47[守]、名残りの「私たち」

2021/09/24(金)08:00
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 暑さ寒さも彼岸まで、とはこの時季よく耳にする慣用句。
 日射しを受ければ影も長く、風も涼しく乾いてきた。秋は今年も着実な足取りでやって来ている。

 春~夏講座を終えて一段落した9月。手持ち無沙汰な想いを抱いている学衆も少なくないだろう。これまでの稽古習慣は気づかぬうちに身体に染みこんでいるものだ。

 季節がうつろう今、47[守]の稽古風景の名残りをお届けしよう。
 振り返れば、懐かしいだけではない別様の世界が見えてくるはずだ。


◇ ◇ ◇


 全番回答締切から2週間後の9月7日。番匠の石井から別院に最後の全員参加企画が投げ込まれた。

 題して【たくさんの私たち】。別院参加率が高かった47[守]、お題に飛びつくように投稿が続いた。

◆お題……

1.卒門を迎えて生じた「新たなわたし」は?
    私は×××な○○○である

2.私たちの師範代は?
    **師範代は、×××な○○○である

3.私たちの教室は?
    **教室は、×××な○○○である

 「地と図」で言えば、47[守]が地、【わたし・師範代・教室】は図。
 「BPT」で言えば、47[守]がB(ベース)、【わたし・師範代・教室】がT(ターゲット)。そのP(プロフィール)を語る。


 集まった作品は、[守]の型の数々が駆使されていた。

 

◆新たなわたし……

おもちゃを見つけたステップ秒針である

(極性アンバンドル教室・N)

明日を待つ大賀蓮である

(どんでんコマンド教室・Y)

謎をそのままに新たな謎に挑もうとする二流探偵である

(近々ワンダー教室・Y)

 [守]のお題010番の「たくさんのわたし」は、自らの多様性、編集的自己を知るきっかけとなった。型を守って門をくぐると、輝かしくもドキドキを抱えた、新たなわたしが顕われた。今この瞬間のわたしでさえも時々刻々と編集し、更新されていくだろう。

 

 

◆私たちの師範代……

変幻自在な魔法(指南)を使えるフェアリーである

(妖精アスリート教室・T)

ハニカミなドラえもんである

(どんでんコマンド教室・Y)

煮えるぬか床返すお蝶夫人である

(アレンジ万端教室・S)

 「うちの師範代がやっぱり一番!」。学衆は師範代のご贔屓筋だ。

 半年前の感門之盟で校長から教室名を拝受した師範代。託された意味を追窮し、〈学ぶモデル〉を脱皮して〈教えるモデル〉に着がえた。
 師範代ロールを全うできたのは卒啄同時をおこす学衆の存在ががあったから。
 教室では日々、相互編集という「継承」が行われた。それにはエディティング・モデルを交換する相手が不可欠だ。学衆にモデルを手渡し、想像力を触発し新たな才能を育てることで、初めて師範代になれる。
 たった一人で成長し勝ち抜く方法は、イシスには見当たらない。

 

 

◆私たちの教室……

乾いた編集脳を潤してくれるオアシスである

(谷中エッチング教室・S)

真夏に打ちまくるプロ野球チームである

(一客一亭教室・H)

多様なスピンオフの可能性を秘めた連載漫画である

(アイドル・ママ教室・Y)

 バーチャルなのに生々しい。それがイシスの教室だ。
 47[守]は21教室。エディティングロードを歩み始めた守学衆にとっては、これから始まる物語の原郷となる。

 学衆と師範代の密な交わし合いの場は、ユニークな見立てが示すように、21通りの共同体を構築した。場の多様性を引受けた教室編集も、師範代の腕の見せ所だ。
 学衆一人一人の編集的自由を担保した場づくりには「みんなで一緒に」や「和気藹々」などの平べったさは似合わない。
 師範代は学衆のケバケバやトンガリを面白がり、出る杭も推奨する。お互いが尊重しあえる関係性を育んでいく。
 だから教室はオアシスでもあるし、プロ野球チームだし、連載漫画にもなりえたのだ。


◇ ◇ ◇

 

 9月13日、47[守]別院に鍵がかけられた。教室、勧学会も閉じられて、師範代や仲間の声はもう届かない。

 編集稽古に名残り惜しさを感じたら、迷わずに47[破]へ進んでもらいたい。秋真っ盛りの10月から再び、方法の知へ向かって歩んでいこう。

 

 48[守]開講を前に、イシスフェスタに参加して「編集学校とは何ぞや?」と、自分と編集のあいだを探っている人もいるだろう。
 何か心が惹かれたら、臆することなく門を叩いて欲しい。

 

 9月25日は伝習座だ。講座指導陣は、すでに開講に向けてエンジンをあたためている。モデルを受け継いできた「私たち」は、次に手渡す「あなたたち」を待っている。

  • 三國紹恵

    編集的先達:ヴァーツラフ・ニジンスキー。聞かせます、エディット情話。大衆芸能と昭和歌謡を愛する唄女・つぐえは、学衆、師範代、師範のフラジャイルな逸話を紡ぎ続ける。伝えたいメッセージは「編集だよ、おっかさん!」。

  • 物語は世界を創る方法 綴師・創師績了式メッセージ【87感門】

    昨日からの空模様は引き続き、豪徳寺を春雨で包む。桜もすっかり縮むような冷え込みだ。 だが本楼に集った、[遊]物語講座17綴を駆け抜けた叢衆と指導陣は、思いがけない寒さをも物語の部品として味わう編集力を持ち合わせている。績 […]

  • かぞくでねっちゅうイシスのけいこ

    編集稽古が姉妹をつなぐ――48[守]の声

    48[守]の19教室では、113名の学衆が見事、門を出た。彼らは、なぜイシスの門を叩いたのか。[守]で何を得たのか。何がかわったのか。師範によるインタビューによって、学衆の「声」をお届けする第3回目。「姉妹対談」編をお […]

  • 涙の機能 47[守]卒門【77感門】

    師範代のハレの場である感門表授与には、涙がつきものだ。  コロナ禍での感門之盟も4回目ともなれば、[守]卒門式のZoom越しの感門表や卒門証の授与もまた、お馴染みのプロフィールになりつつある。とはいえ期毎に師範代も学衆 […]

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。