編集学校の「花」といえば、奥座敷とも士官学校とも形容される編集コーチ養成の場「花伝所」。
花伝所が体とするは「秘すれば花なり、秘せざれば花なるべからず」の世阿弥『風姿花伝(花伝書)』だ。
2020年6月1日、ISIS編集学校は開校20年を迎える。その前日、40名が現をまたいだサテライト空間に座す。
輪読座「世阿弥を読む」第二輪である。
第一輪で読み深めた『風姿花伝』図像の交わし合いから座が開く。
座衆の三名が自ら『風姿花伝』に肖った図像から、世阿弥の型と精神を言葉にする。
【座衆・阿曽祐子】
芸を始めて達人となること、大陸から渡った芸能が「能」となること。そこに暗黙知から共有知へいたるin-outのプロセスを見いだした。
プロセスを三位一体で表象した図像。
【輪読師・バジラ高橋】
これこそ風姿。次々に伝わり感染するものとしての「風」を、世阿弥は重視した。
当時、犬王(後の道阿弥)という素晴らしい演者がいた。世阿弥は犬王の方法も編集しており、それが『花鏡』に至る発展をもたらしている。
【座衆・平野しのぶ】
三間連結を四つの象限に置き換える方法を軸に図像化。そこに「見えにくいもの」の斜線をあしらう。
「これから特に『離見の見』を深めていきたい」。
【輪読師・バジラ高橋】
『離見の見』はヨーロッパ哲学では解読できないコンセプト。
序破急については『風姿花伝』では少し触れられているだけだが、作能法や作曲法の基礎に置いて、そこから民間芸能から離脱し、独自の能作へ至ると考えた。
【座衆・山田細香】
「世阿弥はとてもシステマティックで、私が能だと思っているらしさそのものが、世阿弥につくられたものではないか」という視座から萌芽した図像。
「既存の言葉を新たに概念化し、新たな意味づけとして能の言葉とする世阿弥の方法に驚いた」。
【輪読師・バジラ高橋】
これの視点も『二曲三体』や『花鏡』に発展する一つ。
先に挙げた「序破急」は、実は日本雅楽が作り出したシステム。奈良・平安時代に渡ってきた唐の音楽に対し、嵯峨天皇以来、100年をかけて日本雅楽独自の音程や音階をつくった。
それを世阿弥が引き抜き、音楽だけでなく、自然や物語も全部これでいけるのではないかと考え、新たに概念工事をした。これが小唄や歌舞伎、長唄などにも通じる日本音楽の基礎にもなっている。
伝書の一『至花道』では、花へ至る道の最高峰に「体用事」をおく。これは既に自分の型ができている、ということ。
花は「体」、花の匂いは派生した「用」。優秀な人をみたときも用ではなく型をまねなさい。どういう型かを見なさい。
バジラ高橋はいう。
「世の中の人は、型から派生した用ばかりを見ている。『型』が素晴らしい、と見ないといけない」
用から体へ。本気の型へ向かう輪読座。第三輪は6月28日(日)。門戸は今も開かれている。
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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