松岡校長の字、声、志を追いかけて――48[守]の声

2022/03/06(日)15:00
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 48[守]の19教室では、113名の学衆が門を出た。彼らには何が起きていたのか。師範が捉えた学衆の「声」、インタビュー「松岡校長に憧れて」編をお送りする。

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 イシスの門をくぐる理由はそれぞれでよい。ひとたび憑りつかれると、心が定まらず落ち着かない。松岡校長への憧れ状態に決着をつけるかの如く飛び込んだ面々。何がイシスに飛び込ませたのか。守稽古はどんな体験だったのか。

 

 『知の編集術』をバイブルにしてきたのが河野さんだ。校長の姿に揺らぎ続けた果ての入門。開講当初から順調に回答を重ね、卒門を決めた後も番外稽古が止まらない。

●河野智寿さん(点閃クレー教室)

 

 30年くらい前、NHKの『日本人のこころ』という番組を見ていました。錚々たる出演者ー梅原猛、五木寛之、杉浦康平、和田エミ、中村吉右衛門ーが談論する場を若くてカッコいい男女が場を回していました。難しい話をしているのに、やさしい雰囲気。こんな中にいてみたいと思いました。このときの二人は、田中優子さんと松岡校長だったのです。
 あるとき会社でデザインの部署を立ち上げるように言われ、素人の私は頭を抱えました。発刊されたばかりの『知の編集術』に「梯子を見つけた!」と喜び、即デザイン部の教科書にしました。地と図でデザインのバリエーションが格段に広がりました。64編集技法は読んでも使いこなせませんでした(笑)。
 イシス編集学校ができたことも知りました。「梯子の上り方を習いたい」と思いながら、時間が過ぎました。いつも忘れた頃に松岡校長のテレビ番組を見てしまいます。無意識のうちに追いかけていたのでしょうね(苦笑)。憧れは遠いままにしておくのがいいと思う一方、松岡校長と同じ考え方をしてみたい気持ちもありました。

 

 定年して余裕ができ「梯子を上れ!」の声がしました。飛び込むと、『日本人のこころ』で感じていたものーアナロジカルを扱う、デュアルな視点でモノゴトを見るーが、お題、大濱師範代の指南、番ボー講評と、あらゆるところにありました。松岡校長の一貫性が嬉しかったです。
 稽古を通して、未知を求めて本の中を歩きまわっていた自分を取り戻しました。私は、わからない中に入っていくのが好きなのです。挑戦したいことが増えました。会社で若い人たちにデザインのエッセンスを伝えて、新規事業開発を成功させたい。もうひとつは破コース。卒門しましたが、松岡校長に近づいたようで遠くなったように思います。まず突破。その先、どこまで梯子を上っていけるかな。

(取材・文/師範・阿曽祐子)

 守稽古は、形は変われど松岡校長の変わらぬ志を感じる場であり、自身の初志を取り戻す道のりでもあった。編集の冒険に足がかかったばかり。意志さえあれば、梯子はどこまでも上れる。

 

 続いて、二度目の受講を決意した山内さん。初回の断念からの空白期間、どうしても松岡校長から離れることができなかった。再受講だからこそ気づくことがある。

●山内貴暉さん(はいから官界教室)

 松岡校長のどういうところが好きですかって、そうですね、求めても求めてもわからないところかな。松岡校長を初めて知ったのは、高3のときで、大学入試の過去問に松岡校長の文章が使われていたんです。その文章がすごく面白くて、この人の本を読んでみたいと思いました。初めて買った校長本は『擬』で、全然わからなかった(笑)でも、面白いって思えて、その後はもう収集しまくりです。
 編集学校はHPで知りました。実は僕、再受講なんです。一度目の時は35番まで行ったんですけど、わからないという状態が続くのに耐えきれなくなって投げ出しちゃったんです。そのあと1年半くらい校長の本を読まないようにしてました。頑張って嫌いになろうとしていたんですね。でも、やっぱり書く文章がすげぇなって思えて嫌いになれず、この人のこと知るには本を読むのと編集学校の両輪でいかなくちゃダメだと、今期再受講を決意しました。

