入学の春がきた。教える立場にこそ、春はまぶしい。10冊の本をひょいと抱えた10名の新任師範代が、ぞくぞくとZoom会場に現れる。東京・豪徳寺ISIS館には、22枚のオリジナルフライヤーが誇らしげに胸を張る。その一人ひとりを、師範たちがペンを片手に待ち受ける。
▲1階本楼から2階学林堂へ誘うように貼られた、師範代作の教室名ポスター。
2021年3月27日、イシス編集学校では第47期[守]・46期[破]の開講に先立って「伝習座」が開催された。伝習座とは、師範や師範代が集い、編集術の指導を研鑽する場である。これまでは多いときで50名以上の指導陣が豪徳寺に集結。師範による編集工学レクチャーにはじまり千夜千冊の共読、そして松岡正剛による奥義直伝など、昼前から終電間際まで熱烈に知を交わし合っていた。
しかし、緊急事態宣言下の2020年4月から、オンラインでの相互配信に切り替わり、さらに密度の高いコンテンツが提供されることとなった。20年前の開校以来、連綿と続けられているこの奥義伝授は、各期、開講前と開講中に2回ずつ開催され、今回で157回目を数える。この日は、ISIS館1階本楼で[守]、2階学林堂では[破]のプログラムがパラレルに進行された。
この学校は、毎期ごっそりと指導陣が入れ替わる。生徒とともに教師までが、卒業しては入学してくる学校がほかにあるだろうか。今期47[守]も、編集コーチ養成コース「花伝所」を放伝したばかりの新生師範代13名が名乗りをあげた。前期の学衆が、今期の師範代。そして、師範があらためて学び手にもなる。この著しい新陳代謝こそが、20年間進化をしつづけるイシスの要である。
▲校長の墨がにじむ。学林堂からは満開の桜をのぞむ。
指導陣が陳腐化せず、それでいて確かな実力を備えているのはなぜなのか。その秘密を握るのが、先達の方法を後進に託すこの伝習座なのだ。この名は校長松岡によるもので、『論語』の「伝不習乎(伝へて習はざるか)」に由来する。(参考:996夜『王陽明』) 漢字の「伝」は、ふくろに入れたものを人が背負うさまを指し、「習」とは鳥がぱたぱたと羽ばたく様子だという。
この日も、黒板を使い、刀を振り、ジャコメッティになりかわりながら、何十冊分かの言の葉が手渡された。師範代が大空へ飛び立つ日は近い。
▼この日の伝習座の模様
https://edist.isis.ne.jp/post/46ha_ecrits/
https://edist.isis.ne.jp/post/jyoreki21_qchan/
▲学内イベントのしつらえにも全力編集。これらタイトルイメージは、編工研デザイナー穂積晴明によるもの。テーマは、編集の4段階目「情報の構造化」。平面デザインで情報を階層化するため、パースやレイヤーの実験を散りばめている。色味は、アレクサンドロ・ロトチェンコやエル・リシツキーなどロシア・アヴァンギャルドのデザイナーへのオマージュ。
画像:穂積晴明
写真:後藤由加里(フライヤー)
写真:梅澤奈央(伝習座の書)
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
【イシスの推しメン/13人目】神社好きの若きドクター・華岡晃生は、石川県で何を編集するのか
「健康格差」という言葉がある。所得や学歴、住む場所といった社会経済的な要因によって、健康状態が左右されてしまうという事実はWHOも認めるところである。では、人々が健康に過ごせるような社会をつくるためには、何を変えていけば […]
【イシスの推しメン/12人目】アイドルママは3児の母!産後セルフケアインストラクター・新井和奈が美しさを保つ秘訣
母は子を育てる。寝食を惜しんで、ありったけの体力と時間と愛情を子に捧げつづける。しかし、母になることが、自分の人生を諦めることであってはならない。シリーズ・イシスの推しメン12人目は、日本全国の悩める母たちと手を携え、「 […]
【申し込み開始!】法政大学前総長・田中優子氏がソロ講義 江戸の編集力を現代人が身につけるために
日本社会は停滞している。諦めムードが漂って久しい。戦争は続き、政治も変わらず、地球温暖化にも歯止めがきかない。山積する問題を前に、改革の掛け声よりもため息のほうがさきに出る。 イシス編集学校校長・松岡正剛は言った、「この […]
【イシスの推しメン/11人目】情報編集=人生編集?! ハレ暦案内人・藤田小百合はなぜ師範代を2年間続けたのか
人生とは、時間の積み重ねだ。人生を変えたいなら、時間を編集すればいい。イシス編集学校では、生き方を変える方法までも手に入るのかもしれない。シリーズ「イシスの推しメン」11人目は、自身で暦(こよみ)を作り、新たな時間感覚を […]
【イシスの推しメン/10人目】起業支援で「わたし」に出会う 久野美奈子の「対話」という方法とは
編集は「対話」から生まれる。誰かと話しているとき、自分の価値観が浮き彫りになり、ひとりでは気づかなかった「わたし」に出会う。イシス編集学校が重視するのは、「相互編集」なのである。イシスの推しメン10人目は、起業支援を通じ […]