【イシスの推しメン/1人目】六本木で働くITマネージャ稲垣景子は、なぜ編集学校で輝くのか?

2022/08/28(日)08:39
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イシス編集学校師範代の稲垣景子

学校は出会いの場でもある。高校生活を思い返して、まっさきに思い浮かぶのは毎日7時間受けた授業の内容よりも、級友の顔。人生にとって大切なものがある。2000年に開校し、松岡正剛が開発した「編集術」を学べる世界で唯一のイシス編集学校にも、人の魅力にあふれているのだ。

本連載企画では、Edist編集部が今推したい、いきいきと編集を続ける【イシスの推しメン】を紹介する。

 


シリーズ第一弾は、2019年秋に入門した稲垣景子さん。彼女は、かつての勤務先で同僚たちからイシス編集学校を勧められるも、一年半も二の足を踏んでいたという。しかしいまや編集を学ぶハツラツとした姿は、校長松岡正剛が「稲垣、爆発させてるねえ」と相好を崩すほど。編集道を語る稲垣さんの熱量に触れて、同じくイシス編集学校の門をたたいた仲間たちも多い。彼女はなぜここまでイシスで輝いているのだろうか。

 

推しメン01:稲垣景子さん(SmartHR プロダクトマネージャー)

 

六本木にオフィスをもつIT企業、SmartHRに勤務。人事労務ソフトの開発に関わるプロダクトマネージャーを務める。2019年秋(基本コース[守]44期)に入門以来、一期4ヶ月の講座を基本コース[守]、応用コース[破]、編集コーチ養成コース[花伝所]と一年半走り続け、オブザ・ベーション教室師範代という編集コーチを鬼になりながら務めあげたのち、現在では世界読書奥義伝[離](15季)を受講中。

聞き手:エディスト編集部 吉村堅樹 他

 

■ 入門のきっかけは、
  マネジメントでの苦労と、本が読めなかったこと

――稲垣さんはどうやってイシス編集学校を知ったんですか?

稲垣:勤務先の上司や同僚がすでにイシス編集学校で学んでいたんです。桂大介さん中西晶大さん加藤めぐみさんは、社内で発信する言葉や共有する文章の力が圧倒的だったんですよね。論理的な説得力、読み手を意識した文章の運び、読んでも聞いても心地のよい言葉の選び方など、他の人たちとは「明らかに何かが違う」力を持っていたんです。なんでだろうと思っていたら、じつはこの3人が揃いも揃って編集学校の経験者だと聞いて。きっと編集学校には「ただならぬ何かがあるんじゃないか」と感じたんです。

 

――おぉ、社内でもとびきり光る人たちが、編集学校で学んでいたんですね。

 

稲垣:そして、この3人から編集学校がどんなところなのかも聞いていて、おもしろそうだなとは思ったんです。でも正直、「これを学んで何になるんだろう?」「今は忙しいし……」「わりとお金もかかるしな」と一年以上ためらっていたんです。

――存在は知っていても必要性がわからなかったんですね。ではなぜ、入門を?

稲垣:大きくふたつのきっかけがありました。ひとつは、仕事でマネジメントをすることになって、にっちもさっちもいかなくなってしまったこと。中西さんにマネジメントのメンターをしてもらっていたんですが、そのときイシスで学んだ「方法」が使えるよと教えてもらったんです。編集術って、そんな実務的な内容にも関わるんだ!と驚きました。

もうひとつは、会社のなかで米盛裕二さんのアブダクション 仮説と発見の論理』という本が流行ったんです。チャットで流れてきて、へぇ〜と思いながら手に取ったんですが、まったくといっていいほど理解できない。このときすごく焦ったんです。本が読めないなら、この先私がなにかに興味をもったとき、どうやって進んだらいいんだろうって。まだ30代前半なのに、このまま未知のものを知らずに終わってしまうのかって。だから、なにかを「知りたい」「読みたい」と思ったときに、飛びこめるだけの力をもっていたいと強く思ったんです。イシス編集学校では、自分では選ばなかったような本もたくさん読むと聞いていました。だから本が読めなかったとき、これはもう入るしかないと観念しました。

――仕事で苦労したことと、未知へ飛び込む力がないことに焦ったこと、ご自身のふたつの「不足」から「充足」へ向かおうと選んだのが、イシス編集学校だったんですね。

稲垣:そうなんです。本が読めないと気づいたときは、編集力チェックやエディットツアーなど未入門者向けの体験講座を受けるまえに、すぐさま申し込みました。そのときには44[守]の募集が終わっていて落ち込んだんですが、マネジメントのメンターだった中西さんが「問い合わせてみて」と背中を押してくれて無事に44[守]にすべりこむことができました。


■ なぜ職場でも「編集術」を語るのか?

