48[守]の19教室では、113名の学衆が見事、門を出た。彼らは、なぜイシスの門を叩いたのか。[守]で何を得たのか。何がかわったのか。師範によるインタビューによって、学衆の「声」をお届けする第2回目。「友人に誘われて」編をお送りする。
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■48[守]学衆インタビュー 「友人に誘われて」編
吉村林頭直伝の「イシスを薦める4つの方法」に、「耳うち」がある。「あのね、あなただからいうんだけどね、実はね……」と友人を勧誘する方法だ。野田春希さんと高橋祐子さんは、この「耳うち」でイシスに飛び込んだ。さてどうなったのか。
野田さんは、編集工学研究所のデザイナー、穂積晴明さんとは幼馴染みだ。編集学校の話は以前より耳にしていたが、今回、「新しいことに向かって一歩踏み出した転換期」に、タイミングよく誘われた。
●野田春希さん(しんがりスサビ教室/速修コース)
既存の物事についての固定観念を打ち破りたい。そんな期待を抱いて守の受講を決めました。看護師をしていますが、仕事や自分自身の闘病体験から、病は単なる医学的治療では治り切らず、芸術のもたらす感動の要素も必要なんじゃないかと思っています。音楽にも長く関わってきたので、「医学」と「エンターテイメント」を掛け合わせたイベントや作品などによる「社会的治療」を目指したい。そのためにも、ものの見方を柔らかくしたかったんです。
お題001番の指南を受けて再回答したのは、最初の回答が抽象的に留まっていて、もっと具体的な言葉にしないと言いたいことが人には伝わらない、といきなり気づかされたからです。自分の思考を他者の目で俯瞰できる佐藤裕子師範代の指南には痺れました。
夢中になったのはお題018番の「層なんです」。遠くかけ離れている2つの物事を重ね合わせ、無意識にやっていることを意識化していく過程に時間を忘れました。看護師をする傍ら居酒屋も手伝っていて、前から2つの異職種の手順に漠然とした共通項を感じ、相互に活かそうとしていたんですが、体感的に腑に落ちていたことが、このお題で「方法」として意識の上で腑に落ちたって感じです。
守で「たくさんのわたし」を意識して、自分にはまだまだ可能性があるな、と嬉しく感じています。「プロフィールの異なるさまざまな人々の多様な見方に触れられ、それを仕事、友人関係、恋愛、ストレスへの対処などに活かせるようになる。人生が豊かになり、自分が成長したと感じられる」。守の受講を迷っている人にはそう伝えたいです。もちろん進破しますよ。守に誘ってくれた親友にも強く勧められていますし、破で稽古する編集術は、自分の手がける新しいプロジェクトにも即座に使えそうですから。
(取材・文/師範・三津田恵子)
高橋さんは、学生時代の友人から、随分前にイシスの話を聞いていた。すぐにwebをチェックするも訳がわからない。忘れかけていた頃、半年ぶりに会った友人から、再度イシスを強く勧められた。48[守]が開講する2日前のことだ。
その友人の名は、キャンピング・サティ教室の高津法子師範代。友人が師範代であることも知らずに、門をくぐった。
●高橋祐子さん(オリーブなじむ教室)
迷いに迷って申し込んだのは開講の30分前でした。決め手は、友人が熱心にプッシュしてくれたことと、1月に転職を予定していたので、次のステップになるかなって。タイミングが合いました。入ってすぐに後悔しました。<勧学会>の「自己紹介」に、読んだことのある松岡校長の本や「千夜千冊」のことを書く欄がありますよね? 私は何も書けない。他の人の自己紹介は充実していて、私と全然違う。気後れして手が止まりました。大袈裟ですけど、心が折れました。自分でもびっくりするほどの折れっぷりでした(苦笑)。回答も何を書いていいかわからなくて。最初に思いついたことをメモにしてUSBに溜めて、そこから仕上げるんですけど、メモが更新されるばかりで回答に行き着かない。回答提出はいつも最後尾。「なぜ入ったんだろう?」「もう辞めたい」とブツブツが止まりませんでした。
続けた理由ですか? 山本ユキ師範代の指南と他の人の回答を読むのは本当に楽しみだったんです。それに始めたことは最後までやりたかった。「辞めたい」「続けよう」をグルグルして、常に追い詰められていました。第一回番ボーを過ぎたあたりで、「人は人、自分は自分だ」とやっと踏ん切れるようになって、少し楽になりました。それまではみなさんのスゴい回答に、「自分はこれでいいのか」とグラグラしっぱなしでしたから。021番のBPTは、手応えがありました。Tを4つの中から選びますが、実は教室の誰も選んでいないものにしてみたんです。これなら他の回答を気にしなくてすみますから(笑)。
イシスに入って、人生でいちばんというくらい辞書を引きました。初めて「編集」の世界に触れましたし、指南や回答を読んで自分の世界がひろがりました。破ですか? はい、ここまで来たら進みます!
(取材・文/師範・角山祥道)
友人から誘われた勢いで(ウッカリ)走り始めた「編集道」だが、野田さん、高橋さんの歩みは止まらない。次はお二人が「耳うち」する番かもしれない。
<[守]学衆インタビュー Back Number>
角山祥道(ジャイアン)
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。
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