編集稽古が姉妹をつなぐ――48[守]の声

2022/03/11(金)11:00
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かぞくでねっちゅうイシスのけいこ

 48[守]の19教室では、113名の学衆が見事、門を出た。彼らは、なぜイシスの門を叩いたのか。[守]で何を得たのか。何がかわったのか。師範によるインタビューによって、学衆の「声」をお届けする第3回目。「姉妹対談」編をお送りする。


■48[守]学衆インタビュー 「姉妹対談」編

 

 2020年4月からスタートした「家族割」。1人分の費用で2人が[守]を受講できるとあって、親子や夫婦でイシスの門を叩くケースも多い。48[守]でも数組の家族ペアが編集力を研鑽した。


 天橋立にほど近い京都丹後で生まれ育った姉妹、竹内透江さんと桑山規予子さん。現在は関東と関西に離れて暮らす。

 イシスとの出会いは、竹内さんが[破]受講中の友人からインタビュー編集術への協力依頼を受けたことだった。友人が仕上げた文章に驚く。べらべら喋っただけの話が、見事に編集されていた。「受講すればできるようになる」と聞き、家族を誘っての入門を思い立つ。

 

48守姉妹対談 上:竹内さん、下:桑山さん

 

●姉:竹内透江さん(一調二機三声教室)
●妹:桑山規予子さん(点閃クレー教室)

 

--お姉さん(竹内さん)から誘われた「編集力チェック」が受講の決め手になったそうですね。

 

桑山:やってみたら楽しくて思考が広がると感じました。9歳の長男に同じお題を出すと面白い回答をしたので、親子でも楽しめるかなと。下の娘(4歳)はコロナで幼稚園にも行かず、子育てばかりの毎日でしたし、新しい空気も吸いたかった。何よりお姉ちゃんがいるのが心強かったです。

 

--別々の生活をしながら共通のお題に打ち込み、励まし合った17週間でした。受講して変化は?

 

竹内:妹はよく喋るようになったと思う。お母さんも言ってたよ。

 

桑山:そう言われると、何かと「調べる」ようになりましたね。今までは家族との会話で、わからないことを曖昧にやり過ごすことが多かったんです。最近では長男に「なんで知らんの」と言われることもあったりして(笑)。
でも、稽古を通じて「調べなあかんな」と自覚できた(笑)。習慣が染みついたんです。そうしたら返事の仕方に自信が出てきました。
長男にも調べてから伝えると「じゃあ間違いないね!」と信頼してくれて、色々尋ねてくるようになりました。アタマの中が広がり、言葉も増えて発想も増えてきた。受講前よりはうまく話せているのかも(笑)。お姉ちゃんは?

 

竹内:一番大きな収穫は「地と図」の型。カウンセリングを学んでいるんですが、私の「地」では理解できなくても、相手の言葉の裏にある「地」を探し、相手にとっての「図」を描くようになりました。「この人にはこう見えているのかな」と地と図を使ってイメージすることで、思考の解釈が格段に変化しました。
仕事(コールセンター勤務)では、お客様との交流でのストレスが半分になりました(笑)。テンポや切り返しがよくなったし、隣の席の人に「話し方が勉強になる」と言われたり。シソーラスが増えた自覚はないけれど、言いかえたり相手にわかりやすく要約できるようになったと思います。

 

 [守]では期中に2回、アワードイベント「番選ボードレール」が行われ、師範代と学衆の乱取り稽古が繰り広げられる。2人の教室でも両師範代があの手この手で稽古を盛り上げた。呼応するように、竹内さんは日々回答を連打し、桑山さんも推敲ラリーで教室の熱狂を牽引した。

 

--お互いの回答を見せ合ったそうですね。帰省したご実家でもミメロギア(番ボーお題)を一緒に稽古していたとか。魅力は何でしたか。

 

竹内:再回答をするうち、言葉で物語ができるように繋いでいく面白さに気づきました。イメージが立ち上がるように、雑誌の表紙みたいなフレーズが作りたくなってきて。納得いくまでやりたくて、藤井師範代に何度も指南をお願いしました。
いつもは妥協することも多いけれど、ミメロギアでは最後までラリーできました。入賞するしないではなく、諦めずに最後まで稽古できたのは貴重な体験でした。

 

桑山:大濱師範代のツッコミが心地よくて、11回ラリーしました。
私は教室の皆さんと違って、子ども中心の生活で思考が狭く、劣等感いっぱいでした。でも先頭を走るバリバリのビジネスマン学衆さんが、私の回答に「心温まる、お子さんとの稽古が羨ましい」とコメントをくれて。嬉しかったです。

 

--その人の個性、不足を可能性に変えていくのが編集学校。桑山さんの発想の柔らかさや人との違いが宝なんです。

 

竹内:私は普段から妹の発想に魅力を感じていたんです。稽古でもいつも回答が柔軟でした。「やっぱりなぁ」と(笑)。
受講が妹にとって、自信を持つことに繋がったのなら私も嬉しいですね。

 

(取材/師範代・大濱朋子、師範・阿曽祐子、三國紹恵 文/師範・三國紹恵)

 

●取材を終えて●

 守稽古のフィナーレは、豊かな「歌」の世界を使った【編集カラオケ八段錦】だ。学衆は自ら稽古を振り返る歌詞を選ぶ。妹の回答は『アイスクリームの歌』。「きーちゃん、なんでそんなんにしたん」。
 対談当初しょげた思い出が残る曲を前に、姉妹は一気に幼いあの日に戻ったようだった。8歳差の二人は同じ学校に通った経験がない。通常、自教室内に留まる共読を互いの教室を超えて行った濃密面白体験が、小中高では果たせなかった相互学習へと膨らんでいった。入門前後の変化を聞けば、姉は堰を切ったように妹の変化を話し出す。数十年の時を旅しても尚、遊びに興じる色づいた編集の蕾は、この春どんな花を咲かせるのだろう。
(文/師範代・大濱朋子)

大濱師範代
大濱師範代

きーちゃんとお姉ちゃんの編集道にちむどんどんするさ~。

※ちむどんどん=胸が高鳴る、ドキドキする(沖縄の方言)

 

 

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  • 三國紹恵

    編集的先達:ヴァーツラフ・ニジンスキー。聞かせます、エディット情話。大衆芸能と昭和歌謡を愛する唄女・つぐえは、学衆、師範代、師範のフラジャイルな逸話を紡ぎ続ける。伝えたいメッセージは「編集だよ、おっかさん!」。

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