマール船長」など多彩なキャラクターで盛り上げているのを、「真似したい」と思っていた。担当師範の森本康裕からも「(自分の持っている)カードをどう使うか考えるといい」と言われて考えた。「教室を自分の好きなこととつなげてもいいんじゃないか」。與儀が好きなこと、それは「ポケモン」だ。学衆の時はポケモンを集めて分けて回答してきた。師範代になってもできるはず。「とっても面白いじゃないですか」。角山祥道がすぐに声を上げた。「学衆さんを見立てたら」「断然の回答にピカー!とか」。オブザーバーの好き勝手な案に、顔をほころばせ「さっそく入れていきたいです」と乗り乗りだ。好きなポケモンは鈍感なヤドン。師範・三國紹恵による編集道のキーワード「鈍感力」がつながった。メガ進化した與儀が、10万ボルト指南を放つ日も遠くない。

 

★「東京」で大阪のおばちゃん

 第1回番ボーでは「大阪のおばちゃん」にキャラクターを編集(キャラ編)した。竹岩直子は切る指南の快感に目覚めたのだ。一見繊細そうに見える。が、生まれはコテコテの浪速っ子。「加速が必要な番ボーに丁寧な言葉は似合わない」とキャラ編した理由を明かす。決して無理しておばちゃんに着替えたわけではない。地に戻したという方が正しいのだろう。大阪ルーツの血が騒ぐのか、指南に行き詰まった時は、やしきたかじんを聴いてスイッチを入れるという。お気に入りは「東京」。間もなく始まる第2回番ボーでも「東京」を聴きながら、「大阪のおばちゃん」に変身ならぬ“編身”する竹岩が見られるはずだ。48守のトップを切って汁講を開催した。伝習座で刺さった「あなたしか歩めない編集道」(三國紹恵師範)を、「大阪のおばちゃん」となって加速して歩んでいる。

 

★あの男がついに脱いだ

 「いま着替えてもらっていいですか」。佐藤裕子の半ば命令するような口調に、スーツ姿の畑本伸浩が画面から消えた。1分後、畑本はラフなシャツに着替えて登場した。「オンラインでもネクタイ」を貫いてきた男がついにスーツを脱いだ瞬間だ。イシスを愛するがゆえの正装がスーツにネクタイ。その生真面目さは、指南にも表れているのかもしれない。素顔はやわらかくチャーミングな畑本の魅力をもっと出したい。その答えが「スーツを脱がす」。今回の座談会の目的の1つだった。「喉元に見えるシャツが気になりますね」。その喉元のスースーが肩の力を抜くのだよ、畑本師範代。パンクなTシャツに着替えてのパンク指南も予告された。「用法3は切りますよ」と不敵に笑う。予測不能な“編身”はどこまで行くのか。番匠・石井梨香の言葉「今とは別の処に行って結実する」をすでに表しはじめている。

スーツを脱いだ畑本浩伸。顔も優しくなった!?

 

★赤い彗星は速修を駆ける

 角山祥道の用法解説「伝えるとは問うこと」に衝撃を受けたという佐藤裕子。2度目となる師範代は、毎日出題の速修コースだ。学衆時代、41[守]シカクゴメン教室で「赤い彗星」と呼ばれたスピードは衰えていない。むしろ[破][離]を経験し磨きが掛かった。再登板の余裕か、座談会でも畑本を着替えさすなどツッコミが冴えわたる。しかし1時間を過ぎるころから口数がめっきり少なくなった。さすが速修、既に続々と回答が届いているようだ。「一刻も早く指南がしたい」。気持ちは既に教室に戻っている。「真似っこだけでは小さくなる。今の私たちにしかできないこと」(八田英子律師)を探しながら、しんがりスサビ教室は駆け続ける。それが佐藤の変化となって表れる。

 

 ポケモン・たかじん・走る女に脱ぐ男―座談会に集まった4人だけでなく、48[守]19人の師範代の“編身”がイシスを賑やかにする。

 

上段左から、景山、角山、若林。中段左から佐藤裕子、與儀香歩、竹岩直子。下段は笑顔の畑本浩伸

  • 景山和浩

    編集的先達:井上ひさし。日刊スポーツ記者。用意と卒意、機をみた絶妙の助言、安定した活動は師範の師範として手本になっている。その柔和な性格から決して怒らない師範とも言われる。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本

(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg