仲間の声を感じて――48[守]の声

2022/03/13(日)09:00
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 48[守]の19教室では、113名の学衆が見事、門を出た。4か月の間に、どんな教室体験があったのか。師範によるインタビューによって、学衆の「声」をお届けする学衆インタビューの第4回目、「仲間がいたから」編をお送りする。

 

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 17週間は、編集術を理解するには、あまりにも短すぎる期間である。だが、[守]で得るものは数えきれない。師範代や、教室の仲間たちの存在もその一つ。画面の向こうから、いつも勇気をくれるのだ。

 一人目は、全員卒門の板付Bダッシュ教室から、「ルーナさん」こと伊澤春菜さん。育児に奮闘しながらの[守]体験だった。

 

●伊澤春菜さん(板付Bダッシュ教室)


 1歳半の娘がだんだん昼寝をしなくなって、少し稽古のペースが落ちたときもありました。でも小椋師範代が指南のなかで、子育ても応援してくれて、ありがたかったです。キャリアのために受講した[守]でしたが、スキルだけではなくもっと奥深いもの、人生の土壌にかかわってくる稽古になりました。
 就職活動のときに、学生と社会人が分断されているのを感じて、世代間交流がもっとあったらいいのに、と考えるようになったんです。それがきっかけで、地元では、子どもから大人までが一緒にフットサルを楽しむサークルを運営しています。子どもが親以外の大人と知り合えるチャンスになるし、大人も仕事以外の関係を作れるのがいいんです。編集学校とちょっと似ていますよね。出会うはずもなかった人と出会える。コロナ禍だし、育休中は、意識しないと閉じこもってしまうから、外の世界と繋がれるのが嬉しかったです。
 板付Bダッシュ教室のみんなは、沖縄、長崎、福井、北海道など色々な場所に住んでいて、年齢層も二十歳から米寿の方までさまざまで、回答も多様でした。最初、回答を提出するまで他の人のメールは見ないようにしていたんですが、途中から「これはもう被らないな」と(笑)。島さんの回答は短くても、88年の歴史を感じる深さがあるし、学生もっさんも後半遊び心が溢れていましたよね。医療従事者の一恵さんも、常に深夜の稽古だったのに、じっくり向き合っていてすごかった。雑談で盛り上がったりはしなかったけど、誰かの稽古が滞ると自然と声をかけ合う、いつもお互いの気配を感じている教室でした。 
 仕事復帰したら、みんなのように[守]で学んだことを、もっと使ってみたいなと思っています。子育て中に編集を感じること? そうですね。最近、娘がたくさん喋るようになってきて。連想が遠くまで自由に飛んでいくんですよ。この間も、ハートのおもちゃを見て、他の形を連想して「まる」と言いながら、腕で円を書いているうちに、「パオーン」と象の真似をしていて、驚きました。子どものなかには、私にはまだ気づいていない、見えていないだけかもしれないだけで、もっと複合的に型が存在しているのかもしれないですね。
(取材・文/師範・嶋本昌子)

 

 自分の「これまで」と「今」を散りばめた回答が印象的だったルーナさん。お子さんのなかに潜むたくさんの型を感じながら、「これから」に向かって、編集道を突き進んでもらいたい。

 

 続いて、今さら今こそ教室の「うるちゃん」こと金澤美貴さん。師範代を「トミー師範代」と呼び始めたのもうるちゃんだったが、実は4度も稽古の手が止まったという。そのたびに師範代と仲間の声に励まされて、ここまでたどり着くことができた。

 

●金澤美貴さん(今さら今こそ教室)

 年末のバタバタで10日以上、教室から遠ざかってしまいましたが、第2回番ボー(ミメロギア)が復帰のきっかけになりました。さきちゃんやピグさんが毎日のように回答しているのを見て、「私もやらなきゃ! 今度こそ完全燃焼だ!」と前向きになったんです。ちょっと偉そうですけど、仲間の回答がトミー(國富敬二)師範代とのラリーでみるみる変わっていったんです。大きな刺激でした。
 年明けの本楼汁講も大きな出来事でした。思い切って本楼に伺ったのですが、ここでアタマがガラリと切り替わりました。これまでは「仲間からの刺激」が大きかったのですが、汁講で教室の仲間との交わし合いが深まったことで、「一緒に走ってる感」が生まれ、稽古に勢いが出ました。私、「ガヤ」が好きなんですよ。遠慮なくガヤをやっていいんだ、というのが発見でした。それに……トミー師範代がパソコンの操作とかでアタフタしていて、「師範代も完璧じゃない」とわかって、回答を出すハードルも下がりました。
 終盤、事情があって、20日間近く稽古から離れてしまいました。卒門1週間前に、師範代から「しばらくお声が聞こえないので、心配しております」とメッセージが届き、そのあと、さきちゃん、かわちゃん、きっしゃんと仲間たちが次々にメッセージをくれて……。しんどい時期だったので本当にありがたかった。ひとりでうるっとなってました。声に押されて復帰したタイミングで、康代学匠から感門之盟のお知らせが届いたのも大きかったです。「ハレ舞台に絶対参加したい!」というモチベーションで走り切れました。
 もともと「伝える力」を学びたいとイシスに入りました。編集思考素とか、ルル三条とか、ボンヤリですが稽古で何か見えたような気がしました。今は「もっと破で学びたい!」という気持ちです。
(取材・文/師範・角山祥道)

 

 イシスはいわゆる「ネットの学校」ではない。回答や指南にはいつもリアルがあり、画面越しの師範代と学衆の文字からは体温が感じられる。共読する方法の学校は、面影や声も届け合う唯一無二のシステムでもあるのだ。

 

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  • 嶋本昌子

    編集的先達:ハービー・ハンコック。全身ラテンは伊達じゃない。毎週フラメンコのタブラオで踊っていた情熱のお侠師範。流暢な英語を操るバイリンガルだが、気持ちが昂るとナチュラルに関西弁が出る。丸の内朝大学以来の校長のお髭ファン。

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