 

 二度目の守は「わからない」ということがあっても、それが楽しいと思えました。僕は稽古ってもっと畏まったものだと思ってたんですが、編集学校の稽古はとても自由で、竹岩師範代に「もっと好きに自由にやっていいんだよ」って背中を押してもらえました。
 一番嬉しかったのは本楼に行けたことです。生意気なようですが、それまで校長を「知ってやろう」って思ってたんですよ。でも、本楼であれだけの本見たら、知ってやろうなんておこがましい、「そりゃ、俺なんかにわかるわけねぇわ」と謙虚になれたんです。破に進みますけど、破ではもっと翻弄されてみたい。僕は、頭の中を混乱させられるという感覚が好きなんです。簡単にわかるとか理解できるのはつまらない。謎がある方が楽しいです。僕が校長を好きなのもそこなんだと思います。
(取材・文/師範・中原洋子)

 山内さんが辿りついたのは、「わからないからこそ追いかける」。守稽古で何度も体験したのも「わかる」と「わからない」の間から新しいものがあらわれる瞬間だった。破で翻弄される覚悟は、どんな物語を生むのか。

 

 三人目は、今このときだからこその入門を果たした清水さん。松岡校長との出会いが、本の出会い、そして、知との出会いだった。千夜千冊は、清水さんを形成してきた要素でもある。

●清水太介さん(いつもトンネリアン教室)

 

 『オデッサの階段』をBGMのように部屋に流していました。あの時の松岡さんの声が好きなんです。エネルギーを感じます。でも編集学校はずっと先延ばし。そんな時「ほんほん」で松岡さんの体調が悪いことを知り、今行かなければと受講を決意しました。

 

 本は好きではありませんでした。子どものころ、家にあったのはマンガや聖書。小説も読んだことはありません。このままではだめだ。本を読もうと思ったのは20歳を超えてからです。
 24~25歳のころ、自分を変えなければと強く思い、手に取ったのがプラトンの『国家』でした。不思議ですよね、分かるはずがないのに。でも読み進めるうちに分かる気がしたんです。難解な概念は千夜千冊と照らし合わせて読みました。『国家』が終わると『バガヴァッド・ギーター』。そしてショーペンハウアー『意志と表象としての世界』。夢中になって読みました。ショーペンハウアーと出会うために千夜千冊を読んできたんだと思ったくらいでした。
 千夜千冊『国家』に書かれた、「マテーシス(学習)はアナムネーシス(想起)」という言葉が衝撃でした。分かるはずがないと思った本が分かるのも、「想起」なのかもしれませんね。メアリー・カラザース『記憶術と書物』も、千夜千冊がきっかけで読みました。1カ月くらいかかりましたが、脳が一段レベルアップしたんじゃないかと感じました。読書スピードも変わったと思います。

 

 千夜千冊でたくさんの言葉をもらったので、編集学校にはお返しをしたい気持ちで入りました。以前読んだ『遊刊エディスト』に「イシスの門をくぐった学衆にはひとつの共通点がある。現状を変えたい、ということだ」とありました。でも僕はちょっと違うんです。千夜千冊が自分を変えてくれましたから。
 読むというより、松岡さんと対話しているつもりでした。千夜千冊がなければ、ほとんどの本と出会えていなかったはずです。千夜千冊がなければ、きっと今と違う自分になっていただろうと思います。千夜千冊には本当に救われました。
(取材・文/師範・景山和浩、似顔絵/師範代・畑本浩伸)

  松岡校長は、遅れ馳せでも構わないという。準備ができたそのときに、始めればいい。やろうと思ったなら、いつでも誰にでも始められるのが編集稽古だ。始めれば、必ず動くものがある。

 

 ★千夜千冊『国家』プラトン
 ★千夜千冊『バガヴァッド・ギーター』
 ★千夜千冊『意志と表象としての世界』ショーペンハウアー
 ★遊刊エディスト 遅れ馳せでも構わない。自分をおっかけ、世界をリメイク【47[破]突破目前】

 

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  • 阿曽祐子

    編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。

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