松岡正剛が明かす、オンラインセミナー企画術「相談できる人をもて」 

06/12(金)16:21
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「8時間、ただの一度もトイレに行くことなく画面のまえにいました」


45[守]オンライン伝習座の終盤だった。一座がどよめく。元舞台女優、野住智恵子師範代は、新種の生物を発見したかのように興奮している。

「この長時間、舞台を見続けるなんて考えられへんことです。奇跡やと思う」

 

 

[守][破]では期間中2度、指導陣が一同に会し、互いに研磨しあう。それが伝習座だ。今期はすべてオンラインに切り替わった。第153回のこの日は、けっしてミスをしない佐々木千佳局長が「感門」と思わず言い間違うほどに、贅と編集を凝らしたしつらえであった。

 


Zoomの参加者を丸一日釘付けにする方法はなにか?

伝習座総監督の小森康仁ディレクターは断言する。
「とことんやりきって、捨てるものを捨てて、またやりきる。校長のその繰り返しが、この場を作っています」

 

 

100Kgはあるブビンガテーブルを10人がかりで動かしたかと思えば、しゃがみこんでは紫陽花の向きを整える。その直後、コンマ数秒単位でカメラワークの間合いを調整する。野住のいう「奇跡」は、ミリ単位のパーツが寸分違わず幾千と組みあげられた、細密で豪奢な花火玉の連打である。

 

 

 

「20周年感門はみんなに任せたいからね」と前置きをして、松岡正剛校長は、壮絶かつ緻密なプランニングの方法を明かした。

 


[1]まずは、うちうちで驚く

ただオンライン用に変更するのではなく、自分たちが見たことのないものを作りなさい。

今回のように、本棚劇場に師範が横一列で並び、本楼に複数の島をつくるポジションは、編工研スタッフも見たことがない。自分たちが驚くようなものでないとだめだ。

 

 

[2]準備を尽くす
そのうえで、事前の準備を分厚く貯めること。

対談なら打ち合わせもする。師範陣の語りも、すべて前日リハで2、3点のディレクションを入れている。頭上に貼った幣のようなお題札は、『の』が大きいから、小さくしろ」などフォントの調整までかけている。とくに重要な幕開け5分の演出は、前日当日合わせ都合5回のテストを行った。

 

 

[3]相談できる相手をもつ

そして、だれかに相談すること。ぼくがなにかをするときは、ピンの人を見る。

紫陽花を飾ろうと思ったら、田中所長に頼む。そうやってぼくが、誰かにお題を出す。どんな紫陽花が来るのか、どこに置くのかを見て、それにぼくが応じていく。自分ひとりだって、いくらでもできます。けれど、それはふつうのこと。ふつうじゃないことをしないと意味がない。

 

今回は「鈴木康代劇場」というコンセプトを立てた。この実現には、吉村と小森という相談できる2本のピンが必要だった。本楼のディテールについては、上杉の反応で確かめる。

 

よく気がつくところは、一人ひとりみんな違います。

隠れた注意のカーソルを駆動させる人を、それぞれがもちなさい。


 

 

締めくくりに、松岡校長は全イシス学徒にお題を出した。
「編集学校の『秘すれば花』を解いてもらいたい」

 

たとえば、見たことのない教室名がつくこと、一人ひとり感門表が異なること、「番匠」という他にはないロールがあること。編集学校の教室に、廊下に地下室に、ゆうに100を超える秘密が息を潜めている。

 

それはすべて、校長がしかけた時限爆弾だ。

人を、場を、思考を、世界を揺るがす砲火を浴びてしまったイシスの民は、今度はそれぞれが仕掛ける側にまわらなければならない。NEXTイシスに火をつけるのは、これを読むあなた自身である。

 

(photo by 後藤由加里)

 

 

「編集はひとりではできません」 交わし合いをうながして、鈴木康代学匠は伝習座の1日を仕舞った。

 

 

▼この45[守]伝習座のプランニング風景はこちら:

 今、オンラインは「群島スタジオ」時代へ 45[守]伝習座リハ (text by 上杉公志)

 

▼45[守]伝習座の布陣はこちら:

 舞台裏でディティールを。ロール表沙汰 45[守]伝習座(text by 上杉公志)


  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで絶賛編集力向上中。今、最も旬なエディスト「うめこ」のこれからの活躍に刮目されたし。