カワルは外からも内からも――48[守]の声

2022/03/15(火)15:00
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 48[守]の19教室では、113名の学衆が見事、門を出た。彼らは、なぜイシスの門を叩いたのか。[守]で何を得たのか。何がかわったのか。師範によるインタビューによって、学衆の「声」をお届けするインタビューの第5回。「カワルを実感」編をお送りする。

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■48[守]学衆インタビュー 「カワルを実感」編

 

 わかるとかわる。イシスにいる者ならば必ず聞く言葉の1つだ。編集稽古で実感するこの2つは、教科書やノウハウ本のように画一的なものではない。松本偲さんと杉山良江さんは、一体どのようにかわったのか、そしてなぜかわったのか。

 

●松本偲さん(源泉宅急便教室)

―まず入門のきっかけを伺いますね。
 以前からなにかこう自分の思いを書きたいと思っていたんです。病院の事務という仕事のほかにセミナーをしたり、趣味の短歌では詠むだけでなく歌評をすることになったり、好きな映画をあらすじ紹介じゃない形でアウトプットしたいな~という気持ちがグルグルしていました。ずっと「書く書く詐欺」だったんで、そこから脱却したいな、と笑。大学時代の同級生が師範代をしていて、以前から編集学校のことは聞いていたんですが、タイミングが来たというか、背中を押されて入門しました。

 

―お正月から稽古が加速してましたよね。回答順もジグザグで。
 年末に一か月ぐらい休んでいたのでお題が山積みで、笑。年始にはら師範代がお題の溜まっている学衆一人ひとりにカリキュラムを組んで下さったんです。それをみて、今から始めても追いつけるなと思いました。用法4を先にやり、用法3、2をさかのぼるという感じ。最初手が止まってしまった編集思考素も、後から回答するとスムーズにできました。不思議ですね、構造がわかってくるというか、なるほど~と。途中、どういう意味?って思ったことは友人の師範代にも相談していました。

 

―変わったこととか、印象に残っているお題は?
 「たくさんのわたし」は面白かったですね。同じ教室メンバーの回答をみて地球の一員みたいな回答があって、そのスケールに驚きました。私の回答は半径10メートルくらいの人間関係の中でしか捉えていなかったので、そういう視点もあるんだと。あとは印象に残っているのがカット編集です。「犬と女とカッティング」で映画のシーンを組み立てる過程ですね。飛行機、女、泣く男、で最初に浮かんだのはハードボイルドかサスペンスのイメージでした。泣いている男の子が浮かんできたら、急にお母さんと子どものいるリビングルームという新しいイメージが湧いてきた。男の種類が変わったんですよね。その時「ずらす」の感覚がわかったような。なんでずらせたのかって?わかりません笑。そういうのって、ふっとやってくるのかもしれないですね。あとはやっぱり文体練習です。


―そのお題はまさに[破]なんですよ。
 そうなんですか?ずいぶん前ですが、図書館でレイモン・クノーを借りたことがあって、電車の中で読み始めたら、つい笑っちゃって…そのまま降りたホームのベンチで笑いながら読み続けたことがあったんです。お題を見たとき、あれをやるんだ!とワクワクしたんですけど読むのと書くのは雲泥の差でしたね。特に哲学モード。哲学用語とか知らなかったので笑 稽古の一通りの目途がついて余裕ができて再回答。ようやく楽しんで哲学者として語れました。遊びは余裕から、ですね?笑。

 

―“先”をつかんでますね。
 そういえば最近「文学部不要論」って言われてますよね。つい先日母校の大学生に話してきたんです。文学部の学びが将来役に立つのか不安に思っているということで。そこで話したのは、仕事をする上で言葉がいかに大事かってこと。相手の立場や役割によって、文脈の違いで使う言葉は変わってくるよとか。案外文学って実践的だから、安心して自信をもって文学や文章と向き合っていいよと話してきました。こういう時代だからこそ言語化することの重要性を感じています。先日角川武蔵野ミュージアムに俵万智展を見に行ってきまして、普通の言葉を31文字の組み合わせでここまで世界を作りだすことに改めて感動しました。
 [文・文字・表現]―わたしはこれをやっていきたいのだと思っています。

(取材・文/師範・平野しのぶ)


 機が熟した、と言わんばかりの松本さん。勢いあまって進破申込も済ませている。編集学校ではアイダをつなぐ人をインターアクターと呼ぶ。彼女が病院と社会をつなぎ、福祉と映画を紡ぐ日も遠くないだろう。短歌31字に込められる想いも見逃せない。


 電束青猫教室の杉山良江さんは、既に[守]を受講していた知人から「杉山さんに合ってるよ」と言われたことがきっかけで入門。詳しいことはわからないままイシスに足を踏み入れた杉山さんにはどんな変化が起こったのか。

 

●杉山良江さん(電束青猫教室)

―改めて48[守]を振り返っていかがでしたか?
 稽古を始めたばかりの頃、朝の目覚めが良くなりました。なんででしょうね(笑)脳の使い方を活性化させられたような、凝り固まっていたものが溶けていったような感じがありましたね。なんでこんなにスッキリしたのか、不思議な気分です。稽古後半は自分を縛っていたものがほどけ、リミッターが外れたような感覚も持ちました。稽古には正解がないということが理由かもしれません。お題にはルールがありますが、それに沿っていれば、後は自由に発想していい。ルールの先にある自由が見えたからこそ広々とした気持ちになったと思います。こんなに素敵な時間はないと思うほどでした。

 

―汁講で話していた「忘れていたものを思い出す」について教えてください
 豆腐で役者を分けるとか、普通に考えると「何これ?」というお題が多かったですが、それって自分の中に材料がないと回答できないと感じました。分け方がぼんやり浮かんでもそこから先に進めない。先に進むための材料を探す時に、読んだ本を思い返してみたり、近所の風景とか目に入ったものを使っていたのですが、それをきっかけに子供の頃の記憶とかも思い出すようになってきたんです。といっても、辛かった・怖かった・寂しかったといったマイナスな思い出ではなく、良い思い出がきれいな絵になって浮かんできました。

 

―稽古を通じて日常に変化はありましたか?
 輪島師範代の指南や教室での対話を通して、自分の考えや文章の癖だけでなく、自分が持っているこだわりが新しい意見を取り入れにくくしているということにも気がつきました。手紙やメールなどを書いていても、もしかしたら相手の受け止め方は違うのかも、と考えるようになったのは実生活でも役立っています。

 

―この先はどうしますか?
 [破]ですか?申し込んでいます!進破しようと思ったのは、汁講で若林番匠が言っていた「こんなに真剣に遊べる所はない」という言葉がヒットしたからです。ちょっと不安はありますが、真剣に遊ぶ場所が[守]の4ヵ月だけで終わってしまうのは寂しいなと思って。
(取材・文/師範・森本康裕)

 

 仲間の回答という外からの声にヒントをもらい世界を広げた松本さんと、お題を通して内にある幼な心を取り戻し自分の枷を外した杉山さん。[守]でカワルを実感した2人は[破]の道を選び、この先もカワリ続けていく。

 

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  • 森本康裕

    編集的先達:宮本武蔵。エンジンがかかっているのか、いないのかわからない?趣味は部屋の整理で、こだわりは携帯メーカーを同じにすること?いや、見た目で侮るなかれ。瀬戸を超え続け、命がけの実利主義で休みなく編集道を走る。

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