――職場の同僚から勧められた編集学校は、実際に入ってみてどうでしたか。職場で話をしたりなさったんでしょうか。

稲垣:あぁ、今もよく話していますね。職場の仲間とランチに行ったり、夜会社で飲んでいるときなど「最近何してる?」って話になるじゃないですか。私のなかではイシスが占める割合が大きいので、だいたいイシスの話をしています。

――でも、イシス編集学校って、体験していない方には説明するの難しいですよね?

稲垣:そうなんですよ。だから「何してる?」って聞かれたら、「『説明が難しい習い事』をしてる」って答えてます(笑)
「なにそれ、どういうこと?!」って聞かれたら、たとえば「今日、会議の準備するのに困ってたじゃん。準備をしている途中にも、資料集めたりしたよね」とか「そういえば旅行に行ってたよね、それって……」みたいな感じで、[守]で学ぶ情報編集の基礎を5分くらいでばーっと話しちゃう感じです。

――なるほど、会議の準備をするのも旅行の計画を立てるのも編集ですもんね。参加者は?目的は?日程は?など、《与件》という情報を集めて、それに応じて「会議室ならパワーポイントを使おう」とか「オンライン会議なら、手書きフリップを用意しようかな」とか、さまざまに編集が起こる。実際に相手がおこなっている「編集」を例にあげて編集学校で学べることを紹介するのは、親切ですね。

稲垣:ええ、情報は「わける/あつめる」「つなぐ/かさねる」「しくむ/みたてる」「きめる/つたえる」なんだよ、という[守]で学ぶ用法1から用法4までを5分くらいで一気に語り切ります(笑) 『知の編集術』の冒頭にも書いてあるように、私たちは無意識に編集をしているわけですからね。

――いやあ、お見事。教科書の説明ではなくて、稲垣さんご自身が血肉化したものをあふれんばかりに話す様子を聞いていると、編集術のおもしろさがあらためて感じられます。じつは稲垣さんは、過去3年間で6人ものお知り合いが編集学校に参加したトップクラスのエヴァンジェリストなんですよ。

稲垣:あ、そうなんですか! 私としては、編集学校に入ってもらおうと思って話しているわけではないので、ちょっと意外でした。私は自分がおもしろいと感じることを、「聞いて聞いて〜」と話しているだけなので、「みんな聞いてくれてありがとう」って思ってます(笑)

 



■ イシスの「ここが好き!」
  ふだん会えない人と、語ることができる

――稲垣さんが職場の仲間にそれほどイシスのことを語るのって、なぜなんですか?

稲垣:編集術を学ぶと仕事や人生に活かせるからという理由もあるのですが、それ以上に、職場やふつうの習い事ではぜったいに出会えない人いっしょに勉強できるのが楽しいんです。

――人との出会いが魅力なんですね!

稲垣:間違いないです。私の職場はIT関係なので、SNSなどに慣れている若手が多いんです。SNSって、自分が好きな情報しか届かないように最適化されてますよね。でも、イシスの教室では、地方の農家さんだったり、大学生だったり、子育て中の主婦の方だったり、まったく違う属性の仲間と出会えるんです。おなじ質問に対しても、全員がまったく違う回答をする。こんなに自分が知らない情報がぼんぼん入ってくる場って、イシスのほかにはないんです。

――編集学校では「共読」といって、ひとつのものをみんなで読むことを大事にしているんですが、その面白さを体感しているんですね。

稲垣:イシスで出会う人たちは、みんなほんとにすごいですよ。たとえば基本コース[守]では「番選ボードレール」や、応用コース[破]では「アリスとテレス賞」というアワードもあるんです。そのアワードにむけて、大のオトナが意地になって「ああでもない、こうでもない」って夜中まで考えちゃう姿はとってもかっこいいんです。そうやって寝食忘れて考えたくなってしまうお題もすごいし、みんなでいっしょに考えるという熱狂が、オンラインの教室に満ちているのがたまらないんです。

――イシスの魅力は、カリキュラムだけでなく、その学びの場自体の雰囲気そのものにあるんですよね。

稲垣:そうです、そうです。イシスに入ると、憧れの人がいっぱいできます。大人になってからそういう場所ってないでしょう。とてつもない場だなと思います。

――稲垣さんがここまで休むことなく編集道を走っているのも、もしかしてその憧れが原動力ですか。

稲垣:そう、みなさんが見ていた景色を、私も見たいんです。その背中を追っている感覚ですね。

――未知へ飛び込む力をつけたくて入門した編集学校で、さらなる遠い目標をみつけたんですね。その稲垣さんのひたむきな姿が、いまではイシスのなかで憧れの存在になっているのでしょう。まだ見ぬ後輩たちも、稲垣さんの熱量に感化されていきそうですね。

 

 

アイキャッチ:富田七海

記事中写真:エディスト編集部

 


シリーズ イシスの推しメン

 

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  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。